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第一章 よろこべ、これが異世界だ!
27.ボスウェリアの私兵:雇い主・アルモニー
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オルドが部屋に残されてから暫くの時間が過ぎた頃、彼の留まる部屋に一人の男が現れた。男は豊かな金色の髪を後ろに束ね、仕立ての良い上着を着ている。
「挨拶が遅くなって申し訳ない、私はアルモニー・ボスウェリア、君を此処に連れてきた私兵の雇い主だ」
「ご、ご丁寧に!」
アルドは飛び上がらんばかりの勢いで立ち上がり、そのまま深々と頭を下げた。
「ぼくは……オルドと申します! よろしくお願いします!」
オルドはかつての記憶に有る通り、地面に突き刺さるほど頭を下げ、声を張り上げた挨拶をする。だが、そんなオルドの挨拶はこの世界においてひどく奇異な物で、ボスウェリア卿は呆気に取られていた。
「ま、まあ落ち着いてくれ……その、先ほど私兵の彼から話は聞かせてもらったよ。実のところ、この屋敷に移ってからまだ日が浅く、人手が足りていないのだ」
オルドは真っすぐにボスウェリアを見つめ、自分の処遇が下されるのを待った。
「しかも、私がこの屋敷に移ったのが、一番大きな事業である娼館で娼婦が怪我をさせられる事件が繰り返され、その原因が昨今の魔獣騒動に関連していると考えての事だった……噂を辿り、作曲家としてギルドに籍を置くあの者が吸血鬼と聞き接触し、私の娼館の娼婦に手を出す事を黙認する代わり、本物の魔獣、あるいはそれに類する人間を成敗してくれと頼んだのだが……肝心の使用人は足りていないのだよ。あの馬丁と二人の女中は私が父上の屋敷から連れてきた者なのだ」
「という事は……」
「屋敷の事で手一杯な女中に代わって私の小間使いをして欲しい。勿論、私兵……と言っても、その従者で構わないが、必要が有れば、悪しきものを成敗する仕事も頼む事にはなるが……それでもいいか?」
「も、勿論ですとも! どうぞよろしくお願いします!」
部屋の硝子窓が揺れんばかりに声を張り上げ、オルドは勢い良く頭を下げた。
「こ、こちらこそ……」
ボスウェリアにしてみれば、オルドの態度は命乞いをする捕虜の如き必死さだった。
「それはそうと……小姓とまではいかないが、一応、屋敷で働くには、それ相応の身なりを整えて欲しい」
すなわち、それが衣類の購入である事を悟ったオルドは震え上がった。配達の日雇い仕事でいくらかの現金は手にしているが、いくらこの世界の物価基準を知らないとはいえ、目の前に立つ貴族の男に釣り合うだけの服を買える金額ではない事は想像に難くなかった。
「えっと、それは……」
「当座の事にお仕着せとはいかないが、古着屋で一揃い整えられる程度の支度金はあの者に預けてある。乗り物の用意もさせている、今から行ってくるといい」
「ありがとうございます!」
オルドは絶叫する様に礼を言い、再び全力で頭を下げた。
「……下で馬丁のセリューが待っている」
「行ってまいります!」
オルドは重ねて絶叫する様に宣言し、全力で一礼した上、部屋を出るにあたっても絶叫する様に失礼しますと言い残し、階段へと急いだ。
(まるで軍人だ……もし別の世界から来たとして、彼は軍人だったのか?)
慌ただしく部屋を飛び出すオルドを見送りながら、ボスウェリアは眉根を寄せ、やがて部屋を出た。
「挨拶が遅くなって申し訳ない、私はアルモニー・ボスウェリア、君を此処に連れてきた私兵の雇い主だ」
「ご、ご丁寧に!」
アルドは飛び上がらんばかりの勢いで立ち上がり、そのまま深々と頭を下げた。
「ぼくは……オルドと申します! よろしくお願いします!」
オルドはかつての記憶に有る通り、地面に突き刺さるほど頭を下げ、声を張り上げた挨拶をする。だが、そんなオルドの挨拶はこの世界においてひどく奇異な物で、ボスウェリア卿は呆気に取られていた。
「ま、まあ落ち着いてくれ……その、先ほど私兵の彼から話は聞かせてもらったよ。実のところ、この屋敷に移ってからまだ日が浅く、人手が足りていないのだ」
オルドは真っすぐにボスウェリアを見つめ、自分の処遇が下されるのを待った。
「しかも、私がこの屋敷に移ったのが、一番大きな事業である娼館で娼婦が怪我をさせられる事件が繰り返され、その原因が昨今の魔獣騒動に関連していると考えての事だった……噂を辿り、作曲家としてギルドに籍を置くあの者が吸血鬼と聞き接触し、私の娼館の娼婦に手を出す事を黙認する代わり、本物の魔獣、あるいはそれに類する人間を成敗してくれと頼んだのだが……肝心の使用人は足りていないのだよ。あの馬丁と二人の女中は私が父上の屋敷から連れてきた者なのだ」
「という事は……」
「屋敷の事で手一杯な女中に代わって私の小間使いをして欲しい。勿論、私兵……と言っても、その従者で構わないが、必要が有れば、悪しきものを成敗する仕事も頼む事にはなるが……それでもいいか?」
「も、勿論ですとも! どうぞよろしくお願いします!」
部屋の硝子窓が揺れんばかりに声を張り上げ、オルドは勢い良く頭を下げた。
「こ、こちらこそ……」
ボスウェリアにしてみれば、オルドの態度は命乞いをする捕虜の如き必死さだった。
「それはそうと……小姓とまではいかないが、一応、屋敷で働くには、それ相応の身なりを整えて欲しい」
すなわち、それが衣類の購入である事を悟ったオルドは震え上がった。配達の日雇い仕事でいくらかの現金は手にしているが、いくらこの世界の物価基準を知らないとはいえ、目の前に立つ貴族の男に釣り合うだけの服を買える金額ではない事は想像に難くなかった。
「えっと、それは……」
「当座の事にお仕着せとはいかないが、古着屋で一揃い整えられる程度の支度金はあの者に預けてある。乗り物の用意もさせている、今から行ってくるといい」
「ありがとうございます!」
オルドは絶叫する様に礼を言い、再び全力で頭を下げた。
「……下で馬丁のセリューが待っている」
「行ってまいります!」
オルドは重ねて絶叫する様に宣言し、全力で一礼した上、部屋を出るにあたっても絶叫する様に失礼しますと言い残し、階段へと急いだ。
(まるで軍人だ……もし別の世界から来たとして、彼は軍人だったのか?)
慌ただしく部屋を飛び出すオルドを見送りながら、ボスウェリアは眉根を寄せ、やがて部屋を出た。
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