幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
上 下
44 / 227
第3章 魔法の世界

11 いざ王城へ!

しおりを挟む
「よく来たなエルシア。ようこそ我が城へ」

城の中に一歩足を踏み入れると声が響いた。目の前にまた豪華な階段が現れその先に昨日会ったばかりの女王陛下が少年――クラウスさんを伴って佇んでいた。

「来てくれて感謝する。ん?貴殿はエルシアの友人か?」

女王陛下は階段を一段一段ゆっくりと降りながら隣に居たユキに問いかける。

それにユキは一歩踏み出してお辞儀をする。

「お初に御目にかかります女王陛下。私はユキ・ルターシア。エルシアの友人です」

急に話しかけられてもユキは動じることなく、冷静に自己紹介をした。

私はその様子に感心しながら、

「勝手ながら私が一緒にとお願いしたのです」

と説明を付け加える。

「そうだったか。よろしくなユキ」

「はい、こちらこそ」

階段を下りて目の前に立つ女王陛下。外見は私達と同じ少女なのに、女王の威厳、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

その彼女を前にしてもユキは淡々と返し、いつもと変わらず堂々としている。

私にはその姿が勇ましく映る。おどおどしてしまう自分とは正反対ね。



「本日はお招きいただきありがとうございます。女王陛下」

私も負けじと改めて感謝の言葉を紡ぐ。

「そんなに堅苦しくなくて良い。それと女王陛下はやめてくれ。公の場では無いのだから敬称は省いてくれ。ルリで良い」

「えっと、流石にそれは難しいので……、ルリ様、とお呼びしても良いですか?」

「仕方ないな。まぁ良いだろう。エル、ユキ、妾もそう呼ばせてもらうぞ」

そう言って女王陛下――ルリ様は嬉しそうに笑った。その後ろではクラウスさんが微笑ましくその様子を見つめていた。



「それで今日城へ招待したのはエルと、いやお前達と話しがしたかったからだ。だが話をするだけではつまらないだろうと思い、今宵は盛大な舞踏会を開くことにした。そちらの方がエルも楽しめるだろう?話の前にまずは舞踏会を楽しんで行ってほしい」

