50 / 226
第3章 魔法の世界
17 立ちはだかる壁
しおりを挟む
「エル様。本当によろしいのですか?万が一ディラン様が了承したとしても暗殺者を屋敷に置くなんて、危険すぎます」
揺れる狭い馬車の中、目の前には従者のルカが真剣な顔でそう訴えてくる。
さっきからずっとこれで、私は苦笑いを浮かべるのみ。私の膝の上に座っているウルは微笑ましそうに大人しく見守るだけだし。正直助けて欲しい……。
そして隣にはユキ、ルカの隣にはレナードさんがそれぞれ座って、私達の言い合いに巻き込まれているところだった。
今回の騒動、全ての事情は話せないけど、大まかな事を学院側に説明して私達だけ特別に先に帰らせてもらうことになり、今はその帰り道。
せっかく事態が収拾したのにルカの一方的なお説教は収拾がつかない……。
あ、ちなみにアリンちゃんはもう一台用意してもらった馬車の方にいて、一人だと可哀想だと思って最初は私も一緒に乗ろうとしたのにルカに怒られ引きずられて来てしまい、結局一緒に乗れずじまいに。
アリンちゃんも気を使ったのか「ワタシは一人で平気」って言われちゃったし。そう言われてしまってはしつこくできない。
ルリ様の了承で後残すは父様の説得、と思っていた矢先、思わぬ伏兵が潜んでいた……。でもルカには悪いけど、私も諦めませんよ!
「そうですね。ルカの言うことも分かっています。でも先程も言った通り私はこのままアリンちゃんを連れて帰って父様にも認めてもらって、一緒に屋敷で暮らすことを望みます」
「しかし危険なのですよ?いつ危害を加えるか……」
「大丈夫です。説得力はないと思いますが、私には分かりますから。アリンちゃんは私に危害は加えない」
根拠はないけど分かる。女の勘って言うのかな?勘だけど、それも当たる時もあるから。
いつも以上に真剣に言ったからか、それとも言っても無駄と思ったのか、ルカは深くため息をついて諦めた表情をした。
「まったく、貴方という方は……。では僕がディラン様に連絡を入れておきます」
渋々言ってるけどそういうところは驚くほど律儀で、何だかんだやっぱり優しいなと思う。
でもそれに私も甘えてばかりではいけない。
「ありがとうございます。でも私が連絡します。私が言い出したことですから、自分で事情を話した方が良いと思うので」
ルカには申し訳ないけど、父様には自分で話をつけないと。父様の事だからきちんと事情を話せば分かってくれると思うから。
それに自負してるけど父様って私に甘いから、申し訳ないと思いながらもそれを多いに活用させてもらう。
「分かりました」
「ありがとうございます」
感謝を伝えたらまたため息をつかれた。相当呆れられてますねこれは……。
でもこれからが本当の越えなくてはならない壁、もとい試練だ。
頑張って見せるとも。アリンちゃんのために。
シェフィールド侯爵家、書斎ーー父様の部屋の前。
あんなに勢い込んでいたのにいざ目の前に来ると急に緊張してくるな。
ルカとアリンちゃんは別室で待機中で、話が終わったら来てもらうようにお願いしてある。
ルカの事だから警戒心剥き出しでアリンちゃんを見張っていることでしょう。
やめてあげて欲しいけど言っても笑顔でスルーされそう……。
出来るだけ早く済ませてアリンちゃんの元に戻ろう!よし、善は急げ!父様の説得に行くとしましょうか!
私は気を引き締めると部屋の扉をそっとノックした。
揺れる狭い馬車の中、目の前には従者のルカが真剣な顔でそう訴えてくる。
さっきからずっとこれで、私は苦笑いを浮かべるのみ。私の膝の上に座っているウルは微笑ましそうに大人しく見守るだけだし。正直助けて欲しい……。
そして隣にはユキ、ルカの隣にはレナードさんがそれぞれ座って、私達の言い合いに巻き込まれているところだった。
今回の騒動、全ての事情は話せないけど、大まかな事を学院側に説明して私達だけ特別に先に帰らせてもらうことになり、今はその帰り道。
せっかく事態が収拾したのにルカの一方的なお説教は収拾がつかない……。
あ、ちなみにアリンちゃんはもう一台用意してもらった馬車の方にいて、一人だと可哀想だと思って最初は私も一緒に乗ろうとしたのにルカに怒られ引きずられて来てしまい、結局一緒に乗れずじまいに。
アリンちゃんも気を使ったのか「ワタシは一人で平気」って言われちゃったし。そう言われてしまってはしつこくできない。
ルリ様の了承で後残すは父様の説得、と思っていた矢先、思わぬ伏兵が潜んでいた……。でもルカには悪いけど、私も諦めませんよ!
「そうですね。ルカの言うことも分かっています。でも先程も言った通り私はこのままアリンちゃんを連れて帰って父様にも認めてもらって、一緒に屋敷で暮らすことを望みます」
「しかし危険なのですよ?いつ危害を加えるか……」
「大丈夫です。説得力はないと思いますが、私には分かりますから。アリンちゃんは私に危害は加えない」
根拠はないけど分かる。女の勘って言うのかな?勘だけど、それも当たる時もあるから。
いつも以上に真剣に言ったからか、それとも言っても無駄と思ったのか、ルカは深くため息をついて諦めた表情をした。
「まったく、貴方という方は……。では僕がディラン様に連絡を入れておきます」
渋々言ってるけどそういうところは驚くほど律儀で、何だかんだやっぱり優しいなと思う。
でもそれに私も甘えてばかりではいけない。
「ありがとうございます。でも私が連絡します。私が言い出したことですから、自分で事情を話した方が良いと思うので」
ルカには申し訳ないけど、父様には自分で話をつけないと。父様の事だからきちんと事情を話せば分かってくれると思うから。
それに自負してるけど父様って私に甘いから、申し訳ないと思いながらもそれを多いに活用させてもらう。
「分かりました」
「ありがとうございます」
感謝を伝えたらまたため息をつかれた。相当呆れられてますねこれは……。
でもこれからが本当の越えなくてはならない壁、もとい試練だ。
頑張って見せるとも。アリンちゃんのために。
シェフィールド侯爵家、書斎ーー父様の部屋の前。
あんなに勢い込んでいたのにいざ目の前に来ると急に緊張してくるな。
ルカとアリンちゃんは別室で待機中で、話が終わったら来てもらうようにお願いしてある。
ルカの事だから警戒心剥き出しでアリンちゃんを見張っていることでしょう。
やめてあげて欲しいけど言っても笑顔でスルーされそう……。
出来るだけ早く済ませてアリンちゃんの元に戻ろう!よし、善は急げ!父様の説得に行くとしましょうか!
私は気を引き締めると部屋の扉をそっとノックした。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
令嬢キャスリーンの困惑 【完結】
あくの
ファンタジー
「あなたは平民になるの」
そんなことを実の母親に言われながら育ったミドルトン公爵令嬢キャスリーン。
14歳で一年早く貴族の子女が通う『学院』に入学し、従兄のエイドリアンや第二王子ジェリーらとともに貴族社会の大人達の意図を砕くべく行動を開始する羽目になったのだが…。
すこし鈍くて気持ちを表明するのに一拍必要なキャスリーンはちゃんと自分の希望をかなえられるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる