9 / 227
第1章 新しい世界
3 誕生日パーティーと…(6歳)
しおりを挟む
姉様から魔法を教わり始めて早い事もう一年。
一年ってあっという間だなとつくづく思う今日この頃。魔法の腕は一年前と比べたらかなり上達しているはず。
私が教えてもらったのは自分を守るための防衛魔法、それから相手を気絶させる程度の攻撃魔法。
自分の身を自分で守るのも大切な事。貴族の令嬢は護衛と言う名のそれぞれ従者がついているけど、私にはまだいないし。
あ、それと暗い所等で便利な、光を灯す点火の魔法も習得済み。
書庫に引きこもっている時間が長かった私には本当に便利で、いつの間にか暗くなっている、なんて事が良くあったから今の所一番役立っているかも。
若干将来、目悪くならないかなってそんな不安もあったりするけどね。
そんな日々を過ごしていた私も今日で六歳。本日はその誕生日パーティーが大広間で開催されている。
去年まではこんな大がかりな事はしなかったのに、今年から大げさのような豪華なパーティーをする事になったんだよね。
なんでも、貴族と言うものは自分の顔を知ってもらってなんぼ。交流も人脈作りも大事で、それを小さい頃から接客的に行っていくのが普通だとか。はぁ、貴族の子どもも大変だよね。なんて、自分の事棚に上げたくなるよ。
任脈作りに交流…まだ年端もいかない子どもにさせるって、世界が違えば常識も違うんだな。
前の人生では考えられない事だったからな。
まぁそれはとりあえず置いておいて。
今回のパーティーには家族は勿論、悲しくも友達のいない私に友達が出来るように図らった父様が、交流のある貴族の方達を呼んで下さったみたい。
その気持ちは嬉しいけどね、見るからに令嬢しかいないのはどうしてなのかな、父様?
後でこっそり母様に聞いておこうっと。
それはともかくとして……、やっぱり我が父は流石と言うか、偉大と言うか。父様と交流がある人達はもうレベルが違うって私でも分かるよ。
爵位も上位の家柄ばかりで、この日の為に私もそれなりに着飾っているけど、それ以上に目立ってるよ?周りの人達。
そんな人達の輪に自ら突入して行かなければと考えると……。もう行きたくない。帰りたい!
…まぁここ自分の家だけど、そんな気持ちって事だね。
そんなこんなであたふたしていると、何やら広間の方で令嬢達が歓声を上げている。それに良く見ると見惚れているようにも見えた。
誰か来たのかな?お出迎えに行かないと。
そう思い近づいて行ったら、貴族の子息と言うには華やかな衣装で、只者ではない雰囲気を醸し出した少年がそこにいた。年は私と同じくらいみたいだね。
それにしても、金髪に蒼眼、驚く程整ったその顔は芸術ですか?と突っ込みを入れたくなるような容姿。
白いタキシードに身を纏ったその姿はまるで天使のよう。
令嬢達の目を釘付けにするのも納得。私ですらこんなに可愛い生き物存在したの?って思う程だからね。
それ程目立っているのに当の本人は全く気にしてないようだけど。
あっ、挨拶に行かないと。
嫌々と思いながらも今日は何人もの人達に挨拶をして回っていた。そして終わったと思ったんだけど……、凄い人来ちゃった……。
大丈夫っ!仕事、仕事と思えば平気っ!
「そこの娘」
えっ?
「は、はいっ」
話しかけるべき立場の私より先に少年に声を掛けられて驚いた。
「私はアルフレッド・オルデシアだ。貴殿が今宵の主役か?」
少年は花が綻ぶような笑みを浮かべ、それに令嬢達が羨ましいそうにこちらを見ている。
その中には嫉妬を含んだものもある。でも気にしていられない!私は今それ所じゃないのっ!
と言うか、今この少年オルデシアって名乗っていなかった?
えぇっ!そんなまさか…。だってオルデシアって……。えっ、本当にっ!?