ルリ様が言うと、タイミングよく舞踏会で良く聞こえる心地の良いメロディーが流れだした。


「それからお前達二人には着替えて来てもらうぞ。クラウス案内してやれ」

すぐ傍に控えるクラウスさんに視線を送り、それを受け取ったクラウスさんは笑みを浮かべた。

「畏まりました。ではお二人ともこちらへ」

彼についていき、着替えのためのフィッティングルームへと向かって行った。



「こちらです。何か分からないことがございましたら中の者にお聞き下さい。それでは私は失礼致します」

そう言い残してクラウスさんは戻っていき、私達は二人取り残される。

さて、目の前には扉。

この中がフィッティングルームみたいだけど、何とも入りづらいほど豪華絢爛……。


そう思いながらもドアノブに手をかけ思い切って扉を開く。

すると、

「お待ちしておりました。エルシア様。ユキ様。どうぞこちらへ」

広い部屋の中には煌びやかな沢山のドレスが並び、髪飾りなどの小物類も置いてある。

そしてその場には当たり前のようにメイドさんが数人私達を出迎えてくれた。

クラウスさんの言っていた、分からなければ中の者にってメイドさんの事だったのね。


入ると早速メイドさんに付き添ってもらいながら、自分達が選んだドレスをメイドさんに手伝ってもらいながら着付ける。

ユキも同じように着付けを手伝ってもらっていた。


私の選んだドレスは瞳の色と同じアメジストのフリルがふんだんにあしらわれたドレス。

プリンセスラインと呼ばれる形のドレスで、裾が外に向かってふんわりと広がったデザイン。

まさに王道、お伽話のお姫様が来ているようなドレス。

それに足元に向かって広がるスカート部分が段々になっていて可愛さが増している。

お姫様になった気分……、なんてね。


そう言えばユキはどうしたかな?と思い見て見ると、私と同じく瞳の色に合わせて選んだみたい。

マゼンタ色のフリルふんだんのドレス。私のと違ってスカートの真ん中部分が開いていて、舌に向かって波打っているようなデザイン。

そして真っ白な髪とも良く合っていて、普段の大人っぽさと可愛さが相まって凄く良い感じ。

いつもは飾らない真っすぐな髪を今日は珍しく三つ編みのハーフアップにしていて、それも凄く可愛らしい。

私はいつも通りのハーフツインアップで変わらずだけどね。

後は小物で首元、耳元を飾って終わり。


目の前に置かれている姿見を見ると、いつもとは違う雰囲気をした自分がいた。

本当に自分なのかと疑いたくなるくらい。鏡の中の私はどこか嬉しそうにしているような緊張しているような表情を見せる。

「とてもお似合いですわ」

「そ、そうでしょうか」

メイドさんの声に我に返る。褒められて嬉しいけど照れくさい。


「エル準備は終わったかしら?」

私が準備が終わったところでユキから声がかかる。

「あ、はい。ユキ、とても似合っていて綺麗ですね」

「そ、そう。ありがとう。貴方も良く似合っていると思うわ」

純粋に綺麗と褒めたらまたしても珍しくユキが照れたように顔を赤くして、それを誤魔化すように私を見て同じように褒めてくれた。

「そ、そろそろ行きましょう。あまり待たせては失礼だから」

「はい」

滅多に見れないユキの照れた顔に可愛いなんて思いながら、足早に戻ろうとするユキの後を私は急いで追って行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

若輩当主と、ひよっこ令嬢

たつみ
恋愛
子爵令嬢アシュリリスは、次期当主の従兄弟の傍若無人ぶりに振り回されていた。 そんなある日、突然「公爵」が現れ、婚約者として公爵家の屋敷で暮らすことに! 屋敷での暮らしに慣れ始めた頃、別の女性が「離れ」に迎え入れられる。 そして、婚約者と「特別な客人(愛妾)」を伴い、夜会に出席すると言われた。 だが、屋敷の執事を意識している彼女は、少しも気に留めていない。 それよりも、執事の彼の言葉に、胸を高鳴らせていた。 「私でよろしければ、1曲お願いできますでしょうか」 ◇◇◇◇◇ 設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。 R-Kingdom_4 他サイトでも掲載しています。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結保証】「不貞を黙認せよ」ですって? いいえ、それなら婚約を破棄させていただきますわ

ネコ
恋愛
バニラ王国の侯爵令嬢アロマは、政略結婚で王弟殿下・マルスロッドと婚約した。 だが、マルスロッドには、アロマの親友・ナンシーと不貞行為をしているとの噂がたびたび……。 そのことをアロマが尋ねると、マルスロッドは逆上して「黙っていろ」と圧力をかける。 表面上は夫婦円満を装うものの、内心では深く傷つくアロマ。 そんな折、アロマはナンシーから「彼は本気で私を愛している」と告げられる。 ついに堪忍袋の緒が切れたアロマは、マルスロッドに婚約破棄を申し出る。 するとマルスロッドは「お前が不貞行為をしたことにするならいい」と言う。 アロマは不名誉な思いをしてでも、今の環境よりはマシと思ってそれを承諾する。 こうして、表向きにはアロマが悪いという形で婚約破棄が成立。 しかし、アロマは王弟相手に不貞行為をしたということで、侯爵家にいられなくなる。 仕方なくアロマが向かった先は、バニラ王国の宗主国たるエスターローゼン帝国。 侯爵令嬢という地位ですらなくなったアロマは一般人として帝国で暮らすことになる。 ……はずだったのだが、帝国へ向かう途中に皇太子のライトと出会ったことで状況は一変してしまう。 これは、アロマが隣国で報われ、マルスロッドとナンシーが破滅する物語。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

処理中です...