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第1章 新しい世界
8 光の救世主!?
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出口を目指し走り続けていると、唐突に開けた空間が視界に入り込んできた。それに私は思わず足を止め、辺りの様子を注意深く確認するがそこに人の気配らしきものはない。
その事に一先ず安心して、その場所を散策すようにゆっくりと歩く。本当なら寄り道等している場合ではないし、ルカにも連絡を取りたいところだが――先程感じた気配の正体が気になる。
嫌な感じはしなかったから敵ではないと思う、けど……。
薄暗いが灯りをつけるのは危険だろうと判断し、仕方なく暗い中を歩いてあの時感じた気配を探ったのだった。
すると――。
……?
注意深く歩き回り、更に奥へと向かってみると、薄っすらと地面に何かが見え、私は警戒しながらその場所へと近づき目を凝らした。
――これって!
そこにあったのは魔法陣……のようなもの。
魔法陣、のようなもの、というのもこの陣であろうものが半分程欠けている為、正直本当に魔法陣なのか自信がなかったからだ。
とは言えこの陣、元々はしっかりとした魔法陣が描かれていたのではないだろうか?
いつ描かれたものか定かではないが、建物の劣化具合を見るに相当古いものと見えるし、保管をされているわけでもなく、建物の隙間から入ってくる風や、そこから運ばれてくる土、砂等が描かれていた陣を消してしまったのだろう。
一体何のための魔法陣なのか?と言う疑問は残るが、この状態ではもう機能しないだろうし、とそう思いつつもその魔法陣に手を触れようとした、その時。
「あら、人間?それも小さくて可愛らしいお客様ね。どうしてこんなところに人がいるのかしら?」
突然聞こえる声。それも小さい女の子と思われるような可愛らしい声。
この声……私の聞き間違いでないのなら、この魔法陣から聞こえたような……?
そう考え、私は伸ばしていた手を慌てて引っ込めると、ササっと一歩後ろに後ずさった。
「……まさか、魔法陣から…女の子の声?」
魔法が存在する世界とは言え、幽霊は流石にいないだろうと根拠もなく思っていた私だけど、こればかりは本当に本物が出てしまったのかと恐怖に震える。
「ああ、怖がらないで。私は人ではないけれど貴方に危害を加える気はないわ」
また声が聞こえてくる。それも今度こそ間違いなくこの魔法陣から。
何だか怖がらせないように必死と言うか、声の主は心配そうな声音でそう言った。
女の子の声が本当に私を心配するような響きをしていたので、少しばかり肩の力が抜けた気がした。
「貴方は、誰なんですか…?」
心を落ち着けるように息を吐き恐る恐るではあるが、声の主にそう問いかけると、うふふ、と上品な笑い声が返ってくる。更に声の主はこう続けた。
「そうね。名前が分からないと不便よね。ごめんなさいね。私の名前はウルティナよ」
ウルティナと名乗る声の主がそう言うと、欠けていて機能しないはずだった魔法陣が突然光りを放ち始める。
その見ていられない程眩しい光に、私はギュッと目を瞑った。
一体何が……っ!
私は頭が追い付かず混乱した。が、しかしその間にあれ程眩しかった光がすーっと消えていくのを瞼の裏で感じて、ゆっくりと目を開いてみる。
すると今の今まで魔法陣しか存在しなかったその場所に、幼い容姿をした女の子が現れた。それもどういう訳か、宙に浮かんだままで、私ににっこりと微笑みかけていたのだった。
……め、女神様?
何が何だか。突然の事過ぎて、頭に浮かんだのはそんな突拍子もない単語だった。けれどそう思ってしまうのも仕方がないのではないか。なんたってその女の子は幼い容姿をしながら、とても神々しい輝きと、圧倒的な存在感を放っていたのだから。
肩につくかつかないかくらいの長さの髪は金色に輝き、クリっとした大きな瞳も金色に光っている。それに空中でユラユラと漂っているから、後ろの短い髪より少し長めな顔のサイドの髪がその動きに合わせて揺れる。
そんな左右非対称な髪型や小柄な体型だが、そんな事が気にならないくらい彼女の顔は整っており、私から見てもとても美しい幼女だ。
私よりも小柄な彼女だけど、今は宙をユラユラと浮遊している為、普通なら私が見下ろす感じになるところ、目線がしっかりと合うので凄く違和感があった。
まあそれは普通の女の子に限った話で、彼女には通じないだろう。先程彼女自身も自分を人ではないと言っていたし。
でもそうなると本当に女神様なんじゃ……?
