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第一章 The war ain't over!
15-1 そんな奴は、怒り狂った鬼子母神に喰われればいい
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午後五時、都心のファミリーレストランの奥にある角の広い席には行儀の悪い三人の子供を連れた女性が座っていた。女性は脱色に傷み切った明るい茶髪をそのまま下ろしており、長い爪は鮮やかな色と光る素材に飾られている。
そんな女性の隣のテーブルには、身なりのいい壮年の夫婦が座っており、妻は騒がしい子供達をぼんやりと眺めていた。
呼び出されたレインは正式な話し合いの意思が無い事を示す様に平素の格好のまま、付き添いのルーシーと助けを求めた亀山と共に店へ入った。
三人が連れ立って指定の席に向かっていると、ルーシーに向かって奇声を上げる子供が全力で走ってきた。
「こら! 店の中で走るな! 皿が割れたり熱い物を被ったりしたらどうするんだ!」
ルーシーは店内一杯に響く様な怒号で子供を叱りつける。子供は既に小学生であろう背格好だったが、怒鳴りつけられた途端、幼児の様に座り込んで声を張り上げながら泣き喚く。
「ちょっとぉ! うちのチビに何してくれるのよぉ!」
奥の席から出てきた女性はルーシーの前に出て、泣き喚く子供を抱きしめながら喚いた。
「自分の子供をチビ呼ばわりですか、そんなだから躾が成ってないんですね」
ルーシーは侮蔑の視線で女性を見下ろす。
「ちょっとアンタ、何様よ!」
「事実を述べたまでだ。席に戻って下さい。邪魔になります」
「なに? やろうってんのかよぉ!」
ルーシーに掴み掛らんばかりの勢いで女性は立ち上がる。
「リナちゃん……」
席から飛び出したレインの母親のか細い声が女性を窘める。
女性は舌打ちし、泣き喚く子供の後頭部に拳骨を喰らわせ、無理矢理立ち上がらせると席へと引き摺った。
その一部始終を目撃した三人は閉口したまま立ち尽くしたが、鋭い声が向けられる。
「どうして隆君が居るんだね」
レインの父親は恐ろしく不機嫌な様子で尋ねる。
「多勢に無勢でユウキ君に婚姻届けを書かせない為です。僕は彼の意思を尊重します」
父親はルーシーに対し、裏切るのかと言わんばかりに鋭い視線を向けるが、彼は怯まない。
「おじさんとおばさんの結婚させたいという意思も尊重しますよ、だから彼を此処に連れて来たんです」
言って、ルーシーは母子の隣になる席に腰掛け、後ろに続く亀山に促されるままレインはルーシーの隣に腰を下ろす。
「えぇと、おたくさまは」
「お初にお目にかかります、株式会社リアルツーディー代表取締役の亀山と申します。お宅の御子息様にはお世話になっておりまして……立会人を依頼されて参上した次第です」
所属配信者のポップなロゴの印刷されたTシャツにジャケットを羽織った妙な風体の男に、父親の表情は険悪な物となるが、母親は助け舟を出した。
「ま、まあ丁度いいじゃないですか、婚姻届けには証人が必要でしょう? リナちゃんはご実家も無い事ですし……立ち会っていただきましょうよ」
「……どうぞおかけになって下さい」
砂でも噛み締めているかの様な渋い表情ながら、父親は亀山の着席を許す。
落ち着きのない子連れの女性、身なりのいい壮年夫婦、結婚の話し合いとは思えない服装の男三人という訳の分からない状況は、顔合わせを兼ねた食事会へと発展する。
「今日は何でも好きな物頼んでいいぞー、お残しは許さねぇけどな!」
つい先程は子供を殴って怒鳴っていたリナだったが、いざ注文を決める段になると子供達の肩を抱えながら楽しげにメニュー表を見る母親の姿になっていた。
子供達は大はしゃぎでお子様プレートやハンバーグを指しながら注文を決め、配膳を心待ちにしている様子である。しかし、呼び出されたレインは俯いたままマスクを外す事もせず、両脇の二人は席代程度の注文をどうするか苦慮していた。
結局、レインの両親はカレーを、ルーシーと亀山は二皿のピザと唐揚げをシェアしたいと伝えて注文する。
一方、先に注文を終えた子供達には先んじて料理が配膳されるが、子供達は皿が出されるなり一心不乱にそれを口に詰め込み始める。
中でもまだ小学生になっていない年頃の子供は凄まじい形相で自分の皿を守る様に抱え込み、口いっぱいに料理を詰めていた。そして、その隣にいる長子と思われる少年は弟の皿を狙う様に視線を向けながら、自分の取り分を勢いよく口に押し込んでいる。
その光景を目にしたレインは母親一人で三人の子育てをするには多大な苦労も有るだろうと思いを馳せるが、まだ年齢が片手で足りるほどの子供が自分の皿を守る様に食事を詰め込むのは異常だと理解する。
呆然として子供達に視線を向けるレインに対し、母親は子供達を紹介して聞かせるが、レインはその異様な光景に話を聞いていなかった。