「あ、あの、貴方はもしかして……」
「ん?王家のものだが。それがどうかしたか?」
えーっ!やっぱり本当に本当だったっ!この人オルデシア王家の王子様だっ!
「し、失礼いたしました王子。わ、私はシェフィールド侯爵家の次女、エルシアと申します…」
私は慌てて名乗り頭を垂れた。
「こ、今宵のパーティーは父が私の誕生を祝い開催いたしました」
遅かれながら先程の質問に答える。気丈に振舞うように心掛けたけど、まさかの人物に心の動揺は収まらない。
「顔を上げてくれ。そんな畏まらなくて良い」
困惑状態の私。けど王子の言葉とあっては従わない訳にはいかず、ゆっくりと顔を上げた。
その時――
「殿下っ!」
「ディランか」
タイミング良く乱入してくる声。それはパーティーの主催者でもある父様だった。
その父様は殿下を見つけると駆け寄ってくる。
「お越し頂けて何よりです、殿下。心より歓迎致します」
父様は私の隣に立つとそう言い一礼する。
「あぁ、貴殿からの誘いだ。断る理由もない。それに父上の方が貴殿の娘に会いたがっていたぞ」
「それはそれは。では後日娘を連れて拝謁を申し入れたいと思います」
「そうか。私からも伝えておこう。きっと父上も喜ぶだろう」
私をよそに二人の会話は進んで行く。
父様!今、拝謁って言いましたよね?拝謁って偉い人、国王陛下に会うって事だよね…。何勝手に決めてるんですか!
そう言いたいけど口に出せない雰囲気の状況。父様の言葉に王子も乗り気になっちゃってるし…。
「では今宵のパーティー、娘エルシアと楽しんで行って下さいね」
「ふむ。そうさせてもらうぞ」
そして気がつけば終わっていた二人の会話。
父様は去り際に私の頭を人撫ですると、言葉を交わす事なく奥へ行ってしまった。
私はその背中を何とも言えない、複雑な気持ちで見送ったのだった。
父様が去ると今度こそは、と王子は私に話しかける。
「さて、話は戻るが、私も皆と一緒にエルシアの誕生を祝わせもらっても良いだろうか?」
そう言って手をこちらに差し出す王子に、フリーズした脳を一生懸命働かせる私。
えっと、これは握手?握り返して良いの?
そして悩んだ末――
「はいっ、ありがとうございます」
手を取り軽く握り返した。もし失礼とかだったら後で父様に謝ろう……。
お互いどちらともなく手を離し、改めて向かい合った所で一番の疑問を尋ねてみた。
「あの、お聞きしたいのですが、王子が侯爵邸にお越しくださったのは、その……」
「知らないのか?貴殿の父と私の父は友人の間柄なんだ。それで貴殿の父にパーティーの招待状を貰い、こうして私が足を運んだと言う訳だ。そうでなくとも、父の友人の娘には興味があったからな。どんな娘なのかと。まさか私と同じ年の少女だったとは知らなかったが」
……父様と国王陛下がご友人!しかも話しぶりからして結構仲が良さそうだよ。……全然知らなかった。と言う初耳なんですけど。
それに父様、王城に手紙を送ったの?そんな大事な事なんで言ってくれないの!あっ、言わなかったのわざとですね、父様っ!
と心の中で父様に抗議しながら、見た目にはその葛藤は出さずに一生懸命笑顔を意識。
「そうなのですね。初めて聞いたので驚きました」
「そうか。話さなかったのは何か理由でもあったのか……」
そう言って考えこんじゃう王子。深く考えないでください王子。どうせこう言う時、父様の考えている事は碌でもないものだから。
声に出してそう言いたかったけどそれは心の中だけで留める。
「まぁそれは良いか。それよりもだ。エルシア、私の事は王子ではなく名前で呼んでくれないか?年も同じだろう?」
はい!?とんでもないお願い来ちゃった。いくら王子の頼みと言え、そのお願いは流石に聞けませんよ。
同じ年と言っても身分が違うからね。
そんな事したら、下手したら私死罪?になっちゃうよ……。笑えないよっ!