「これが私の姿よ」
「……貴方は一体……。先程人ではないと言っていましたけど…もしかして、本当に女神様…ですか?」
知らず知らずの内の胸の高鳴りを感じながらも、ドキドキしながら彼女に尋ねる。
しかし彼女の反応は思っていたものと少し違っていた。彼女は元から大きなその瞳を、零れ落ちてしまうのではないかと思う程更に大きくし驚いた表情をしたのだ。
……あれ?違う?魔法が存在するこの世界なら、女神様がいてもおかしくないのかなって思ったんだけど。
それに幽霊は個人的にちょっと…ね……。
その反応に少し肩を落としたものの、その後に彼女の口から発せられた言葉に私は大きな衝撃を受ける事となる。
「残念、私は女神ではなく精霊よ」
「――せ、精霊っ……!?」
さも挨拶を交わすかのように平然とそう言ってのけた彼女。その衝撃の事実に今度は私が驚く番だった。
私が驚いたのを見て、しかし彼女はそれが何か?とでも言いたげな目をこちらに向けるだけだった。
「そう、光を司る精霊よ」
仕掛けたドッキリが成功した、とでも言うように、急なカミングアウトをかました彼女は、それはとてもとても満足そうな顔をしたのだった。
本当に衝撃の事実。ドッキリをされた側はこんな気持ちだったのか、等と割とどうでもいい事が頭をめぐる。だがしかし今それはおいておいて――。
彼女が言うように本当に精霊なのだとしたら、まず私に姿を見せてしまっても良いのだろうかと疑問が浮かぶ。
精霊は人前に姿を見せず、警戒心も強いと侯爵邸にあったある書物で読んだ事がある。
確かにこうして精霊の記述はあるが、今までその存在をこの目で見た事は一度もなく、それもあって精霊の存在はお伽話に登場する架空の存在として私の中で勝手に定着していたのだ。
それが何と言う事か、今私の目の前にいる――。
しっかりと己の目に映っていると言うのに、未だに信じられない。本当にこれは現実なのだろうか?と自分の目を疑ってしまうくらいには混乱していた。
しかも現れたのが絶世と言って良い程の美貌を持った幼女。その姿に思わず見惚れてしまった。
私はそんな小さな幼女に暫くの間釘付けとなったのだった。
「見つけたぞっ、さっきは良くもやってくれたなっ!」
が、そんな私を現実に引き戻したのは最悪にも、聞き覚えのある男の声だった。
我に返り声の方へ振り返ると、着ていたマントを脱いだのか、傷だらけの顔が露となり、あからさまに顔を歪め激昂している男の姿があった。
先程私が魔法で気絶させた男。意識が戻ってしまったようだ。
それに男は一人ではなく、男の仲間と思われる、こちらもあからさまに悪そうな風貌をした四人の男達が、今にも襲い掛かってきそうに待ち構えていた。
男一人でも大変だったと言うのに更に人数が増え、明らかにこちらが不利な状況。
一体どうしたら……。
風の魔法を使ったとしても、全員に当たらなければ意味がないし、威力はあれど発動中は私自身が無防備となってしまい危険だ。
それに攻撃中は防御魔法で身を守る手もあるが、そうすると今度は攻撃魔法の威力が落ちてしまう。
二重での魔法の扱いは難しいし、今の私はまだ未熟で魔法もルカの指導の下、見習い中だから二重魔法の使用は出来ない。
大技を繰り出せるわけでもないから、相手が五人とは言っても下手をしたら命取りだ。
背中に冷や汗が流れ、手にも震えが生じ始めた。
こうして考えている間にも男達は、それぞれ懐から取り出した短いナイフを構え、ジリジリと近づいて来る。
私を捕まえる、と言うより殺す気で、と言った方が正しいか殺気が駄々洩れだ。
男達が近づいてくると私もそれに合わせて一歩後ずさる。
彼ら、特に先程の男は私の攻撃魔法を警戒しているのか、一気に間合いを詰めては来ることはない。それでもゆっくりと確実に私を追い詰めようとゆっくりと近づいて来ていた。
そして緊張漂う中私は後ろに下がり続け――ついに壁に背中が付いてしまった。退路を断たれた事にはっと気づいたその時、好機と言うように男が声を上げた。
