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第二章 成り行き任せ、異世界ライフ
31.そのギルド、最低につき:解散
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魔狼退治に失敗した翌朝、夜明けと同時に二台の憲兵の馬車と一頭の馬が第三都市に向けて出発した。
一行は日が昇り切った頃に第三都市カリキに到着し、ガイストの一行は都市の入り口で一頭立ての荷馬車に引き渡される。
「この度はどうも、ご愁傷さまで」
棺は黒いマント姿の葬儀屋に引き渡された。葬儀屋は憲兵から受け取った死者の身上書を手に、ガイストの一行を見遣る。
「えぇと、責任者の方は……」
「その棺の中だ。代わりになる者は……俺だろうな。俺とそっちの女性はおととい採用されて昨日出動したばかりで、互いの名前もろくに覚えていない」
「それは……大変でございましたね」
葬儀屋はメテオーロの言葉に困惑しながら、一頭立ての荷馬車の荷台に横たわる二人とメテオーロを交互に見遣る。
「なぁ葬儀屋さん、その頭領さんの亡骸、この先どうするんだ?」
「ご遺体は原則火葬とし、引き取り手の無い独り身の方などは、帝国共同墓地に埋葬されます。それと、個別の墓標は有りませんが、埋葬者名簿にお名前が残ります。この方は……魔獣退治ギルド・ガイスト頭領レアオ様となりますね」
「そうか。よろしく頼んだ」
「はい、お任せくださいませ」
葬儀屋は霊柩車の車夫に棺を火葬場へ運ぶよう指示し、車夫達は手早く準備を進め出発する。
一方、都市の入り口にある番所に運ばれた二人の怪我人を診察するのは、旅人の診療に従事する若い軍医だった。
「狼に襲われたとの事ですが……その割には酷い火傷をしていますね」
「相手は魔狼だったからな、火を吐いたかもしれない」
ジーナは痛々しく晴れ上がったオーリソウの顔を見下ろしていた。
「で、傷の具合はどうなんだ?」
「手当てが悪いですからねぇ……これは痕になりそうです」
若い医者は居た堪れないといった様子で晴れ上がった患部に申し訳程度の薬を塗り、綿紗布を当てる。
「そうか。そっちの男は?」
「これもまた手当てが酷いものですから……傷が化膿すれば、いくら頑丈な若者でもひとたまりもないでしょう」
「そうか……」
「ひとまずこちらの診療所でお預かりしますが……その後の養生はどうされるおつもりで?」
「あたしに聞かないでくれ、あたしは昨日の今日でこいつらと知り合った上、この様で失業だよ」
肩を竦めて見せるジーナに医者は同情の眼差しを向けた
「それはなんと……まぁ、行倒れの者として、貧救院にでも入ってもらいますので、ご安心を」
「そうかい、後は頼んだよ」
それぞれに後始末を終えたメテオーロとジーナは街の入り口の広場で溜息を吐いた。
「なぁメテオーロ、あんた、これからどうするんだ?」
「どっかのエフサでまた仕事を探すよ。お前さんこそどうするんだ?」
「あたしも同じさ。エフサに居れば飯もあるし、適当なギルドを探すよ。とはいえ……このほーくしょとやらを元居た場所まで持って行かなきゃな」
「そうだな」
メテオーロはジーナが軍医から受け取った報告書を預かる。レアオの死亡とトゥバロンとオーリソウが都市入り口の診療所に入院している事をエフサを管理するギルド管理人に伝えなければ、二人のギルド離脱が認められない。
二人は渋々といった調子で街を歩き、ジーナは労働者の為の炊き出しでほぼ一日ぶりのまともな食事にありついた。そして昼過ぎにはガイストが拠点を置いていたエフサに戻り、ガイスト頭領の死亡と従業員二人の負傷を管理人に伝える。
「採用早々に災難でしたね」
「ひとつ聞きたいんだが、この街のギルドは頭領が死んだ場合、どう扱われるんだ?」
「魔獣退治ギルドは原則として解散です。後継指名がある場合はそれが優先されますが、残った従業員で引き続き業務を行う場合は従業員による採決と役場の許可が必要です。場合によっては解散となりますし、この様に壊滅的な被害を受けている場合には、問答無用で公認取り消し、職権解散の命令が出されます」
「そうか……となると、俺達の扱いは?」
「採用直後にこの状況ですし……採用の認可を取り消してなかった事にしておきましょう。その方があなた方の経歴にも傷が付きません。尤も、給金の支払いも無かった事になりますが……」
「そうか……まぁ、俺らは無駄足だけで済んだし、それでいいとするよ」
「明日にはまた新しい求人が出ますから、それまではこちらに滞在している事をお勧めします」
「そうさせてもらうよ」
管理人は報告書を手に詰め所へと戻った。
「今夜で離ればなれだな……悪いな、昨日の借り、返せなくて」
広間の椅子に座るジーナは苦い表情を浮かべた。
「気にしてねぇよ……何十年、何百年生きてりゃ、小さな事だ」
