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第3章 魔法の世界

6 いざ隣国へ!

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ついに来ました。隣国アインフェルト王国!



「わぁ凄いですね!隣国ですよユキ」

「そうね」

窓から見える景色を眺めていつも以上にはしゃぐ私を、向かいに座っているユキは呆れたように見返した。

私とは反対に、彼女は窓から見える景色を静かに眺めていた。

それを見たらはしゃぎ過ぎたのを自覚して恥ずかしくなり、大人しく席に座りなおしたのでした。


今私達は隣国、アインフェルト王国に来ています。

学院まで馬車で送ってもらい、学院からまた違う馬車に乗り換えて今に至ると言う訳です。


アインフェルト王国はとても広い王国で、オルデシア王国も広さが広大だけど、それに負けをとらないくらいの土地を持っている。

そのため王国に入ったと言っても王都までは遠く、今は綺麗に立ち並んだ街並みが窓から見えているという感じ。

栄えていると言うことが一目でわかる位、多くの人が行き交っている。

その様子を眺めながら私達は目的地に着くまで他愛もない話をしていた。

ちなみにその間ウルは退屈そうに私の隣にちょこんと良い子に座っていました。

不満そうにしている顔も可愛い。なんてね。本人に言ったら益々怒られちゃうから黙っておこうっと。



そうそう、この所謂社会科見学は二人以上のグループを作りその人と行動をすると言うのが決まっていて、私はユキと一緒に行動をすることにしました。

静かで無口ではないけどそこまでお喋りではないユキは、はたから見たら冷たいように見えるらしくて、それはユキ本人が言っていたことだけど、私からしたらユキの冷静さに助けられることもあるし、判断力もあるからとても頼りになっているのです。

それに根は優しい人なのですよ。

あれ?なんか自慢話みたいになってしまった。

と、とにかくユキは本当は良い人って言うのを言いたかっただけです。

それと最近では見たことないような笑顔を見せてくれるようになって、何て言うか、笑顔は良く見せるけどそれは心からの笑顔ではないような感じがしていて少し気がかりだったんだよね。

だから心からの笑顔を見せてくれるくらいには、私のことを信用してくれたのかな?って勝手に嬉しく思っているのですよ。

話がそれちゃったけど……、そろそろ着くかな?

そう思ってまた窓の外を見てみた。程なくして馬車が止まって扉が開かれた。

「着いたようね。さぁ降りましょう」

「はいっ」

荷物を持ちユキに続いて馬車を降りる。初めての隣国の地にドキドキしながらも足を下ろした。

何てことはないけど、気持ち的に何だか緊張するものがあった。

「どうしたの?早く行きましょう」

「あ、はいっ」

ユキは特に変わった様子はなく不思議そうに声をかけて来る。

その声で我に返り、私は慌ててユキの後を追っていった。




「賑わっていますね」

「そうね。人混みは好きではないけれど偶には良いわね」

私達は今王都近くの街へ(遊びにと言ったら語弊があるかもしれないけど)来ています。

凄い賑わい。屋台も沢山出ていて、人々の活気が溢れる明るい街。

買い物目的でなくても来るだけで楽しい、見たいな雰囲気。


隣国へ来てまでの授業の目的はいくつかあり、お互いのことを良く知らないクラスメイト達と交流を深める事、それから他国へ直接訪れてその国の環境、文化などに触れて学ぶなど。

ちゃんと授業ではあるけど、初日の今日は着いてから自由時間なんです。

最初は宿に皆行くけど、そのあとは自由。

宿で休む人、私達のように街に来る人など様々で、私達は荷物を宿に預けてせっかくだからと言う事で街に来てみたのです。

家族にお土産とかも買いたいし。それにやっぱり来て正解だったようで、見上げれば瞳をキラキラさせたウルが嬉しそうにはしゃいでいた。

まぁ何はともあれ楽しそうで良かった。さっきまで退屈そうにしていたから退屈しのぎになれば良いなと思う。


そんなこんなで街を目的なく歩いていると……。

ドンッ

つい楽しくなってしまって前を見ていなくて、誰かに当たってしまう。

「す、すみませんっ、前をちゃんと見ていなくて……」

慌てて謝ってそちらを見ると私よりかは少し身長の低い子ども?が立っていた。

フードを目深に被っていたけど、ぶつかった拍子に一瞬だけ緑の瞳と髪がフードの下から覗いて、その人も驚いているようだった。

「あ、あの。大丈夫でしたか?」

綺麗な緑色だな、なんて思ったけどすぐに怪我をしていないかを尋ねてみると、それにハッとしたようにその人が反応して、何かから逃げるように慌ててその場を去って行ってしまった。

……何だったんだろう?

不思議に思い首を傾げた。走っていたところを見ると怪我はしていなさそうだったからそこは良かったと思ったけど。

隣国まで来て人に怪我をさせたなんてことになったら大変だからね。

一先ず安心して息をはいた。

「もうエル、何してるのよ」

「あ、すみません」

直ぐにユキが駆け寄ってきてくれて心配したように声をかけて来る。

それに大丈夫ですと笑顔で返した。

「怪我はないようね」

「はい」

「なら良かったわ。じゃぁ行きましょうか」

「そうですね」

心配してくれたユキは私に怪我がないと分かると安心したようで、再び歩きだす。私もその後に続いて歩いていくけど何となく気になってさっきの人が走って行った方を見つめた。


何故かは分からないけど心が落ち着かなかった。この時妙な胸騒ぎを私は感じていて、その嫌な予感が当たってしまうなんてその時は少しも思ってもいなかった。
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