「由雨生……私はね、あなたに落ち着いて欲しいの。ちゃんと就職して、家庭を持って……あなたがゲイなのは分かるけど、私達の事も考えて欲しいの」
レインは漸く理解出来た母親の言葉でレインは我に返り、ゲイなら結婚相手は同性のはずだと呆れて反論を忘れていた。
そんな女性の隣のテーブルには、身なりのいい壮年の夫婦が座っており、妻は騒がしい子供達をぼんやりと眺めていた。
呼び出されたレインは正式な話し合いの意思が無い事を示す様に平素の格好のまま、付き添いのルーシーと助けを求めた亀山と共に店へ入った。
三人が連れ立って指定の席に向かっていると、ルーシーに向かって奇声を上げる子供が全力で走ってきた。
「こら! 店の中で走るな! 皿が割れたり熱い物を被ったりしたらどうするんだ!」
ルーシーは店内一杯に響く様な怒号で子供を叱りつける。子供は既に小学生であろう背格好だったが、怒鳴りつけられた途端、幼児の様に座り込んで声を張り上げながら泣き喚く。
「ちょっとぉ! うちのチビに何してくれるのよぉ!」
奥の席から出てきた女性はルーシーの前に出て、泣き喚く子供を抱きしめながら喚いた。
「自分の子供をチビ呼ばわりですか、そんなだから躾が成ってないんですね」
ルーシーは侮蔑の視線で女性を見下ろす。
「ちょっとアンタ、何様よ!」
「事実を述べたまでだ。席に戻って下さい。邪魔になります」
「なに? やろうってんのかよぉ!」
ルーシーに掴み掛らんばかりの勢いで女性は立ち上がる。
「リナちゃん……」
席から飛び出したレインの母親のか細い声が女性を窘める。
女性は舌打ちし、泣き喚く子供の後頭部に拳骨を喰らわせ、無理矢理立ち上がらせると席へと引き摺った。
その一部始終を目撃した三人は閉口したまま立ち尽くしたが、鋭い声が向けられる。
「どうして隆君が居るんだね」
レインの父親は恐ろしく不機嫌な様子で尋ねる。
「多勢に無勢でユウキ君に婚姻届けを書かせない為です。僕は彼の意思を尊重します」
父親はルーシーに対し、裏切るのかと言わんばかりに鋭い視線を向けるが、彼は怯まない。
「おじさんとおばさんの結婚させたいという意思も尊重しますよ、だから彼を此処に連れて来たんです」
言って、ルーシーは母子の隣になる席に腰掛け、後ろに続く亀山に促されるままレインはルーシーの隣に腰を下ろす。
「えぇと、おたくさまは」
「お初にお目にかかります、株式会社リアルツーディー代表取締役の亀山と申します。お宅の御子息様にはお世話になっておりまして……立会人を依頼されて参上した次第です」
所属配信者のポップなロゴの印刷されたTシャツにジャケットを羽織った妙な風体の男に、父親の表情は険悪な物となるが、母親は助け舟を出した。
「ま、まあ丁度いいじゃないですか、婚姻届けには証人が必要でしょう? リナちゃんはご実家も無い事ですし……立ち会っていただきましょうよ」
「……どうぞおかけになって下さい」
砂でも噛み締めているかの様な渋い表情ながら、父親は亀山の着席を許す。
落ち着きのない子連れの女性、身なりのいい壮年夫婦、結婚の話し合いとは思えない服装の男三人という訳の分からない状況は、顔合わせを兼ねた食事会へと発展する。
「今日は何でも好きな物頼んでいいぞー、お残しは許さねぇけどな!」
つい先程は子供を殴って怒鳴っていたリナだったが、いざ注文を決める段になると子供達の肩を抱えながら楽しげにメニュー表を見る母親の姿になっていた。
子供達は大はしゃぎでお子様プレートやハンバーグを指しながら注文を決め、配膳を心待ちにしている様子である。しかし、呼び出されたレインは俯いたままマスクを外す事もせず、両脇の二人は席代程度の注文をどうするか苦慮していた。
結局、レインの両親はカレーを、ルーシーと亀山は二皿のピザと唐揚げをシェアしたいと伝えて注文する。
一方、先に注文を終えた子供達には先んじて料理が配膳されるが、子供達は皿が出されるなり一心不乱にそれを口に詰め込み始める。
中でもまだ小学生になっていない年頃の子供は凄まじい形相で自分の皿を守る様に抱え込み、口いっぱいに料理を詰めていた。そして、その隣にいる長子と思われる少年は弟の皿を狙う様に視線を向けながら、自分の取り分を勢いよく口に押し込んでいる。
その光景を目にしたレインは母親一人で三人の子育てをするには多大な苦労も有るだろうと思いを馳せるが、まだ年齢が片手で足りるほどの子供が自分の皿を守る様に食事を詰め込むのは異常だと理解する。
呆然として子供達に視線を向けるレインに対し、母親は子供達を紹介して聞かせるが、レインはその異様な光景に話を聞いていなかった。
「由雨生……私はね、あなたに落ち着いて欲しいの。ちゃんと就職して、家庭を持って……あなたがゲイなのは分かるけど、私達の事も考えて欲しいの」
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