幸せな人生を目指して

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第3章 魔法の世界

17 立ちはだかる壁

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「エル様。本当によろしいのですか?万が一ディラン様が了承したとしても暗殺者を屋敷に置くなんて、危険すぎます」

揺れる狭い馬車の中、目の前には従者のルカが真剣な顔でそう訴えてくる。

さっきからずっとこれで、私は苦笑いを浮かべるのみ。私の膝の上に座っているウルは微笑ましそうに大人しく見守るだけだし。正直助けて欲しい……。

そして隣にはユキ、ルカの隣にはレナードさんがそれぞれ座って、私達の言い合いに巻き込まれているところだった。


今回の騒動、全ての事情は話せないけど、大まかな事を学院側に説明して私達だけ特別に先に帰らせてもらうことになり、今はその帰り道。

せっかく事態が収拾したのにルカの一方的なお説教は収拾がつかない……。

あ、ちなみにアリンちゃんはもう一台用意してもらった馬車の方にいて、一人だと可哀想だと思って最初は私も一緒に乗ろうとしたのにルカに怒られ引きずられて来てしまい、結局一緒に乗れずじまいに。

アリンちゃんも気を使ったのか「ワタシは一人で平気」って言われちゃったし。そう言われてしまってはしつこくできない。

ルリ様の了承で後残すは父様の説得、と思っていた矢先、思わぬ伏兵が潜んでいた……。でもルカには悪いけど、私も諦めませんよ!

「そうですね。ルカの言うことも分かっています。でも先程も言った通り私はこのままアリンちゃんを連れて帰って父様にも認めてもらって、一緒に屋敷で暮らすことを望みます」

「しかし危険なのですよ?いつ危害を加えるか……」

「大丈夫です。説得力はないと思いますが、私には分かりますから。アリンちゃんは私に危害は加えない」

根拠はないけど分かる。女の勘って言うのかな?勘だけど、それも当たる時もあるから。


いつも以上に真剣に言ったからか、それとも言っても無駄と思ったのか、ルカは深くため息をついて諦めた表情をした。

「まったく、貴方という方は……。では僕がディラン様に連絡を入れておきます」

渋々言ってるけどそういうところは驚くほど律儀で、何だかんだやっぱり優しいなと思う。

でもそれに私も甘えてばかりではいけない。

「ありがとうございます。でも私が連絡します。私が言い出したことですから、自分で事情を話した方が良いと思うので」

ルカには申し訳ないけど、父様には自分で話をつけないと。父様の事だからきちんと事情を話せば分かってくれると思うから。

それに自負してるけど父様って私に甘いから、申し訳ないと思いながらもそれを多いに活用させてもらう。

「分かりました」

「ありがとうございます」

感謝を伝えたらまたため息をつかれた。相当呆れられてますねこれは……。

でもこれからが本当の越えなくてはならない壁、もとい試練だ。

頑張って見せるとも。アリンちゃんのために。



シェフィールド侯爵家、書斎ーー父様の部屋の前。


あんなに勢い込んでいたのにいざ目の前に来ると急に緊張してくるな。

ルカとアリンちゃんは別室で待機中で、話が終わったら来てもらうようにお願いしてある。

ルカの事だから警戒心剥き出しでアリンちゃんを見張っていることでしょう。

やめてあげて欲しいけど言っても笑顔でスルーされそう……。

出来るだけ早く済ませてアリンちゃんの元に戻ろう!よし、善は急げ!父様の説得に行くとしましょうか!


私は気を引き締めると部屋の扉をそっとノックした。
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