「もう逃げられねぇ!今度は逃がさねぇぞっ!覚悟しろっ!!」
男は一気に間合いを詰めようとしてきて、他四人も男に続きこちらに向かって走って来る。
こんなところで終わるわけには行かない……っ。
そう思い、咄嗟に防御魔法を発動させようと私は手を上げた。
――が、しかし呪文を唱えようと口を開きかけたその時、横から小さな手がそれを制する。
「ウルティナ、さん……?」
その小さな手はいつの間にか私の横に居たウルティナさんのものだった。
相変わらず宙に浮いている彼女は驚きながらそちらを見た私に、大丈夫よ、とだけ言いふわりと前に躍り出た。
「ウルティナさんっ!」
危険が迫る中、庇う様に目の前に躍り出てしまった小さな女の子に、本人から大丈夫と言われても私は叫ばずにはいられなかった。
「大丈夫よ。そこで見ていて」
だが慌てる私とは対照的に、こちらを振り返った彼女はもう一度大丈夫、と言うと自信に満ちた笑みを浮かべる。
その姿に息を呑んでいると、先程彼女が魔法陣から現れた時と同じ光が彼女の身体から溢れ出し、それは次第に身体を離れ丸い球体へと姿を変えていく。そして次の瞬間、拳ほどの大きさとなった球体が迫りくる男達目掛けて飛来していったのだ。
この一瞬でかなりの量の球体が現れ、それが一斉に四方八方から男達に次々と襲い掛かっていった。
「何だこれはっ!」
「があああっ!!」
次から次へと襲いくる謎の光の球体に、男達は成すすべはなかった。彼等の叫び声が響き渡る。
ある者は命中した後地面に叩きつけられ、ある者は後方へ吹き飛ばされていく。
そして五人いた男達の内、四人を瞬く間に制圧してしまった。
「…クソッ!!」
しかし一人だけ倒れずに未だ立ち続けている男がいた。私を捕まえ、誘拐した男だ。
直接でないにしろ、いくらか攻撃は受けているようで、着ている服はボロボロだった。それでも倒れないとは、運だけは良いのかもしれない。
けれどウルティナさんはそうは思っていないようだ。
「あら、これだけの攻撃を凌ぐなんて中々やるじゃない。でもそれは貴方の持つそのナイフのお陰のようね」
……ナイフ?……あっ!
立っている男が手に持つナイフ。それは何の変哲もない物かと思っていたが、良く見ると剣先が淡く光を放っているのが見えた。
「あれはもしかして……」
「貴方も気づいたようね。そう、あれは魔法道具よ」
魔法道具――魔法が使用出来ない人の為に作られた、魔力の籠った道具の事。私達が呪文を唱えて事象を発動させる用途と同じように、それぞれの魔法道具に決められた呪文があり、それを唱えれば道具に予め設定されていた魔法が発動すると言う仕組みだ。
物によってだが、程度な魔法が施されているのなら結構な回数使用可能であり、対して高度な魔法が施されている場合は数回の使用で物自体が壊れてしまう。
低度な魔法だと、簡単な防御や生活に必要な火を付けたり、水を少量出現させる等。攻撃となると、相手に掠り傷を付ける程度の魔法しか付与出来ないだろう。
高度な魔法では、強固な防御や殺傷能力の高い攻撃魔法等も使用が可能のはずで、扱いには注意が必要な類となる。
先程の様子から察するに、男の持つナイフは前者の低度の魔法が施された魔法道具のようだ。それも簡単な防御魔法が付与されたナイフ。
高度な魔法が付与された魔法道具はその効力もあり高値で取引されるが、男の身なりからして、そのように高価なものを男が手に入れられるとは思えなかった。
その事も含め、男の持つナイフは防御魔法が施された、低度の魔法道具だろうと思われた。
それにしても簡単な防御魔法だけしか付与されていなかったナイフ一つで、良くあの状況を凌げたと本当に運が良い人だと感心しそうになる。
「……ちっ」
しかしあれだけの攻撃をくらえば、魔法道具とは言え流石に限界だったのか、男の持つナイフは壊れ地面に落ちてしまった。
それを見た男は舌打ちをし、徐に懐に手を入れる動きをする。そして取り出されたのは今壊れた物と同じ形の新たなナイフだった。
一体何本持っているの……!