「そう、か……」
「あぁ」
街を散策する様な気力は無く、二人は少しずつ日の傾くのを眺めながら身を休めた。
一行は日が昇り切った頃に第三都市カリキに到着し、ガイストの一行は都市の入り口で一頭立ての荷馬車に引き渡される。
「この度はどうも、ご愁傷さまで」
棺は黒いマント姿の葬儀屋に引き渡された。葬儀屋は憲兵から受け取った死者の身上書を手に、ガイストの一行を見遣る。
「えぇと、責任者の方は……」
「その棺の中だ。代わりになる者は……俺だろうな。俺とそっちの女性はおととい採用されて昨日出動したばかりで、互いの名前もろくに覚えていない」
「それは……大変でございましたね」
葬儀屋はメテオーロの言葉に困惑しながら、一頭立ての荷馬車の荷台に横たわる二人とメテオーロを交互に見遣る。
「なぁ葬儀屋さん、その頭領さんの亡骸、この先どうするんだ?」
「ご遺体は原則火葬とし、引き取り手の無い独り身の方などは、帝国共同墓地に埋葬されます。それと、個別の墓標は有りませんが、埋葬者名簿にお名前が残ります。この方は……魔獣退治ギルド・ガイスト頭領レアオ様となりますね」
「そうか。よろしく頼んだ」
「はい、お任せくださいませ」
葬儀屋は霊柩車の車夫に棺を火葬場へ運ぶよう指示し、車夫達は手早く準備を進め出発する。
一方、都市の入り口にある番所に運ばれた二人の怪我人を診察するのは、旅人の診療に従事する若い軍医だった。
「狼に襲われたとの事ですが……その割には酷い火傷をしていますね」
「相手は魔狼だったからな、火を吐いたかもしれない」
ジーナは痛々しく晴れ上がったオーリソウの顔を見下ろしていた。
「で、傷の具合はどうなんだ?」
「手当てが悪いですからねぇ……これは痕になりそうです」
若い医者は居た堪れないといった様子で晴れ上がった患部に申し訳程度の薬を塗り、綿紗布を当てる。
「そうか。そっちの男は?」
「これもまた手当てが酷いものですから……傷が化膿すれば、いくら頑丈な若者でもひとたまりもないでしょう」
「そうか……」
「ひとまずこちらの診療所でお預かりしますが……その後の養生はどうされるおつもりで?」
「あたしに聞かないでくれ、あたしは昨日の今日でこいつらと知り合った上、この様で失業だよ」
肩を竦めて見せるジーナに医者は同情の眼差しを向けた
「それはなんと……まぁ、行倒れの者として、貧救院にでも入ってもらいますので、ご安心を」
「そうかい、後は頼んだよ」
それぞれに後始末を終えたメテオーロとジーナは街の入り口の広場で溜息を吐いた。
「なぁメテオーロ、あんた、これからどうするんだ?」
「どっかのエフサでまた仕事を探すよ。お前さんこそどうするんだ?」
「あたしも同じさ。エフサに居れば飯もあるし、適当なギルドを探すよ。とはいえ……このほーくしょとやらを元居た場所まで持って行かなきゃな」
「そうだな」
メテオーロはジーナが軍医から受け取った報告書を預かる。レアオの死亡とトゥバロンとオーリソウが都市入り口の診療所に入院している事をエフサを管理するギルド管理人に伝えなければ、二人のギルド離脱が認められない。
二人は渋々といった調子で街を歩き、ジーナは労働者の為の炊き出しでほぼ一日ぶりのまともな食事にありついた。そして昼過ぎにはガイストが拠点を置いていたエフサに戻り、ガイスト頭領の死亡と従業員二人の負傷を管理人に伝える。
「採用早々に災難でしたね」
「ひとつ聞きたいんだが、この街のギルドは頭領が死んだ場合、どう扱われるんだ?」
「魔獣退治ギルドは原則として解散です。後継指名がある場合はそれが優先されますが、残った従業員で引き続き業務を行う場合は従業員による採決と役場の許可が必要です。場合によっては解散となりますし、この様に壊滅的な被害を受けている場合には、問答無用で公認取り消し、職権解散の命令が出されます」
「そうか……となると、俺達の扱いは?」
「採用直後にこの状況ですし……採用の認可を取り消してなかった事にしておきましょう。その方があなた方の経歴にも傷が付きません。尤も、給金の支払いも無かった事になりますが……」
「そうか……まぁ、俺らは無駄足だけで済んだし、それでいいとするよ」
「明日にはまた新しい求人が出ますから、それまではこちらに滞在している事をお勧めします」
「そうさせてもらうよ」
管理人は報告書を手に詰め所へと戻った。
「今夜で離ればなれだな……悪いな、昨日の借り、返せなくて」
広間の椅子に座るジーナは苦い表情を浮かべた。
「気にしてねぇよ……何十年、何百年生きてりゃ、小さな事だ」
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「あぁ」
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