王子が私をどう呼ぼうと何も思わないけど、私が王子を名前で呼ぶなんてとてもじゃないけど…恐れ多い事だよ。
それをさらっと言ってしまう王子も王子だけど……。
と言う事で、
「では……殿下とお呼びしてもよろしいでしょうか?名前でお呼びするのは恐れ多い事ですので。ですが私の事はお好きなように呼んでください」
殿下ってあまり変わってないけど、他に呼び方がないから仕方ないよね。見れば嬉しそうだし、良いよね。
「仕方ないな。ではエル、と呼んでも良いか?」
「はい」
答えたら益々嬉しそう。…ぐぬぬ…そこは可愛いな。
「それともう一つ良いか?」
「はい、何でしょう?」
何か言いた気な殿下に私は首を傾げる。
「…エル、私の、友人になってはくれないか」
殿下から言われたのは予想外の事だった。
友人?それって父様達みたいって事?嬉しいけど良いのかな?一国の王子ですよ?ってあれ…?何でこんなに冷静なんだろう私。
「……殿下が宜しいのでしたら」
はっ、つい返事を…。何言ってるんだ私は!恐れ多くも王子様と友人って…。
やってしまったと思いながら殿下を見たら当の本人は凄く嬉しそうで。それを見てしまったらもう何も言い返せなくなってしまう。
……っ!
そうして漸く気が付く。周りの令嬢達の鋭くて刺のように刺さる視線に…。
はぁ…。楽しいはずのパーティーで男性を目の前にした令嬢は怖いと、そんな事を身を持って知る事になるとは……。
そんな中、鈍感なのか(結構失礼)、殿下は私を引きずり食事や話に夢中で終始その視線には気が付かないのだった。
普通の友人がいて、他愛もない話をする。それが出来て本当に嬉しいんだろうね。
私も友達出来て嬉しいけど、周りからの視線が刺さる刺さる…。こんな調子でこの先、この世界で生きて行けるのかな……?幸せになるどころか、生きる事さえ大変になりそうで、先の未来を案じて泣きたくなったのだった。
そしてその日のパーティーは何事もなく?終わり、帰って行く人達をお見送りした。
その際はしっかり父様も一緒でね。
そしてパーティーを楽しんだ殿下も、私にまた会おうと言い残して侯爵邸を去って行った。
後で父様から良かったね、と言われたのに対し、少し怒りが込み上げてきたけど。
まぁ何はともあれ、この波乱を生んだ六歳のお祝いパーティーはこうして幕を閉じた。
大変は大変だったけど…、でも嬉しい事もあったからこれはこれで良しとしよう。
王家の王子、名前をアルフレッド・オルデシア。彼が私の唯一無二な、大切な友人になってくれたのだから。
一年ってあっという間だなとつくづく思う今日この頃。魔法の腕は一年前と比べたらかなり上達しているはず。
私が教えてもらったのは自分を守るための防衛魔法、それから相手を気絶させる程度の攻撃魔法。
自分の身を自分で守るのも大切な事。貴族の令嬢は護衛と言う名のそれぞれ従者がついているけど、私にはまだいないし。
あ、それと暗い所等で便利な、光を灯す点火の魔法も習得済み。
書庫に引きこもっている時間が長かった私には本当に便利で、いつの間にか暗くなっている、なんて事が良くあったから今の所一番役立っているかも。
若干将来、目悪くならないかなってそんな不安もあったりするけどね。
そんな日々を過ごしていた私も今日で六歳。本日はその誕生日パーティーが大広間で開催されている。
去年まではこんな大がかりな事はしなかったのに、今年から大げさのような豪華なパーティーをする事になったんだよね。
なんでも、貴族と言うものは自分の顔を知ってもらってなんぼ。交流も人脈作りも大事で、それを小さい頃から接客的に行っていくのが普通だとか。はぁ、貴族の子どもも大変だよね。なんて、自分の事棚に上げたくなるよ。
任脈作りに交流…まだ年端もいかない子どもにさせるって、世界が違えば常識も違うんだな。
前の人生では考えられない事だったからな。
まぁそれはとりあえず置いておいて。
今回のパーティーには家族は勿論、悲しくも友達のいない私に友達が出来るように図らった父様が、交流のある貴族の方達を呼んで下さったみたい。
その気持ちは嬉しいけどね、見るからに令嬢しかいないのはどうしてなのかな、父様?