取り出したそのナイフも魔法道具であろう事は間違いないが、効果は恐らく先程とは違うだろう。
その考えを裏付けるかのように、男の顔は笑っていた。
「全く懲りないわね。そのナイフがいくつ増えても結果は同じ事よ」
言いながらウルティナさんはもう一度光の球体を放ち、対して男は動かずにじっと球体を目で追う。
そして球体が目の前に来たその瞬間、持っていたナイフを下から上に向かって振り上げる。
――キーンッ
まるで金属同士がぶつかり合うような音が響き渡る。
「球体を弾いた……っ!」
男の身体を吹き飛ばすと思っていたその球体は、男の持つナイフが弾き相殺されたのだ。その弾かれた球体は後に地面へと落下し、霧散するように消失していった。
「なるほど。それは私の攻撃を弾く効果を持っているのね」
そうウルティナさんが言った直後、男の使ったナイフは先程と同じように壊れてしまう。先程とは違い一度で壊れてしまうなんて、余程ウルティナさんの作り出したあの球体が強力って事だ。
「クソっ!死ねーっ!!」
そしていくら忍ばせているのか、更に三本目のナイフを懐から取り出し、男は狂ったように叫びながらこちらに向かってきた。
「でも残念。お前は私には勝てない。さあ、もう終わりにしましょう」
半ば半狂乱で突っ込んでくる男に、ウルティナさんは先程の可愛らしい声ではなく、別人のような低い声で吐き捨てるように囁くと、自身の小さな手を前に突き出す。
「ふふ。光にはこんな使い方もあるのよ」
彼女の後ろで様子を見ていると、先程まで光の球体だった物が先の尖った剣の形へとその姿を変化された。
光の剣――ライトソード。そう呼ぶに相応しい光の剣は、たちまち数を増やし数本が目の前に現れる。
「この剣はあらゆる物を切り裂き、浄化する効果を持つ。そのナイフではとてもじゃないけれど太刀打ちなんて出来ないわよ?覚悟しなさい」
その言葉と共に光の剣を容赦なく放った。剣を弾こうと男も躍起になる、が――。
ガキーンッ!
「……がぁっ」
金属音が響き男の握っていたナイフが光の剣に弾かた。ナイフは空中へ放り出され、その衝撃で男は体制を崩し、その隙を逃さず、次の剣が飛んでいき、その時には男は既に体制を崩していた為、今度こそ成すすべなく飛んでくる衝撃で壁まで吹き飛ばされていった。
その後新たに剣を生成させたウルティナさんは、吹き飛ばされた男をまるでダーツのように壁に狙い貼り付けにしていった。それも器用に男の服だけを狙って。
そして貼り付けにされた当の本人は、動きを封じられ、更に圧倒的な力の差を見せられ顔を蒼褪めさせるとカクンと項垂れてしまったのだった。
「……ウルティナさん。す、凄いです!」
一部始終を大人しく見ていた私は感嘆の声を上げた。その声に反応して振り返ったウルティナさんは、ニコっと笑うとこれくらい当り前よ、と胸を張る。
「精霊の中でも私は強いのよ。この程度の相手どうって事ないわ」
「そ、そうなんですね……」
語尾にハートマークが付きそうなくらいの笑顔。
凄すぎて私も笑うしかない。なんたって次元が違うのだから。
精霊の力がここまでとは……。なんとも恐れ多い事だ。
「あ、あの…っ、危ないところを助けて頂きありがとうございました!」
顔を引き攣らせて呆けていたが、不意に我に返るとどんな理由があれ、自分を助けてくれた恩人に慌てて頭を下げた。
助けてくれた人物が誰であれ、自分を助けてくれた事には変わりないのだから。
「お礼なんていいのよ。私が好きでやった事なんだから」
ウルティナさんは気にしていないわ、と言うように優しい声音と上品な笑みでそう返す。
「ところで貴方名前は?」
「エ、エルシア、と申します」
それよりも名前を教えて、と言う彼女に私は緊張した面持ちで自分の名前を告げる。
「そう。エルシアちゃんね。良い名前だわ。エルちゃんと呼ばせてもらうわね。私の事はウルとでも気やすく呼んで頂戴ね!」
そう言ってウルティナさん――ウルが嬉しそうに笑うので、私もつられて笑みを零したのだった。
その事に一先ず安心して、その場所を散策すようにゆっくりと歩く。本当なら寄り道等している場合ではないし、ルカにも連絡を取りたいところだが――先程感じた気配の正体が気になる。
嫌な感じはしなかったから敵ではないと思う、けど……。
薄暗いが灯りをつけるのは危険だろうと判断し、仕方なく暗い中を歩いてあの時感じた気配を探ったのだった。
すると――。
……?
