三度目の衝撃 ―元社畜が破天荒ギルドに転生した理由―

詩方夢那

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第三章 異世界だけど、現実的です

65.対魔獣警備:解任

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 酷い夜明けを迎えた一行が重い体を引き摺る様に店を出ると、至極不機嫌な憲兵が一行を呼び止めた。
 一行は沈黙したままミハミズモスへと戻り、そのまま番所へと押し込まれた。其処で監督の憲兵は一行をありとあらゆる言葉を使って非難し罵倒し侮辱した。そしてその暴言の嵐が病むと同時に宣告されたのが、警備隊の職を解き、ギルドの公認を解除する事だった。
 本来なら絶望的な宣告であったが、そもそも警備隊の任務に消極的だった吸血鬼の男は手綱を解かれた様な感覚になり、メテオーロは何かを諦めた様な虚無感と、そこはかとない安堵を覚えていた。
「さて……エフサに残している物も無けりゃ、鍵も預けちまってる……すぐに帰る必要はねぇが、これからどうする」
 適当な広場に出て、メテオーロは一行を見回してそう言った。
「一銭の日当も出ませんでしたから、金策が必要ですね。後ろ盾となる有力者を探す事も含めてとなると……一度カリキに戻って休んでからでいいでしょう。当座、一人につき銀貨三枚の資金は融通してもらいましたから、いきなり暮らせなくなる事は有りません。数日の休養の内に、頼れそうな有力者を探しておきます。とはいえ……此処からカリキまでは少々遠いですね」
「そうだな……」
 一行が船着き場の村からミハミズモスに戻り、番所で憲兵の罵詈雑言を聞かされている間に時刻は昼になっていた。
「ちと早いが、適当な宿をとって休むか」
「そうですね」
 メテオーロと吸血鬼の男の意見に異論は無く、一行は疲れ果てた表情で宿の有る通りへと出た。
 ミハミズモスは鉄道部品の製造拠点が置かれた小さな工業都市であるが、精密な部品作りは熟練した職人にしか出来ない。それ故日雇い労働者が滞在する様な安宿は殆ど無く、しかも第二都市であるカリキからもやや遠い事から宿自体も少ない。
「あのひでぇ宿以外となると、後は一泊銅銭二枚ほどのまともな宿しかないか……まぁ、ゆっくり休めていいだろう」
 メテオーロは適当な宿を定め、五人分の部屋を取った。
「私はこれから電話局に行って、金具職人の方に事情をお話してきます。長く留まるに際して、卿との連絡の仲介を頼むつもりで居ましたし、もしかしたら卿から彼を通して何か伝言が有るかもしれません」
「そうか……」
「彼も此処では人脈の広い職人ですから、後ろ盾になり得る方です……では」
「あぁ」
 メテオーロは電話局に向かう男を見送り、残る一向に部屋の鍵を渡した。
「金欠に出費は痛いけど、ベッドで寝られるのはありがたいわ……お風呂にも入れるし。ジーナ、まずは湯浴みに行きましょう」
 湯浴みの意味を知らないジーナは首を傾げた。
「体を洗うの。此処なら石鹸もあるから、汚れが良く落ちるわ。さ、行きましょう」
 アナスタシアはジーナを連れ、宿に隣接する公衆浴場へと向かう。
「オルド、俺らも体を流そうぜ」
「あ、はい」
 誘われるまま、オルドもまたメテオーロと共に公衆浴場へと向かう。
「あの、吸血鬼の彼は……」
「こっちに知り合いが居るらしいんでな、身支度どころじゃないらしい」
「そうですか……」
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