後でこっそり母様に聞いておこうっと。
それはともかくとして……、やっぱり我が父は流石と言うか、偉大と言うか。父様と交流がある人達はもうレベルが違うって私でも分かるよ。
爵位も上位の家柄ばかりで、この日の為に私もそれなりに着飾っているけど、それ以上に目立ってるよ?周りの人達。
そんな人達の輪に自ら突入して行かなければと考えると……。もう行きたくない。帰りたい!
…まぁここ自分の家だけど、そんな気持ちって事だね。
そんなこんなであたふたしていると、何やら広間の方で令嬢達が歓声を上げている。それに良く見ると見惚れているようにも見えた。
誰か来たのかな?お出迎えに行かないと。
そう思い近づいて行ったら、貴族の子息と言うには華やかな衣装で、只者ではない雰囲気を醸し出した少年がそこにいた。年は私と同じくらいみたいだね。
それにしても、金髪に蒼眼、驚く程整ったその顔は芸術ですか?と突っ込みを入れたくなるような容姿。
白いタキシードに身を纏ったその姿はまるで天使のよう。
令嬢達の目を釘付けにするのも納得。私ですらこんなに可愛い生き物存在したの?って思う程だからね。
それ程目立っているのに当の本人は全く気にしてないようだけど。
あっ、挨拶に行かないと。
嫌々と思いながらも今日は何人もの人達に挨拶をして回っていた。そして終わったと思ったんだけど……、凄い人来ちゃった……。
大丈夫っ!仕事、仕事と思えば平気っ!
「そこの娘」
えっ?
「は、はいっ」
話しかけるべき立場の私より先に少年に声を掛けられて驚いた。
「私はアルフレッド・オルデシアだ。貴殿が今宵の主役か?」
少年は花が綻ぶような笑みを浮かべ、それに令嬢達が羨ましいそうにこちらを見ている。
その中には嫉妬を含んだものもある。でも気にしていられない!私は今それ所じゃないのっ!
と言うか、今この少年オルデシアって名乗っていなかった?
えぇっ!そんなまさか…。だってオルデシアって……。えっ、本当にっ!?
「あ、あの、貴方はもしかして……」
「ん?王家のものだが。それがどうかしたか?」
えーっ!やっぱり本当に本当だったっ!この人オルデシア王家の王子様だっ!
「し、失礼いたしました王子。わ、私はシェフィールド侯爵家の次女、エルシアと申します…」
私は慌てて名乗り頭を垂れた。
「こ、今宵のパーティーは父が私の誕生を祝い開催いたしました」
遅かれながら先程の質問に答える。気丈に振舞うように心掛けたけど、まさかの人物に心の動揺は収まらない。
「顔を上げてくれ。そんな畏まらなくて良い」
困惑状態の私。けど王子の言葉とあっては従わない訳にはいかず、ゆっくりと顔を上げた。
その時――
「殿下っ!」
「ディランか」
タイミング良く乱入してくる声。それはパーティーの主催者でもある父様だった。
その父様は殿下を見つけると駆け寄ってくる。
「お越し頂けて何よりです、殿下。心より歓迎致します」
父様は私の隣に立つとそう言い一礼する。
「あぁ、貴殿からの誘いだ。断る理由もない。それに父上の方が貴殿の娘に会いたがっていたぞ」
「それはそれは。では後日娘を連れて拝謁を申し入れたいと思います」
「そうか。私からも伝えておこう。きっと父上も喜ぶだろう」
私をよそに二人の会話は進んで行く。
父様!今、拝謁って言いましたよね?拝謁って偉い人、国王陛下に会うって事だよね…。何勝手に決めてるんですか!
