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第一章 よろこべ、これが異世界だ!
21.放浪エルフ:野生の実力
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早朝、メテオーロは雇い主の遣手婆から日当を受け取り、自分に吸血鬼は仕留められないと言って職を辞した。
(しかし、吸血鬼ってのは、あんなにすばしっこい物だったか……)
労働者と商人でごった返す通りを歩きながら、メテオーロは人間の世にして十世代分に近い記憶を辿る。彼の知る吸血鬼とは、夜の闇を好み人間の生き血を啜る汚らわしい種族であるが、戦いの力はあまり持っていないはずだった。
(それとも、あれは魔獣のひとつ……不死鬼ってわけじゃなさそうだが……いずれにせよ、修行が足りねぇな)
雑踏と化した通りをひたすらに進み、メテオーロが目指したのは一昨日にも訪れたエフサだった。
魔獣退治ギルドに志願する者が多い事、魔獣退治ギルドに対する需要が高まっている事から、魔獣退治ギルドのエフサでは他のエフサと異なり、志願するギルドの責任者を待つ志願者達に対して寝泊まりする事を許しているだけでなく、軽食と武術調練も無償で提供されている。
「今朝の調練は十時から! 元帝国陸軍騎士団の講師が槍の扱いと馬の扱いに関する講習を行う! 希望者は定刻までに屋上に出るように!」
エフサの番に当たっていたのは若い女性の官吏で、屈強な男達に負けじと声を張り上げていた。
「ちょっといいかい」
メテオーロは官吏に声を掛ける。
「求人票を出しているガイストというギルドは、もう戻っているか?」
「えっと……そのギルドなら、今日の午後に戻ると聞いています。志願者ですか?」
「あぁ」
「なら、この建物内で待っていて下さい」
「そうさせてもらうよ」
官吏はメテオーロに答えた後も、数人の志願者に各ギルドの情報を伝達していた。
メテオーロは調練の時刻まで仮眠をとるべく広間の隅に腰を下ろし、志願者が屋上に向かう騒々しさで目を覚ますと、同じく屋上へ向かった。
調練は定刻に始まり、元帝国軍人の騎士らしい傲慢な態度の講師が馬の基本的扱いを一通り説明した後、練習用の槍を手に志願者達にその扱いを解説する。だが、説明を受けたところで素人の志願者が長物を取り廻せるはずも無く、数人が早々に制圧されてしまった。
「そんな事では魔獣の相手など出来んぞ! 奴らは人間以上に俊敏だ! 次!」
槍の扱いに経験がある者まで退けられた中、ずぶの素人達はしり込みする。その中で堂々として進み出たのはメテオーロだった。
「お願いします」
進み出たメテオーロを前にしても、講師は傲慢な眼差しを変えはしなかった。講師はメテオーロがそれなりに覚えのある者だとは思って居ないのだ。だが、帝国騎士団は実際の戦闘に従事するよりも、皇帝皇族の警備や儀礼における人員としての色が濃く、本物の殺意を知る者はごく僅かな為、それは当然の事だった。
講師は声を上げ、気合を入れると同時に組み合うが、圧倒的な腕力に押され、一瞬でその胸元にメテオーロの槍の穂先を突き付けられた。
「す、すげぇ……」
調練に参加した志願者や、それを見学していただけの志願者からも感嘆の声と拍手が巻き起こる。
「おのれ……人外め」
「人外を倒すなら、人外こそ適任でしょう」
傲慢な講師の負け惜しみに、メテオーロは意地の悪い笑みを浮かべた。
(しかし、吸血鬼ってのは、あんなにすばしっこい物だったか……)
労働者と商人でごった返す通りを歩きながら、メテオーロは人間の世にして十世代分に近い記憶を辿る。彼の知る吸血鬼とは、夜の闇を好み人間の生き血を啜る汚らわしい種族であるが、戦いの力はあまり持っていないはずだった。
(それとも、あれは魔獣のひとつ……不死鬼ってわけじゃなさそうだが……いずれにせよ、修行が足りねぇな)
雑踏と化した通りをひたすらに進み、メテオーロが目指したのは一昨日にも訪れたエフサだった。
魔獣退治ギルドに志願する者が多い事、魔獣退治ギルドに対する需要が高まっている事から、魔獣退治ギルドのエフサでは他のエフサと異なり、志願するギルドの責任者を待つ志願者達に対して寝泊まりする事を許しているだけでなく、軽食と武術調練も無償で提供されている。
「今朝の調練は十時から! 元帝国陸軍騎士団の講師が槍の扱いと馬の扱いに関する講習を行う! 希望者は定刻までに屋上に出るように!」
エフサの番に当たっていたのは若い女性の官吏で、屈強な男達に負けじと声を張り上げていた。
「ちょっといいかい」
メテオーロは官吏に声を掛ける。
「求人票を出しているガイストというギルドは、もう戻っているか?」
「えっと……そのギルドなら、今日の午後に戻ると聞いています。志願者ですか?」
「あぁ」
「なら、この建物内で待っていて下さい」
「そうさせてもらうよ」
官吏はメテオーロに答えた後も、数人の志願者に各ギルドの情報を伝達していた。
メテオーロは調練の時刻まで仮眠をとるべく広間の隅に腰を下ろし、志願者が屋上に向かう騒々しさで目を覚ますと、同じく屋上へ向かった。
調練は定刻に始まり、元帝国軍人の騎士らしい傲慢な態度の講師が馬の基本的扱いを一通り説明した後、練習用の槍を手に志願者達にその扱いを解説する。だが、説明を受けたところで素人の志願者が長物を取り廻せるはずも無く、数人が早々に制圧されてしまった。
「そんな事では魔獣の相手など出来んぞ! 奴らは人間以上に俊敏だ! 次!」
槍の扱いに経験がある者まで退けられた中、ずぶの素人達はしり込みする。その中で堂々として進み出たのはメテオーロだった。
「お願いします」
進み出たメテオーロを前にしても、講師は傲慢な眼差しを変えはしなかった。講師はメテオーロがそれなりに覚えのある者だとは思って居ないのだ。だが、帝国騎士団は実際の戦闘に従事するよりも、皇帝皇族の警備や儀礼における人員としての色が濃く、本物の殺意を知る者はごく僅かな為、それは当然の事だった。
講師は声を上げ、気合を入れると同時に組み合うが、圧倒的な腕力に押され、一瞬でその胸元にメテオーロの槍の穂先を突き付けられた。
「す、すげぇ……」
調練に参加した志願者や、それを見学していただけの志願者からも感嘆の声と拍手が巻き起こる。
「おのれ……人外め」
「人外を倒すなら、人外こそ適任でしょう」
傲慢な講師の負け惜しみに、メテオーロは意地の悪い笑みを浮かべた。
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