9 / 60
第一章 The war ain't over!
4-2 トラウマ掘削機(2022年春先)
しおりを挟む
「二人で作った最初のアルバムは、相棒が気合を入れ過ぎてリズム感がプログレッシブでテクニカルな雰囲気になり過ぎていましたが、今はデプレッシブ風味のブラックゲイズ志向、デプレッシブ・ブラックらしい憂鬱さはそのまま、古典的ブラックメタルらしいブラストビートも重視しつつ、シューゲイザー的な要素を、時にはビートを切ってトレモロを主軸にしたリズム構成で、寂寥感のある、例えるなら、そう、朽ち果ててゆく歴史的な家屋が在りし日を懐古する様な雰囲気にしたり、元々の志向……バーズム的なプリミティブ・ブラックを踏襲した音作りから、ノイズの向こうで聞こえる様な仕上りで、どうしようもなく憂鬱にしてみたり、ある意味では日本的な、湿った雑木林の中を彷徨う様な、雨の日の夜道に佇む様な雰囲気……平たく言うと、日本らしい悲しみに満ちた怪談、そういう背景から生まれた国産ホラーゲームの様な世界観を目指しています。分かるでしょう、もう俺は戻れないんですよ」
レインはケリーが理解するか否かを無視し、言いたい事を一息に語る。
ケリーは途中から話が理解出来なくなっていたが、目の前のスマートフォンから流れる音はが商業的に成功するタイプのそれではないとだけは理解した。
「あ、あのさあ、この曲って、その、自主製作とか?」
「一応、フィンランドの弱小レーベルから出していますが、費用はたかが知れていて、レコーディングしたのは今の相棒が大工さんに手伝ってもらって作ったお手製の作業場所、大昔には牛舎だった場所に作ったスタジオで、エンジニアなんていませんから、作業は二人だけで終わらせています」
「……フィンランド?」
レインの言葉の情報量の多さに混乱しながら、ケリーは辛うじてひとつの質問を投げかける。
「はい。初めてデモテープを送った当時はスウェーデンに在ったんですけど、治安が悪すぎて店と会社を移転してフィンランドに」
何を聞いてよいか分からなくなり、ケリーは黙ってスマートフォンに視線を落とす。
再生されていた音源は次の曲へと移っており、今は劣悪な録音の向こうから悲鳴が聞こえている。
「えっと、今流れてるのって」
「ん、あぁ……アルバムの最初に入れたイントロみたいな物ですね」
「え、これもレインが作ったの?」
「いえ、これは相棒が作ったトラックですよ」
「へ、へぇ……なんか、その、海賊晩みたいな音だね」
「解像度を低くする為に、ドラムは生音をマイク一本で集めて、次の曲からは通常通りに録音を。まあ、これランダム再生だから次の曲ないんですけど……このアルバムは、それこそデプレッシブかつプリミティブ、ノルウェイジャン・ブラックメタルのスタイルを日本的に落とし込んだ二枚目のアルバムで、過剰にテクニカルなリズムは排しつつ、ブラストビートをアクセントにトレモロリフをベースにしています。シューゲイザー的になるのはこの後、それが今のスタイルになりました」
レインはケリーが理解するか否かを無視し、言いたい事を一息に語る。
ケリーは途中から話が理解出来なくなっていたが、目の前のスマートフォンから流れる音はが商業的に成功するタイプのそれではないとだけは理解した。
「あ、あのさあ、この曲って、その、自主製作とか?」
「一応、フィンランドの弱小レーベルから出していますが、費用はたかが知れていて、レコーディングしたのは今の相棒が大工さんに手伝ってもらって作ったお手製の作業場所、大昔には牛舎だった場所に作ったスタジオで、エンジニアなんていませんから、作業は二人だけで終わらせています」
「……フィンランド?」
レインの言葉の情報量の多さに混乱しながら、ケリーは辛うじてひとつの質問を投げかける。
「はい。初めてデモテープを送った当時はスウェーデンに在ったんですけど、治安が悪すぎて店と会社を移転してフィンランドに」
何を聞いてよいか分からなくなり、ケリーは黙ってスマートフォンに視線を落とす。
再生されていた音源は次の曲へと移っており、今は劣悪な録音の向こうから悲鳴が聞こえている。
「えっと、今流れてるのって」
「ん、あぁ……アルバムの最初に入れたイントロみたいな物ですね」
「え、これもレインが作ったの?」
「いえ、これは相棒が作ったトラックですよ」
「へ、へぇ……なんか、その、海賊晩みたいな音だね」
「解像度を低くする為に、ドラムは生音をマイク一本で集めて、次の曲からは通常通りに録音を。まあ、これランダム再生だから次の曲ないんですけど……このアルバムは、それこそデプレッシブかつプリミティブ、ノルウェイジャン・ブラックメタルのスタイルを日本的に落とし込んだ二枚目のアルバムで、過剰にテクニカルなリズムは排しつつ、ブラストビートをアクセントにトレモロリフをベースにしています。シューゲイザー的になるのはこの後、それが今のスタイルになりました」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる