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第2章 過去と現在
5 捜索
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「エル様。今更ですがやはり屋敷へお戻りください」
「本当に今更ですね。私も一緒に行くって決めたのに、ここまで来てそれはないでしょうルカ」
私達は今、父様から聞いたセレーナさん目撃情報を頼りに探り、誘拐犯が逃げた可能性が高い思われる小さな村に来ていた。
私の屋敷から数時間くらいかかるので、途中までは馬車で、そのあとは歩きでここまでやってきたというわけです。
歩く時間長くて流石に疲労があるけど、歩きにしたのは正解だと思う。
もしも犯人がまだ潜んでいるとしたら、馬車を使ったら私達の存在が知られてしまう恐れがある。
それに目撃情報で私達以外、王城の騎士団や魔法士が行方を追っていることに既に気づいている可能性もある。
逃げる最中に目撃されてしまうような輩だとしても捕まえるまで油断は禁物。
それにしても、ここまで情報を頼りに来れたのは良かったけど、ここから先は目撃情報がないため足取りを追うことが難しくなってくる。
それを考えながらも、目立たないようにフードのついたコートを羽織り目立たないようにしてから、人気のない森林へと移動する。
わざわざ人気のない場所へ来たのはあることを試すため。
「ここで良いでしょうか。では誘拐犯の足取りを掴みますよ」
「エル様、それは僕が――」
「いいえ、私がやります。ルカは周りを見張っていてください」
「……分かりました。ですが無理はなさらないで下さいね」
「分かってます」
心配性なルカだけど、私の性格を知っているから多く食い下がらず、すぐに自分の仕事に集中してくれる。
そう言うところとても頼りになりますよ、ルカ。
「では行きますっ」
目を閉じると地面に向けて手をかざし、掌へ魔力をゆっくりと流していった。
私は魔力が膨大なので、抑えてもあふれ出してしまうことがしばしば。今もあふれ出してしまっているし、それが風となってせっかく深くかぶっていたフードがめくれてしまった。
まぁこの際気にしている場合ではないね。
目立つ金髪をあまり出していたくないけど。
「お願い見つけて……サーチ・アクティベート」
前に街で迷子になったときに試してみた魔法、サーチ。
探し物に便利な魔法と言われていて魔力を持った人なら誰でも使える魔法。
しかし人込みの中などで使うとあまり役立たないと言うデメリットがあって、前回それで一緒に来ていたルカを探すのに失敗、と言うか誘拐されて失敗ってこともあるかも。
そんな魔法を今一度試してみる。
この森林には人はほとんどいないでしょうし、犯人が魔力持ちかもしれないと考えたからです。
魔力持ちならこの魔法で反応を示すはずだから。
魔法を展開していくとこの辺りに居る魔力反応がいくつかあった。
あ、言い忘れていたけど、魔物と言うものも居て、魔物も魔力持ちなので反応してしまう。
魔物の魔力って何となく禍々しい気を放っている感じがするから、うまく説明できないけど分かるんですよね。
魔物は危険な存在だけど、今はそれに対処している場合ではないので捜索を続けますよ。
今展開している範囲には犯人らしい反応がないので、もう少し範囲を広げてみることに。
……!
範囲を広げたら反応があった。
今度は魔物ではありません。
魔力の波が同じところに集まっている。
幾つか反応があって、それを中心にその周辺には無数の反応があり、まるで何かを守るように感じた。
私は目を開けるとルカの方を振り返って静かに頷いて特定できたことを教えた。
「ルカ、犯人かまだはっきりは分からないけどそれらしい無数の反応がありました。それもここからそう遠くないところに」
「どのあたりですか?」
「大体ですが分かります。早くいきましょう」
そう伝えると反応があった場所に急いで向かった。
しばらくすると反応のあった場所に小さな小屋があるのが見えて来て、辺りを見るけどさっき反応した人の気配がまったくなく、人は誰も居なかった。
小屋だけがポツンと寂しく建っているだけ。
……どういうこと?
私達に気が付いた?それともあの小屋の中に潜んでいるとか?
