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第一章 The war ain't over!
16-1 払う犠牲は確かな見返りを求めてる
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一行が修羅場から解放されたのは、すっかり日が暮れた頃の事だった。
レインの父親とリナはそれぞれ居合わせた若い男達により引き離され、夫が連れてゆかれる事に恐怖を覚えたレインの母親は悲鳴を上げて取り乱し、従業員に抱えられながら裏方へと連れていかれた。
一方、机の下で蹲っていた二番目の子供は母親が居なくなった事が分かると、介抱に入った従業員の制止を無視してレイン達が居たテーブルに向かい、残ったピザに手を伸ばした。呆然と一部始終を見ていた亀山は優しくそれを止めようと試みたが、子供はまだ幼稚園児の年齢の子供とは思えない暴言を吐き、ピザを掴んで店から出ようとした。
だが、出入り口では店から出ようとしてヤクザ者まがいの男に激突し、怒鳴られた事でパニックになって失禁しながら意味不明な事を叫ぶ一番上の子供が居り、二番目の子供も訳が分からなくなって泣き叫んだ。
三番目の子供は別の客に介抱されながら従業員へと引き渡され、バックヤードへと移された。
結果的に警察官が到着した事で一行の処遇はそちらに任され、バックヤードに隔離された一行はそれぞれ事情を聴かれる運びとなった。他方、従業員は子供達の粗相の後始末に追われ、店内が落ち着きを取り戻したのは警察官の到着からしばらくたったころの事だった。
結局、子供達は日常的に適切な養育がなされていないと判断されそのまま一時的に保護される事となり、一番上の子供を怒鳴りつけた男は子供相手に大人げない事をしてはいけないと警察官に厳重注意の上で帰された。
リナは警察署への同行を求められたが、子供を取り上げられる事に抵抗して暴れ、遂には公務執行妨害の体で連行され、その後の事をレイン達が知る術はない。
レインの父親は第三者である亀山の証言からリナを制止しようとしただけであると認められ、取り乱した母親と併せて年齢相応に冷静に対処すべきだったと諭されて帰された。
完全に巻き込まれた格好で、なおかつ、傍から見れば手付かずの料理まで奪われてしまったルーシーら三人は同情的な目で見られ、警察官は状況だけ聴取して連絡先を控えて引き揚げていった。
レインは亀山に料理代を払うと言ったが、亀山はそれを断り会社へと戻ってゆき、ランが合流した。ランはレインが暴走した時には止めに入るべく呼ばれており、彼等が集まる前から少し離れた席を確保して様子を窺っていたのだ。
「どうする、このまま帰るか?」
ルーシーの問いにレインは首を振る。だが、飲食店は客入りの多い時間帯で、入りたい店の席が空いているわけではない。
「あ、カラオケにでも行こ? ドリンクバー頼んでちょっと落ち着こうよ」
二人はランの提案に乗り、一番近くのカラオケ店へと入った。
項垂れるレインを残し、ランとルーシーはドリンクバーに向かう。
「歳片手の子供にあんな事出来るのって、マジで人間としてどうかしてますよね」
「あぁ、そうだな。俺も親には絶縁されたが、あんな親じゃなかったよ」
「あれ? 奇遇だね、俺も親には勘当言い渡されてるんだ、あはは」
ランは親に縁を切られた事を気に病んでいないが、その態度にルーシーは違和感を覚える。
「笑い事じゃないでしょう」
「いや、笑うしかないよ。俺、他にきょうだい居ないし、親戚居ないし、押し付けられた東京の外れのあばら家住まい、将来は良くて孤独死腐乱死体、家が家だし白骨も白骨で廃墟マニアに見つかって行旅死亡人の官報送りかもしれない未来しか無い事が人生四半世紀の内に決まったんだもん、開き直って生きていかなきゃ生きていけないよ。さ、戻ろ戻ろ」
レインの分のグラスを持って戻るランを追いかけ、ルーシーは扉を開けた。
レインの父親とリナはそれぞれ居合わせた若い男達により引き離され、夫が連れてゆかれる事に恐怖を覚えたレインの母親は悲鳴を上げて取り乱し、従業員に抱えられながら裏方へと連れていかれた。
一方、机の下で蹲っていた二番目の子供は母親が居なくなった事が分かると、介抱に入った従業員の制止を無視してレイン達が居たテーブルに向かい、残ったピザに手を伸ばした。呆然と一部始終を見ていた亀山は優しくそれを止めようと試みたが、子供はまだ幼稚園児の年齢の子供とは思えない暴言を吐き、ピザを掴んで店から出ようとした。
だが、出入り口では店から出ようとしてヤクザ者まがいの男に激突し、怒鳴られた事でパニックになって失禁しながら意味不明な事を叫ぶ一番上の子供が居り、二番目の子供も訳が分からなくなって泣き叫んだ。
三番目の子供は別の客に介抱されながら従業員へと引き渡され、バックヤードへと移された。
結果的に警察官が到着した事で一行の処遇はそちらに任され、バックヤードに隔離された一行はそれぞれ事情を聴かれる運びとなった。他方、従業員は子供達の粗相の後始末に追われ、店内が落ち着きを取り戻したのは警察官の到着からしばらくたったころの事だった。
結局、子供達は日常的に適切な養育がなされていないと判断されそのまま一時的に保護される事となり、一番上の子供を怒鳴りつけた男は子供相手に大人げない事をしてはいけないと警察官に厳重注意の上で帰された。
リナは警察署への同行を求められたが、子供を取り上げられる事に抵抗して暴れ、遂には公務執行妨害の体で連行され、その後の事をレイン達が知る術はない。
レインの父親は第三者である亀山の証言からリナを制止しようとしただけであると認められ、取り乱した母親と併せて年齢相応に冷静に対処すべきだったと諭されて帰された。
完全に巻き込まれた格好で、なおかつ、傍から見れば手付かずの料理まで奪われてしまったルーシーら三人は同情的な目で見られ、警察官は状況だけ聴取して連絡先を控えて引き揚げていった。
レインは亀山に料理代を払うと言ったが、亀山はそれを断り会社へと戻ってゆき、ランが合流した。ランはレインが暴走した時には止めに入るべく呼ばれており、彼等が集まる前から少し離れた席を確保して様子を窺っていたのだ。
「どうする、このまま帰るか?」
ルーシーの問いにレインは首を振る。だが、飲食店は客入りの多い時間帯で、入りたい店の席が空いているわけではない。
「あ、カラオケにでも行こ? ドリンクバー頼んでちょっと落ち着こうよ」
二人はランの提案に乗り、一番近くのカラオケ店へと入った。
項垂れるレインを残し、ランとルーシーはドリンクバーに向かう。
「歳片手の子供にあんな事出来るのって、マジで人間としてどうかしてますよね」
「あぁ、そうだな。俺も親には絶縁されたが、あんな親じゃなかったよ」
「あれ? 奇遇だね、俺も親には勘当言い渡されてるんだ、あはは」
ランは親に縁を切られた事を気に病んでいないが、その態度にルーシーは違和感を覚える。
「笑い事じゃないでしょう」
「いや、笑うしかないよ。俺、他にきょうだい居ないし、親戚居ないし、押し付けられた東京の外れのあばら家住まい、将来は良くて孤独死腐乱死体、家が家だし白骨も白骨で廃墟マニアに見つかって行旅死亡人の官報送りかもしれない未来しか無い事が人生四半世紀の内に決まったんだもん、開き直って生きていかなきゃ生きていけないよ。さ、戻ろ戻ろ」
レインの分のグラスを持って戻るランを追いかけ、ルーシーは扉を開けた。
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