注意深く歩き回り、更に奥へと向かってみると、薄っすらと地面に何かが見え、私は警戒しながらその場所へと近づき目を凝らした。
――これって!
そこにあったのは魔法陣……のようなもの。
魔法陣、のようなもの、というのもこの陣であろうものが半分程欠けている為、正直本当に魔法陣なのか自信がなかったからだ。
とは言えこの陣、元々はしっかりとした魔法陣が描かれていたのではないだろうか?
いつ描かれたものか定かではないが、建物の劣化具合を見るに相当古いものと見えるし、保管をされているわけでもなく、建物の隙間から入ってくる風や、そこから運ばれてくる土、砂等が描かれていた陣を消してしまったのだろう。
一体何のための魔法陣なのか?と言う疑問は残るが、この状態ではもう機能しないだろうし、とそう思いつつもその魔法陣に手を触れようとした、その時。
「あら、人間?それも小さくて可愛らしいお客様ね。どうしてこんなところに人がいるのかしら?」
突然聞こえる声。それも小さい女の子と思われるような可愛らしい声。
この声……私の聞き間違いでないのなら、この魔法陣から聞こえたような……?
そう考え、私は伸ばしていた手を慌てて引っ込めると、ササっと一歩後ろに後ずさった。
「……まさか、魔法陣から…女の子の声?」
魔法が存在する世界とは言え、幽霊は流石にいないだろうと根拠もなく思っていた私だけど、こればかりは本当に本物が出てしまったのかと恐怖に震える。
「ああ、怖がらないで。私は人ではないけれど貴方に危害を加える気はないわ」
また声が聞こえてくる。それも今度こそ間違いなくこの魔法陣から。
何だか怖がらせないように必死と言うか、声の主は心配そうな声音でそう言った。
女の子の声が本当に私を心配するような響きをしていたので、少しばかり肩の力が抜けた気がした。
「貴方は、誰なんですか…?」
心を落ち着けるように息を吐き恐る恐るではあるが、声の主にそう問いかけると、うふふ、と上品な笑い声が返ってくる。更に声の主はこう続けた。
「そうね。名前が分からないと不便よね。ごめんなさいね。私の名前はウルティナよ」
ウルティナと名乗る声の主がそう言うと、欠けていて機能しないはずだった魔法陣が突然光りを放ち始める。
その見ていられない程眩しい光に、私はギュッと目を瞑った。
一体何が……っ!
私は頭が追い付かず混乱した。が、しかしその間にあれ程眩しかった光がすーっと消えていくのを瞼の裏で感じて、ゆっくりと目を開いてみる。
すると今の今まで魔法陣しか存在しなかったその場所に、幼い容姿をした女の子が現れた。それもどういう訳か、宙に浮かんだままで、私ににっこりと微笑みかけていたのだった。
……め、女神様?
何が何だか。突然の事過ぎて、頭に浮かんだのはそんな突拍子もない単語だった。けれどそう思ってしまうのも仕方がないのではないか。なんたってその女の子は幼い容姿をしながら、とても神々しい輝きと、圧倒的な存在感を放っていたのだから。
肩につくかつかないかくらいの長さの髪は金色に輝き、クリっとした大きな瞳も金色に光っている。それに空中でユラユラと漂っているから、後ろの短い髪より少し長めな顔のサイドの髪がその動きに合わせて揺れる。
そんな左右非対称な髪型や小柄な体型だが、そんな事が気にならないくらい彼女の顔は整っており、私から見てもとても美しい幼女だ。
私よりも小柄な彼女だけど、今は宙をユラユラと浮遊している為、普通なら私が見下ろす感じになるところ、目線がしっかりと合うので凄く違和感があった。
まあそれは普通の女の子に限った話で、彼女には通じないだろう。先程彼女自身も自分を人ではないと言っていたし。
でもそうなると本当に女神様なんじゃ……?