それに探索魔法を使って反応があったから、少なからず彼らは魔法が使えるはずだし、気を付けないと。
「ルカ、あれです。あの小屋で反応がありました」
距離をとり、潜んでいるかもしれない相手に気付かれないように小声でルカに伝えた。
「行きましょう」
相手が見えないのなら好都合。
どこかに潜んでいるとしても、襲ってくる前にセレーナさんを助け出してしまおうと思い、私が足を一歩踏み出したところで腕を掴まれて制された。それは勿論ルカです。
「待ってください。周辺にも人の気配があります」
その言葉で私も一度周りを見回して見るけど、ルカのように人の気配を感じる事は出来なかった。
「分かるんですか」
そう聞くとルカは当然と言うように頷いて、
「数は九~十人と言ったところですね」
周りを観察しながらそう呟いた。
「エル様申し訳ありませんが、先に小屋へ向かってください。僕はこちらを片付けてから向かいますので」
「……でも」
そう言ったら最近見せなくなっていた優しい笑みを向けられて思わず言葉が出なくなる。
不意打ちを食らいました……。
「分かりました、先に行きます。気を付けてくださいね」
「はい、エル様こそ気を付けてください。すぐに向かいますから」
「はい、待ってます」
お互いに顔を合わせて頷き合う。それを確認するとルカに背を向け一直線に小屋に向かって走り出した。
するとそれとほぼ同時に魔法を発動する気配がしたけど、ルカに任せて止まることなく足を動かした。
「本当に今更ですね。私も一緒に行くって決めたのに、ここまで来てそれはないでしょうルカ」
私達は今、父様から聞いたセレーナさん目撃情報を頼りに探り、誘拐犯が逃げた可能性が高い思われる小さな村に来ていた。
私の屋敷から数時間くらいかかるので、途中までは馬車で、そのあとは歩きでここまでやってきたというわけです。
歩く時間長くて流石に疲労があるけど、歩きにしたのは正解だと思う。
もしも犯人がまだ潜んでいるとしたら、馬車を使ったら私達の存在が知られてしまう恐れがある。
それに目撃情報で私達以外、王城の騎士団や魔法士が行方を追っていることに既に気づいている可能性もある。
逃げる最中に目撃されてしまうような輩だとしても捕まえるまで油断は禁物。
それにしても、ここまで情報を頼りに来れたのは良かったけど、ここから先は目撃情報がないため足取りを追うことが難しくなってくる。
それを考えながらも、目立たないようにフードのついたコートを羽織り目立たないようにしてから、人気のない森林へと移動する。
わざわざ人気のない場所へ来たのはあることを試すため。
「ここで良いでしょうか。では誘拐犯の足取りを掴みますよ」
「エル様、それは僕が――」
「いいえ、私がやります。ルカは周りを見張っていてください」
「……分かりました。ですが無理はなさらないで下さいね」
「分かってます」
心配性なルカだけど、私の性格を知っているから多く食い下がらず、すぐに自分の仕事に集中してくれる。
そう言うところとても頼りになりますよ、ルカ。
「では行きますっ」
目を閉じると地面に向けて手をかざし、掌へ魔力をゆっくりと流していった。
私は魔力が膨大なので、抑えてもあふれ出してしまうことがしばしば。今もあふれ出してしまっているし、それが風となってせっかく深くかぶっていたフードがめくれてしまった。
まぁこの際気にしている場合ではないね。
目立つ金髪をあまり出していたくないけど。
「お願い見つけて……サーチ・アクティベート」
前に街で迷子になったときに試してみた魔法、サーチ。
探し物に便利な魔法と言われていて魔力を持った人なら誰でも使える魔法。
しかし人込みの中などで使うとあまり役立たないと言うデメリットがあって、前回それで一緒に来ていたルカを探すのに失敗、と言うか誘拐されて失敗ってこともあるかも。
そんな魔法を今一度試してみる。
この森林には人はほとんどいないでしょうし、犯人が魔力持ちかもしれないと考えたからです。
魔力持ちならこの魔法で反応を示すはずだから。
魔法を展開していくとこの辺りに居る魔力反応がいくつかあった。
あ、言い忘れていたけど、魔物と言うものも居て、魔物も魔力持ちなので反応してしまう。
魔物の魔力って何となく禍々しい気を放っている感じがするから、うまく説明できないけど分かるんですよね。
魔物は危険な存在だけど、今はそれに対処している場合ではないので捜索を続けますよ。
今展開している範囲には犯人らしい反応がないので、もう少し範囲を広げてみることに。
……!
範囲を広げたら反応があった。
今度は魔物ではありません。
魔力の波が同じところに集まっている。
幾つか反応があって、それを中心にその周辺には無数の反応があり、まるで何かを守るように感じた。
私は目を開けるとルカの方を振り返って静かに頷いて特定できたことを教えた。
「ルカ、犯人かまだはっきりは分からないけどそれらしい無数の反応がありました。それもここからそう遠くないところに」
「どのあたりですか?」
「大体ですが分かります。早くいきましょう」
そう伝えると反応があった場所に急いで向かった。
しばらくすると反応のあった場所に小さな小屋があるのが見えて来て、辺りを見るけどさっき反応した人の気配がまったくなく、人は誰も居なかった。
小屋だけがポツンと寂しく建っているだけ。
……どういうこと?
私達に気が付いた?それともあの小屋の中に潜んでいるとか?
それに探索魔法を使って反応があったから、少なからず彼らは魔法が使えるはずだし、気を付けないと。
「ルカ、あれです。あの小屋で反応がありました」
距離をとり、潜んでいるかもしれない相手に気付かれないように小声でルカに伝えた。
「行きましょう」
相手が見えないのなら好都合。
どこかに潜んでいるとしても、襲ってくる前にセレーナさんを助け出してしまおうと思い、私が足を一歩踏み出したところで腕を掴まれて制された。それは勿論ルカです。
「待ってください。周辺にも人の気配があります」
その言葉で私も一度周りを見回して見るけど、ルカのように人の気配を感じる事は出来なかった。
「分かるんですか」
そう聞くとルカは当然と言うように頷いて、
「数は九~十人と言ったところですね」
周りを観察しながらそう呟いた。
「エル様申し訳ありませんが、先に小屋へ向かってください。僕はこちらを片付けてから向かいますので」
「……でも」
そう言ったら最近見せなくなっていた優しい笑みを向けられて思わず言葉が出なくなる。
不意打ちを食らいました……。
「分かりました、先に行きます。気を付けてくださいね」
「はい、エル様こそ気を付けてください。すぐに向かいますから」
「はい、待ってます」
お互いに顔を合わせて頷き合う。それを確認するとルカに背を向け一直線に小屋に向かって走り出した。
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