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序章 転生したのに、なんで不幸なんですか
7.幻の結婚生活
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それはノードオースト王国の豪農ゴールトスト家の三女レルヒェが、シュドウェスト王国の木綿商人の息子オニキスだった頃の事。
それはまだ結婚して一年にもならないある日の事だった、身重の妻とその両親にオニキスの死が知らされたのは。
身重の妻が身を寄せていたその実家に現れた伝令は、オニキスは馬小屋で馬に蹴られて死んだと短く告げた。卒倒した妻に代わり、その両親が詳しい経緯を聞こうとしたが、伝令は苦い表情を浮かべて渋った。
だが、いずれ分ってしまうだろうと伝令の兵士は口を開き、オニキスは貴族将校に恥をかかせる様な死に方をしたと告げた。その表情に妻の両親は、およそ貴族将校の不始末が原因である事を察知したが、一介の商人が貴族に反論する事は出来ない。更に伝令の兵士は、そうした経緯故に弔慰金は出せないし、亡骸を返す事も出来ないと言った。そして、もし亡骸を返してしまうと、怒った貴族将校の身内が墓を荒らすかもしれないとも言った。
それから数時間後、両親は身重で未亡人となった娘にその事実を伝えたが、亡骸すら戻ってこない事を知って更に消沈した未亡人は狂乱した。それだけでなく、オニキスの死を知った彼の実家からは、恥ずかしい最期を遂げた息子の尻拭いをするつもりは無いと冷徹な便りが届けられ、生まれる子供をどう育てるべきか未亡人の両親は頭を抱えた。
だが、その心配は杞憂だった。狂乱状態のまま正気を失った未亡人に出産は困難で、母子共に命を落としてしまった。
生まれる事なく息絶えた赤ん坊と、狂気のままに死んだ娘の亡骸を抱えた両親が向かったのは、行倒れの者や獄死した囚人を埋葬する共同墓地だった。其処には、貴族将校に恥をかかせたとして墓標を立てる事を許されなかったオニキスの亡骸が葬られていた。
王都の商人が卑しい共同墓地に現れた事に墓守は驚き、更に埋葬を希望する亡骸がその娘と孫である事にも驚愕したが、貴族の横暴で命を落とした婿の話や、夫の死に狂乱して命を落とした娘の話を聞かされた墓守は、共同墓地の外れに商人夫婦を案内した。そして、一本の大木の下を示した。
――罪人でもなければ、名前の無い行倒れの者でもない、この国の為に働いた兵隊さんと聞きましたから……忍びなく、この木の根元に葬りました。
両親は不憫な娘と婿、そして孫が漸く穏やかな時間を得られる事に安堵し、娘と孫の棺といくらかの金子を墓守に託し、共同墓地を後にした。
共同墓地の墓守が、不幸な若い夫婦の亡骸を大木に葬った少し後、ノードヴェスト王国からシュドウェスト王国に派遣されていた密偵がこの話を上官に伝えた。その密偵は墓守の一人として、シュドウェスト王国の状況を調査していたのだ。
ノードヴェスト王国はシュドウェスト王国における兵士の不当な扱いや、軍隊における貴族の横暴をシュドウェスト王国に拡散し、内乱の誘発を試みた。そしてそれは、貴族達の横暴に苦しめられてきた商人の反乱を誘発すると共に、貴族にも商人にも虐げられてきた農民の怒りを買い、内乱に伴うシュドウェスト王国の侵攻軍撤退へとつながった。
それはまだ結婚して一年にもならないある日の事だった、身重の妻とその両親にオニキスの死が知らされたのは。
身重の妻が身を寄せていたその実家に現れた伝令は、オニキスは馬小屋で馬に蹴られて死んだと短く告げた。卒倒した妻に代わり、その両親が詳しい経緯を聞こうとしたが、伝令は苦い表情を浮かべて渋った。
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それから数時間後、両親は身重で未亡人となった娘にその事実を伝えたが、亡骸すら戻ってこない事を知って更に消沈した未亡人は狂乱した。それだけでなく、オニキスの死を知った彼の実家からは、恥ずかしい最期を遂げた息子の尻拭いをするつもりは無いと冷徹な便りが届けられ、生まれる子供をどう育てるべきか未亡人の両親は頭を抱えた。
だが、その心配は杞憂だった。狂乱状態のまま正気を失った未亡人に出産は困難で、母子共に命を落としてしまった。
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王都の商人が卑しい共同墓地に現れた事に墓守は驚き、更に埋葬を希望する亡骸がその娘と孫である事にも驚愕したが、貴族の横暴で命を落とした婿の話や、夫の死に狂乱して命を落とした娘の話を聞かされた墓守は、共同墓地の外れに商人夫婦を案内した。そして、一本の大木の下を示した。
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ノードヴェスト王国はシュドウェスト王国における兵士の不当な扱いや、軍隊における貴族の横暴をシュドウェスト王国に拡散し、内乱の誘発を試みた。そしてそれは、貴族達の横暴に苦しめられてきた商人の反乱を誘発すると共に、貴族にも商人にも虐げられてきた農民の怒りを買い、内乱に伴うシュドウェスト王国の侵攻軍撤退へとつながった。
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