「これが私の姿よ」
「……貴方は一体……。先程人ではないと言っていましたけど…もしかして、本当に女神様…ですか?」
知らず知らずの内の胸の高鳴りを感じながらも、ドキドキしながら彼女に尋ねる。
しかし彼女の反応は思っていたものと少し違っていた。彼女は元から大きなその瞳を、零れ落ちてしまうのではないかと思う程更に大きくし驚いた表情をしたのだ。
……あれ?違う?魔法が存在するこの世界なら、女神様がいてもおかしくないのかなって思ったんだけど。
それに幽霊は個人的にちょっと…ね……。
その反応に少し肩を落としたものの、その後に彼女の口から発せられた言葉に私は大きな衝撃を受ける事となる。
「残念、私は女神ではなく精霊よ」
「――せ、精霊っ……!?」
さも挨拶を交わすかのように平然とそう言ってのけた彼女。その衝撃の事実に今度は私が驚く番だった。
私が驚いたのを見て、しかし彼女はそれが何か?とでも言いたげな目をこちらに向けるだけだった。
「そう、光を司る精霊よ」
仕掛けたドッキリが成功した、とでも言うように、急なカミングアウトをかました彼女は、それはとてもとても満足そうな顔をしたのだった。
本当に衝撃の事実。ドッキリをされた側はこんな気持ちだったのか、等と割とどうでもいい事が頭をめぐる。だがしかし今それはおいておいて――。
彼女が言うように本当に精霊なのだとしたら、まず私に姿を見せてしまっても良いのだろうかと疑問が浮かぶ。
精霊は人前に姿を見せず、警戒心も強いと侯爵邸にあったある書物で読んだ事がある。
確かにこうして精霊の記述はあるが、今までその存在をこの目で見た事は一度もなく、それもあって精霊の存在はお伽話に登場する架空の存在として私の中で勝手に定着していたのだ。
それが何と言う事か、今私の目の前にいる――。
しっかりと己の目に映っていると言うのに、未だに信じられない。本当にこれは現実なのだろうか?と自分の目を疑ってしまうくらいには混乱していた。
しかも現れたのが絶世と言って良い程の美貌を持った幼女。その姿に思わず見惚れてしまった。
私はそんな小さな幼女に暫くの間釘付けとなったのだった。
「見つけたぞっ、さっきは良くもやってくれたなっ!」
が、そんな私を現実に引き戻したのは最悪にも、聞き覚えのある男の声だった。
我に返り声の方へ振り返ると、着ていたマントを脱いだのか、傷だらけの顔が露となり、あからさまに顔を歪め激昂している男の姿があった。
先程私が魔法で気絶させた男。意識が戻ってしまったようだ。
それに男は一人ではなく、男の仲間と思われる、こちらもあからさまに悪そうな風貌をした四人の男達が、今にも襲い掛かってきそうに待ち構えていた。
男一人でも大変だったと言うのに更に人数が増え、明らかにこちらが不利な状況。
一体どうしたら……。
風の魔法を使ったとしても、全員に当たらなければ意味がないし、威力はあれど発動中は私自身が無防備となってしまい危険だ。
それに攻撃中は防御魔法で身を守る手もあるが、そうすると今度は攻撃魔法の威力が落ちてしまう。
二重での魔法の扱いは難しいし、今の私はまだ未熟で魔法もルカの指導の下、見習い中だから二重魔法の使用は出来ない。
大技を繰り出せるわけでもないから、相手が五人とは言っても下手をしたら命取りだ。
背中に冷や汗が流れ、手にも震えが生じ始めた。
こうして考えている間にも男達は、それぞれ懐から取り出した短いナイフを構え、ジリジリと近づいて来る。
私を捕まえる、と言うより殺す気で、と言った方が正しいか殺気が駄々洩れだ。
男達が近づいてくると私もそれに合わせて一歩後ずさる。
彼ら、特に先程の男は私の攻撃魔法を警戒しているのか、一気に間合いを詰めては来ることはない。それでもゆっくりと確実に私を追い詰めようとゆっくりと近づいて来ていた。
そして緊張漂う中私は後ろに下がり続け――ついに壁に背中が付いてしまった。退路を断たれた事にはっと気づいたその時、好機と言うように男が声を上げた。
「もう逃げられねぇ!今度は逃がさねぇぞっ!覚悟しろっ!!」
男は一気に間合いを詰めようとしてきて、他四人も男に続きこちらに向かって走って来る。
こんなところで終わるわけには行かない……っ。
そう思い、咄嗟に防御魔法を発動させようと私は手を上げた。
――が、しかし呪文を唱えようと口を開きかけたその時、横から小さな手がそれを制する。
「ウルティナ、さん……?」
その小さな手はいつの間にか私の横に居たウルティナさんのものだった。
相変わらず宙に浮いている彼女は驚きながらそちらを見た私に、大丈夫よ、とだけ言いふわりと前に躍り出た。
「ウルティナさんっ!」
危険が迫る中、庇う様に目の前に躍り出てしまった小さな女の子に、本人から大丈夫と言われても私は叫ばずにはいられなかった。
「大丈夫よ。そこで見ていて」
だが慌てる私とは対照的に、こちらを振り返った彼女はもう一度大丈夫、と言うと自信に満ちた笑みを浮かべる。
その姿に息を呑んでいると、先程彼女が魔法陣から現れた時と同じ光が彼女の身体から溢れ出し、それは次第に身体を離れ丸い球体へと姿を変えていく。そして次の瞬間、拳ほどの大きさとなった球体が迫りくる男達目掛けて飛来していったのだ。
この一瞬でかなりの量の球体が現れ、それが一斉に四方八方から男達に次々と襲い掛かっていった。
「何だこれはっ!」
「があああっ!!」
次から次へと襲いくる謎の光の球体に、男達は成すすべはなかった。彼等の叫び声が響き渡る。
ある者は命中した後地面に叩きつけられ、ある者は後方へ吹き飛ばされていく。
そして五人いた男達の内、四人を瞬く間に制圧してしまった。
「…クソッ!!」
しかし一人だけ倒れずに未だ立ち続けている男がいた。私を捕まえ、誘拐した男だ。
直接でないにしろ、いくらか攻撃は受けているようで、着ている服はボロボロだった。それでも倒れないとは、運だけは良いのかもしれない。
けれどウルティナさんはそうは思っていないようだ。
「あら、これだけの攻撃を凌ぐなんて中々やるじゃない。でもそれは貴方の持つそのナイフのお陰のようね」
……ナイフ?……あっ!
立っている男が手に持つナイフ。それは何の変哲もない物かと思っていたが、良く見ると剣先が淡く光を放っているのが見えた。
「あれはもしかして……」
「貴方も気づいたようね。そう、あれは魔法道具よ」
魔法道具――魔法が使用出来ない人の為に作られた、魔力の籠った道具の事。私達が呪文を唱えて事象を発動させる用途と同じように、それぞれの魔法道具に決められた呪文があり、それを唱えれば道具に予め設定されていた魔法が発動すると言う仕組みだ。
物によってだが、程度な魔法が施されているのなら結構な回数使用可能であり、対して高度な魔法が施されている場合は数回の使用で物自体が壊れてしまう。
低度な魔法だと、簡単な防御や生活に必要な火を付けたり、水を少量出現させる等。攻撃となると、相手に掠り傷を付ける程度の魔法しか付与出来ないだろう。
高度な魔法では、強固な防御や殺傷能力の高い攻撃魔法等も使用が可能のはずで、扱いには注意が必要な類となる。
先程の様子から察するに、男の持つナイフは前者の低度の魔法が施された魔法道具のようだ。それも簡単な防御魔法が付与されたナイフ。
高度な魔法が付与された魔法道具はその効力もあり高値で取引されるが、男の身なりからして、そのように高価なものを男が手に入れられるとは思えなかった。
その事も含め、男の持つナイフは防御魔法が施された、低度の魔法道具だろうと思われた。
それにしても簡単な防御魔法だけしか付与されていなかったナイフ一つで、良くあの状況を凌げたと本当に運が良い人だと感心しそうになる。
「……ちっ」
しかしあれだけの攻撃をくらえば、魔法道具とは言え流石に限界だったのか、男の持つナイフは壊れ地面に落ちてしまった。
それを見た男は舌打ちをし、徐に懐に手を入れる動きをする。そして取り出されたのは今壊れた物と同じ形の新たなナイフだった。
一体何本持っているの……!
取り出したそのナイフも魔法道具であろう事は間違いないが、効果は恐らく先程とは違うだろう。
その考えを裏付けるかのように、男の顔は笑っていた。
「全く懲りないわね。そのナイフがいくつ増えても結果は同じ事よ」
言いながらウルティナさんはもう一度光の球体を放ち、対して男は動かずにじっと球体を目で追う。
そして球体が目の前に来たその瞬間、持っていたナイフを下から上に向かって振り上げる。
――キーンッ
まるで金属同士がぶつかり合うような音が響き渡る。
「球体を弾いた……っ!」
男の身体を吹き飛ばすと思っていたその球体は、男の持つナイフが弾き相殺されたのだ。その弾かれた球体は後に地面へと落下し、霧散するように消失していった。
「なるほど。それは私の攻撃を弾く効果を持っているのね」
そうウルティナさんが言った直後、男の使ったナイフは先程と同じように壊れてしまう。先程とは違い一度で壊れてしまうなんて、余程ウルティナさんの作り出したあの球体が強力って事だ。
「クソっ!死ねーっ!!」
そしていくら忍ばせているのか、更に三本目のナイフを懐から取り出し、男は狂ったように叫びながらこちらに向かってきた。
「でも残念。お前は私には勝てない。さあ、もう終わりにしましょう」
半ば半狂乱で突っ込んでくる男に、ウルティナさんは先程の可愛らしい声ではなく、別人のような低い声で吐き捨てるように囁くと、自身の小さな手を前に突き出す。
「ふふ。光にはこんな使い方もあるのよ」
彼女の後ろで様子を見ていると、先程まで光の球体だった物が先の尖った剣の形へとその姿を変化された。
光の剣――ライトソード。そう呼ぶに相応しい光の剣は、たちまち数を増やし数本が目の前に現れる。
「この剣はあらゆる物を切り裂き、浄化する効果を持つ。そのナイフではとてもじゃないけれど太刀打ちなんて出来ないわよ?覚悟しなさい」
その言葉と共に光の剣を容赦なく放った。剣を弾こうと男も躍起になる、が――。
ガキーンッ!
「……がぁっ」
金属音が響き男の握っていたナイフが光の剣に弾かた。ナイフは空中へ放り出され、その衝撃で男は体制を崩し、その隙を逃さず、次の剣が飛んでいき、その時には男は既に体制を崩していた為、今度こそ成すすべなく飛んでくる衝撃で壁まで吹き飛ばされていった。
その後新たに剣を生成させたウルティナさんは、吹き飛ばされた男をまるでダーツのように壁に狙い貼り付けにしていった。それも器用に男の服だけを狙って。
そして貼り付けにされた当の本人は、動きを封じられ、更に圧倒的な力の差を見せられ顔を蒼褪めさせるとカクンと項垂れてしまったのだった。
「……ウルティナさん。す、凄いです!」
一部始終を大人しく見ていた私は感嘆の声を上げた。その声に反応して振り返ったウルティナさんは、ニコっと笑うとこれくらい当り前よ、と胸を張る。
「精霊の中でも私は強いのよ。この程度の相手どうって事ないわ」
「そ、そうなんですね……」
語尾にハートマークが付きそうなくらいの笑顔。
凄すぎて私も笑うしかない。なんたって次元が違うのだから。
精霊の力がここまでとは……。なんとも恐れ多い事だ。
「あ、あの…っ、危ないところを助けて頂きありがとうございました!」
顔を引き攣らせて呆けていたが、不意に我に返るとどんな理由があれ、自分を助けてくれた恩人に慌てて頭を下げた。
助けてくれた人物が誰であれ、自分を助けてくれた事には変わりないのだから。
「お礼なんていいのよ。私が好きでやった事なんだから」
ウルティナさんは気にしていないわ、と言うように優しい声音と上品な笑みでそう返す。
「ところで貴方名前は?」
「エ、エルシア、と申します」
それよりも名前を教えて、と言う彼女に私は緊張した面持ちで自分の名前を告げる。
「そう。エルシアちゃんね。良い名前だわ。エルちゃんと呼ばせてもらうわね。私の事はウルとでも気やすく呼んで頂戴ね!」
そう言ってウルティナさん――ウルが嬉しそうに笑うので、私もつられて笑みを零したのだった。
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