そう言いたいけど口に出せない雰囲気の状況。父様の言葉に王子も乗り気になっちゃってるし…。
「では今宵のパーティー、娘エルシアと楽しんで行って下さいね」
「ふむ。そうさせてもらうぞ」
そして気がつけば終わっていた二人の会話。
父様は去り際に私の頭を人撫ですると、言葉を交わす事なく奥へ行ってしまった。
私はその背中を何とも言えない、複雑な気持ちで見送ったのだった。
父様が去ると今度こそは、と王子は私に話しかける。
「さて、話は戻るが、私も皆と一緒にエルシアの誕生を祝わせもらっても良いだろうか?」
そう言って手をこちらに差し出す王子に、フリーズした脳を一生懸命働かせる私。
えっと、これは握手?握り返して良いの?
そして悩んだ末――
「はいっ、ありがとうございます」
手を取り軽く握り返した。もし失礼とかだったら後で父様に謝ろう……。
お互いどちらともなく手を離し、改めて向かい合った所で一番の疑問を尋ねてみた。
「あの、お聞きしたいのですが、王子が侯爵邸にお越しくださったのは、その……」
「知らないのか?貴殿の父と私の父は友人の間柄なんだ。それで貴殿の父にパーティーの招待状を貰い、こうして私が足を運んだと言う訳だ。そうでなくとも、父の友人の娘には興味があったからな。どんな娘なのかと。まさか私と同じ年の少女だったとは知らなかったが」
……父様と国王陛下がご友人!しかも話しぶりからして結構仲が良さそうだよ。……全然知らなかった。と言う初耳なんですけど。
それに父様、王城に手紙を送ったの?そんな大事な事なんで言ってくれないの!あっ、言わなかったのわざとですね、父様っ!
と心の中で父様に抗議しながら、見た目にはその葛藤は出さずに一生懸命笑顔を意識。
「そうなのですね。初めて聞いたので驚きました」
「そうか。話さなかったのは何か理由でもあったのか……」
そう言って考えこんじゃう王子。深く考えないでください王子。どうせこう言う時、父様の考えている事は碌でもないものだから。
声に出してそう言いたかったけどそれは心の中だけで留める。
「まぁそれは良いか。それよりもだ。エルシア、私の事は王子ではなく名前で呼んでくれないか?年も同じだろう?」
はい!?とんでもないお願い来ちゃった。いくら王子の頼みと言え、そのお願いは流石に聞けませんよ。
同じ年と言っても身分が違うからね。
そんな事したら、下手したら私死罪?になっちゃうよ……。笑えないよっ!
王子が私をどう呼ぼうと何も思わないけど、私が王子を名前で呼ぶなんてとてもじゃないけど…恐れ多い事だよ。
それをさらっと言ってしまう王子も王子だけど……。
と言う事で、
「では……殿下とお呼びしてもよろしいでしょうか?名前でお呼びするのは恐れ多い事ですので。ですが私の事はお好きなように呼んでください」
殿下ってあまり変わってないけど、他に呼び方がないから仕方ないよね。見れば嬉しそうだし、良いよね。
「仕方ないな。ではエル、と呼んでも良いか?」
「はい」
答えたら益々嬉しそう。…ぐぬぬ…そこは可愛いな。
「それともう一つ良いか?」
「はい、何でしょう?」
何か言いた気な殿下に私は首を傾げる。
「…エル、私の、友人になってはくれないか」
殿下から言われたのは予想外の事だった。
友人?それって父様達みたいって事?嬉しいけど良いのかな?一国の王子ですよ?ってあれ…?何でこんなに冷静なんだろう私。
「……殿下が宜しいのでしたら」
はっ、つい返事を…。何言ってるんだ私は!恐れ多くも王子様と友人って…。
やってしまったと思いながら殿下を見たら当の本人は凄く嬉しそうで。それを見てしまったらもう何も言い返せなくなってしまう。
……っ!
