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第一章 The war ain't over!
15-2 そんな奴は、怒り狂った鬼子母神に喰われればいい
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「ところでおばさん、リナさんとユウキ君は昔から仲が良かったんですか?」
レインに代わり、ルーシーが適当な質問を投げる。
「実はね、最近えっちゃん、リナちゃんのお母さんで、私の友達なんだけど、えっちゃんが病気をしてね、お見舞いに行ったら、今は娘が子供を三人も連れて、公営住宅で一人で頑張ってるって聞いて。うちのがまだ結婚していないって言ったら、お見合いしないかって」
「お前も男が好きだなんて意味の分からない事を言うんじゃない。あの子達は誰がパパになっても嬉しいと言っているんだ、パパになってやりな」
「いやです、絶対嫌です、断ります、拒否します、無理強いするなら死んでやります、今すぐにでも」
漸く話を理解して顔を上げたレインは抑揚の無い言葉で矢継ぎ早に否定の言葉を並べ立てる。
「この場で油被って火を点けたって構いません、気に食わなきゃ首でもなんでも絞めて殺して下さい、さあどうぞ」
怒鳴り声を噛み殺し、父親はレインを睨み付ける。
「……おじさん、無理ですよ。意思は尊重しますけど、結婚はユウキ君の意思も尊重されるべきです」
話し合いの流れを無視して配膳される料理は、亀山からどれが誰の注文だと店員に伝えられ、それとなく用意される。
「……由雨生、あなたの意見はどうなの? ちゃんと自分の口で、自分の言葉で、はっきり言いなさい」
母親の言葉に返されたのは、光の失せた眼差し。
「ちゃんと言いなさい、あなた、口が無かったかしら?」
責められてもなお、レインは口を開かない。拒絶は既に並べ立てている。
「由雨生!」
甲高い声を上げた母親を、父親が諫める。
「……由雨生、お前に拒否権は無い。大体、お前はパソコンに小麦粉を、ギターの代わりに保存水を入れて業者を騙した犯罪者なんだ、その上クスリまでやっただと? 週刊誌に聞いたら、証拠が有るそうじゃないか」
週刊誌の捏造は亀山もルーシーも承知していたが、小麦粉と保存水の意図は分らず、二人は思わずレインを見る。
「どっちが犯罪だよ、人の持ち物勝手に売り払おうとしたとーさんの方が法律すれすれじゃないか」
ルーシーは清掃業者を手配したというレインの母親からの話を思い出す。
「……おじさん、清掃業者に買取させようとしたんですか」
ルーシーの問いに父親の表情が歪む。
「あぁ、それと、結婚ていうのは両性の合意により成立するものだから、いくら家族でも勝手に結婚相手を指定して無理矢理籍を入れさせる事は出来ないよ。もしそれをしたら文書偽造でそれこそ犯罪だ」
テーブルの下でこぶしを握り締める父親に気付き、母親は慌てて口を開いた。
「だからこうしてお見合いの席を作ったのよ?」
「お見合い? これが?」
レインは母親に目を向け、再び子供達を見遣る。
子供達は自分の取り分を死守したらしく、掠め取る対象を失った長子は落ち着きなく辺りを見回している。
「写真も身上書も、自己紹介すら無しでよくお見合いなんて言えるね」
「でも、リナちゃんは同級」
「挨拶すらしたかどうかも知らない近所の子。お見合いなら、もっとフォーマルな席にするよね」
レインの反論に母親は黙り込んだ。
レインに代わり、ルーシーが適当な質問を投げる。
「実はね、最近えっちゃん、リナちゃんのお母さんで、私の友達なんだけど、えっちゃんが病気をしてね、お見舞いに行ったら、今は娘が子供を三人も連れて、公営住宅で一人で頑張ってるって聞いて。うちのがまだ結婚していないって言ったら、お見合いしないかって」
「お前も男が好きだなんて意味の分からない事を言うんじゃない。あの子達は誰がパパになっても嬉しいと言っているんだ、パパになってやりな」
「いやです、絶対嫌です、断ります、拒否します、無理強いするなら死んでやります、今すぐにでも」
漸く話を理解して顔を上げたレインは抑揚の無い言葉で矢継ぎ早に否定の言葉を並べ立てる。
「この場で油被って火を点けたって構いません、気に食わなきゃ首でもなんでも絞めて殺して下さい、さあどうぞ」
怒鳴り声を噛み殺し、父親はレインを睨み付ける。
「……おじさん、無理ですよ。意思は尊重しますけど、結婚はユウキ君の意思も尊重されるべきです」
話し合いの流れを無視して配膳される料理は、亀山からどれが誰の注文だと店員に伝えられ、それとなく用意される。
「……由雨生、あなたの意見はどうなの? ちゃんと自分の口で、自分の言葉で、はっきり言いなさい」
母親の言葉に返されたのは、光の失せた眼差し。
「ちゃんと言いなさい、あなた、口が無かったかしら?」
責められてもなお、レインは口を開かない。拒絶は既に並べ立てている。
「由雨生!」
甲高い声を上げた母親を、父親が諫める。
「……由雨生、お前に拒否権は無い。大体、お前はパソコンに小麦粉を、ギターの代わりに保存水を入れて業者を騙した犯罪者なんだ、その上クスリまでやっただと? 週刊誌に聞いたら、証拠が有るそうじゃないか」
週刊誌の捏造は亀山もルーシーも承知していたが、小麦粉と保存水の意図は分らず、二人は思わずレインを見る。
「どっちが犯罪だよ、人の持ち物勝手に売り払おうとしたとーさんの方が法律すれすれじゃないか」
ルーシーは清掃業者を手配したというレインの母親からの話を思い出す。
「……おじさん、清掃業者に買取させようとしたんですか」
ルーシーの問いに父親の表情が歪む。
「あぁ、それと、結婚ていうのは両性の合意により成立するものだから、いくら家族でも勝手に結婚相手を指定して無理矢理籍を入れさせる事は出来ないよ。もしそれをしたら文書偽造でそれこそ犯罪だ」
テーブルの下でこぶしを握り締める父親に気付き、母親は慌てて口を開いた。
「だからこうしてお見合いの席を作ったのよ?」
「お見合い? これが?」
レインは母親に目を向け、再び子供達を見遣る。
子供達は自分の取り分を死守したらしく、掠め取る対象を失った長子は落ち着きなく辺りを見回している。
「写真も身上書も、自己紹介すら無しでよくお見合いなんて言えるね」
「でも、リナちゃんは同級」
「挨拶すらしたかどうかも知らない近所の子。お見合いなら、もっとフォーマルな席にするよね」
レインの反論に母親は黙り込んだ。
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