幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
上 下
28 / 227
第2章 過去と現在

5 捜索

しおりを挟む
「エル様。今更ですがやはり屋敷へお戻りください」

「本当に今更ですね。私も一緒に行くって決めたのに、ここまで来てそれはないでしょうルカ」



私達は今、父様から聞いたセレーナさん目撃情報を頼りに探り、誘拐犯が逃げた可能性が高い思われる小さな村に来ていた。

私の屋敷から数時間くらいかかるので、途中までは馬車で、そのあとは歩きでここまでやってきたというわけです。

歩く時間長くて流石に疲労があるけど、歩きにしたのは正解だと思う。

もしも犯人がまだ潜んでいるとしたら、馬車を使ったら私達の存在が知られてしまう恐れがある。

それに目撃情報で私達以外、王城の騎士団や魔法士が行方を追っていることに既に気づいている可能性もある。

逃げる最中に目撃されてしまうような輩だとしても捕まえるまで油断は禁物。




それにしても、ここまで情報を頼りに来れたのは良かったけど、ここから先は目撃情報がないため足取りを追うことが難しくなってくる。

それを考えながらも、目立たないようにフードのついたコートを羽織り目立たないようにしてから、人気のない森林へと移動する。

わざわざ人気のない場所へ来たのはあることを試すため。


「ここで良いでしょうか。では誘拐犯の足取りを掴みますよ」

「エル様、それは僕が――」

「いいえ、私がやります。ルカは周りを見張っていてください」

「……分かりました。ですが無理はなさらないで下さいね」

「分かってます」

心配性なルカだけど、私の性格を知っているから多く食い下がらず、すぐに自分の仕事に集中してくれる。

そう言うところとても頼りになりますよ、ルカ。




「では行きますっ」

目を閉じると地面に向けて手をかざし、掌へ魔力をゆっくりと流していった。

私は魔力が膨大なので、抑えてもあふれ出してしまうことがしばしば。今もあふれ出してしまっているし、それが風となってせっかく深くかぶっていたフードがめくれてしまった。

まぁこの際気にしている場合ではないね。

目立つ金髪をあまり出していたくないけど。


「お願い見つけて……サーチ・アクティベート」

前に街で迷子になったときに試してみた魔法、サーチ。

探し物に便利な魔法と言われていて魔力を持った人なら誰でも使える魔法。

しかし人込みの中などで使うとあまり役立たないと言うデメリットがあって、前回それで一緒に来ていたルカを探すのに失敗、と言うか誘拐されて失敗ってこともあるかも。


そんな魔法を今一度試してみる。

この森林には人はほとんどいないでしょうし、犯人が魔力持ちかもしれないと考えたからです。

魔力持ちならこの魔法で反応を示すはずだから。


魔法を展開していくとこの辺りに居る魔力反応がいくつかあった。

あ、言い忘れていたけど、魔物と言うものも居て、魔物も魔力持ちなので反応してしまう。

魔物の魔力って何となく禍々しい気を放っている感じがするから、うまく説明できないけど分かるんですよね。


魔物は危険な存在だけど、今はそれに対処している場合ではないので捜索を続けますよ。


今展開している範囲には犯人らしい反応がないので、もう少し範囲を広げてみることに。


……!

範囲を広げたら反応があった。

今度は魔物ではありません。

魔力の波が同じところに集まっている。

幾つか反応があって、それを中心にその周辺には無数の反応があり、まるで何かを守るように感じた。

私は目を開けるとルカの方を振り返って静かに頷いて特定できたことを教えた。



「ルカ、犯人かまだはっきりは分からないけどそれらしい無数の反応がありました。それもここからそう遠くないところに」

「どのあたりですか?」

「大体ですが分かります。早くいきましょう」

そう伝えると反応があった場所に急いで向かった。





しばらくすると反応のあった場所に小さな小屋があるのが見えて来て、辺りを見るけどさっき反応した人の気配がまったくなく、人は誰も居なかった。

小屋だけがポツンと寂しく建っているだけ。

……どういうこと?

私達に気が付いた?それともあの小屋の中に潜んでいるとか?



それに探索魔法を使って反応があったから、少なからず彼らは魔法が使えるはずだし、気を付けないと。




「ルカ、あれです。あの小屋で反応がありました」

距離をとり、潜んでいるかもしれない相手に気付かれないように小声でルカに伝えた。

「行きましょう」

相手が見えないのなら好都合。

どこかに潜んでいるとしても、襲ってくる前にセレーナさんを助け出してしまおうと思い、私が足を一歩踏み出したところで腕を掴まれて制された。それは勿論ルカです。

「待ってください。周辺にも人の気配があります」

その言葉で私も一度周りを見回して見るけど、ルカのように人の気配を感じる事は出来なかった。

「分かるんですか」

そう聞くとルカは当然と言うように頷いて、

「数は九~十人と言ったところですね」

周りを観察しながらそう呟いた。


「エル様申し訳ありませんが、先に小屋へ向かってください。僕はこちらを片付けてから向かいますので」

「……でも」

そう言ったら最近見せなくなっていた優しい笑みを向けられて思わず言葉が出なくなる。

不意打ちを食らいました……。


「分かりました、先に行きます。気を付けてくださいね」

「はい、エル様こそ気を付けてください。すぐに向かいますから」

「はい、待ってます」

お互いに顔を合わせて頷き合う。それを確認するとルカに背を向け一直線に小屋に向かって走り出した。

するとそれとほぼ同時に魔法を発動する気配がしたけど、ルカに任せて止まることなく足を動かした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

フローズン・シャドウホールの狂気

バナナチップボーイ
ファンタジー
札幌game勝手に振興会のYouTubeの企画「昔小説家になりたかったオッサンが今さらChatGptを利用して面白い小説を書けるかどうか試してみることにした。」において書き上げた小説になります。 世代的にオッサンなので古めかしく重い感じのファンタジー作品となっております。同世代や濃厚なファンタジーが好きな人にはいいかもしれません。 内容:冒険者アリアが仲間二人と共にフローズンシャドウホールというダンジョンの探索を行うという内容です。その場所に秘められた謎とは果たしてなんなのか?? それは作者にも分からない。なぜならば、これはChatGptを駆使して書かれた作品だから。何が飛び出すのかは分からない。最後までご覧あれ。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

処理中です...