そうして漸く気が付く。周りの令嬢達の鋭くて刺のように刺さる視線に…。
はぁ…。楽しいはずのパーティーで男性を目の前にした令嬢は怖いと、そんな事を身を持って知る事になるとは……。
そんな中、鈍感なのか(結構失礼)、殿下は私を引きずり食事や話に夢中で終始その視線には気が付かないのだった。
普通の友人がいて、他愛もない話をする。それが出来て本当に嬉しいんだろうね。
私も友達出来て嬉しいけど、周りからの視線が刺さる刺さる…。こんな調子でこの先、この世界で生きて行けるのかな……?幸せになるどころか、生きる事さえ大変になりそうで、先の未来を案じて泣きたくなったのだった。
そしてその日のパーティーは何事もなく?終わり、帰って行く人達をお見送りした。
その際はしっかり父様も一緒でね。
そしてパーティーを楽しんだ殿下も、私にまた会おうと言い残して侯爵邸を去って行った。
後で父様から良かったね、と言われたのに対し、少し怒りが込み上げてきたけど。
まぁ何はともあれ、この波乱を生んだ六歳のお祝いパーティーはこうして幕を閉じた。
大変は大変だったけど…、でも嬉しい事もあったからこれはこれで良しとしよう。
王家の王子、名前をアルフレッド・オルデシア。彼が私の唯一無二な、大切な友人になってくれたのだから。
10
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
オカン公爵令嬢はオヤジを探す
清水柚木
ファンタジー
フォルトゥーナ王国の唯一の後継者、アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレは落馬して、前世の記憶を取り戻した。
ハイスペックな王太子として転生し、喜んだのも束の間、転生した世界が乙女ゲームの「愛する貴方と見る黄昏」だと気付く。
そして自身が攻略対象である王子だったと言うことも。
ヒロインとの恋愛なんて冗談じゃない!、とゲームシナリオから抜け出そうとしたところ、前世の母であるオカンと再会。
オカンに振り回されながら、シナリオから抜け出そうと頑張るアダルベルト王子。
オカンにこき使われながら、オヤジ探しを頑張るアダルベルト王子。
あげく魔王までもが復活すると言う。
そんな彼に幸せは訪れるのか?
これは最初から最後まで、オカンに振り回される可哀想なイケメン王子の物語。
※ 「第15回ファンタジー小説大賞」用に過去に書いたものを修正しながらあげていきます。その為、今月中には完結します。
※ 追記 今月中に完結しようと思いましたが、修正が追いつかないので、来月初めに完結になると思います。申し訳ありませんが、もう少しお付き合い頂けるとありがたいです。
※追記 続編を11月から始める予定です。まずは手始めに番外編を書いてみました。よろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
少女と二千年の悪魔
大天使ミコエル
恋愛
12歳になる少女マリィ。幼少の頃から好意を抱いていた王子との婚約で幸せを掴んだはずだった。絶望が襲い、倒れ伏した王子に寄り添う少女の前に現れたのは、黒い翼を持った一途な悪魔だった。
—————
眠りについたまま
死んで行く君
終わらぬ夜の中
ひとりの私
命を救うため
花の雫探してる
私の耳元に
悪魔が囁くのよ
「いつまでも そんなこと
してたって 無駄だよ
そんなもの この城に
在りはしない
目が覚める その日まで
朝だって 隠れた
僕のこの 手を取って
二人きり 踊りましょう」
頬を伝わる涙
時計の針は進む
背中から差し出された
その手は優しそうで
世界を這うように
あちらこちらを探した
私の耳元に
悪魔は囁いたの
「ホントはね その身体
冷えきって 心配さ
このスープ 少しでも
飲んでおくれ
ひとりきり つらいのは
僕だって 同じだ
僕のこの 腕の中
二人して 眠りましょう」
止まらない涙
時計は進み続ける
どんな言葉でも
振り返りたくはないの
君の手を握る
まるでそれは懺悔のよう
──私の心は
変わらず君のその側に──
遠くで鐘の音が
鳴った気がした
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる