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幻の宿
第九幕 平成三十年七月六日(先負)の事
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平成三十年七月六日(先負)・午前七時
昨日(七月五日・友引)に取材へと出たが、大変な事態に遭遇し、これを記す午前七時現在、私は友人のおじ宅にて、現地より共に退避したジャングル・ウォーカーズの四名と客間に留まっている。
自宅には事情を説明しており、午前八時過ぎには父と真谷寺で合流する事になっている。
正確な時刻が把握出来たのは、現場を脱出し、友人おじ宅を訪ねた時。
時刻は深夜三時、丁度、丑三つ時の事だった。
おじさまは酷く驚かれていたが、取材で行った先の宿が心霊スポットであったと告げると、ジャングル・ウォーカーズの方々と共に、客間へと通してくれた。
平成三十年七月六日(先負)午前九時 真谷寺・寺務所にて
午前八時前、友人とも面識のある僧侶・雄真(ゆうしん)和尚に出迎えられ、真谷寺・寺務所に入る。
そこで、桃源楼という旅館を取材するつもりが、大変な事態に巻き込まれた旨を伝えると、和尚は僧正《そうじょう》殿を呼び、僧正殿は友人、そのおじ、ジャングル・ウォーカーズの方々、そして私たち父子を前に昔語りをして下さった。
曰く、桃源楼は実在した。
創業は古いが、正確な情報は残っていない。
昭和初期には秘密裏に売春も行っていたとみられ、おそらく、桃源楼の仲居と見られる無縁仏が寺に残されていた事もあったと言う。間違っても、真谷寺は投げ込み寺では無いのだが、あまりにもかわいそうな故人を前に、手厚く供養したとの事。それこそ、何者かに殴られ、命を落としたとみられる、二十歳にもならない娘さんだったと伝わっているらしい。
そして、桃源楼は、三十三年前、昭和六十年に大雨で生じた山崩れによって全壊した。
当時は既に営業されていなかったが、絵描きの夫婦が土地を相続して暮らしており、山崩れを避けようと山を降りる直前、山崩れに巻き込まれ、落命した。
その絵描きの夫婦は、共に、最後の経営者の養子だったと言う。
現場は甚大な被害を受けた為、二人の亡骸が発見されたのは、数日経ってからの事だったそうだ。
しかも、その奥さまには、子供までいた、と。
そんな中、驚愕の事実が判明する。
今日、その桃源楼があった山で、供養が行われるとの事。
山崩れで亡くなった男性には兄が居り、現在の土地所有者が山の土地を処分するに当たって、三十三回忌の弔い上げは済ませているが、改めて御霊の供養をするとの事。
その方に許可が取れれば、私達もそれに同行させていただきたいと頼み込んだ。
追記
午前十一時半、驚いた事に、供養を依頼したのは、あの有名な作家・京宮雅彦先生だという。
市役所からの依頼、一般投稿による情報提供による取材、その奇妙さもあって、私達が何を見たのかを話す事を条件に、供養への同行が許された。
そこで、正午から土産物売り場の食堂で簡単な昼食を採りながら面会する事となった。
供養は昼過ぎから夕刻に掛けて執り行うとの事。
昨日(七月五日・友引)に取材へと出たが、大変な事態に遭遇し、これを記す午前七時現在、私は友人のおじ宅にて、現地より共に退避したジャングル・ウォーカーズの四名と客間に留まっている。
自宅には事情を説明しており、午前八時過ぎには父と真谷寺で合流する事になっている。
正確な時刻が把握出来たのは、現場を脱出し、友人おじ宅を訪ねた時。
時刻は深夜三時、丁度、丑三つ時の事だった。
おじさまは酷く驚かれていたが、取材で行った先の宿が心霊スポットであったと告げると、ジャングル・ウォーカーズの方々と共に、客間へと通してくれた。
平成三十年七月六日(先負)午前九時 真谷寺・寺務所にて
午前八時前、友人とも面識のある僧侶・雄真(ゆうしん)和尚に出迎えられ、真谷寺・寺務所に入る。
そこで、桃源楼という旅館を取材するつもりが、大変な事態に巻き込まれた旨を伝えると、和尚は僧正《そうじょう》殿を呼び、僧正殿は友人、そのおじ、ジャングル・ウォーカーズの方々、そして私たち父子を前に昔語りをして下さった。
曰く、桃源楼は実在した。
創業は古いが、正確な情報は残っていない。
昭和初期には秘密裏に売春も行っていたとみられ、おそらく、桃源楼の仲居と見られる無縁仏が寺に残されていた事もあったと言う。間違っても、真谷寺は投げ込み寺では無いのだが、あまりにもかわいそうな故人を前に、手厚く供養したとの事。それこそ、何者かに殴られ、命を落としたとみられる、二十歳にもならない娘さんだったと伝わっているらしい。
そして、桃源楼は、三十三年前、昭和六十年に大雨で生じた山崩れによって全壊した。
当時は既に営業されていなかったが、絵描きの夫婦が土地を相続して暮らしており、山崩れを避けようと山を降りる直前、山崩れに巻き込まれ、落命した。
その絵描きの夫婦は、共に、最後の経営者の養子だったと言う。
現場は甚大な被害を受けた為、二人の亡骸が発見されたのは、数日経ってからの事だったそうだ。
しかも、その奥さまには、子供までいた、と。
そんな中、驚愕の事実が判明する。
今日、その桃源楼があった山で、供養が行われるとの事。
山崩れで亡くなった男性には兄が居り、現在の土地所有者が山の土地を処分するに当たって、三十三回忌の弔い上げは済ませているが、改めて御霊の供養をするとの事。
その方に許可が取れれば、私達もそれに同行させていただきたいと頼み込んだ。
追記
午前十一時半、驚いた事に、供養を依頼したのは、あの有名な作家・京宮雅彦先生だという。
市役所からの依頼、一般投稿による情報提供による取材、その奇妙さもあって、私達が何を見たのかを話す事を条件に、供養への同行が許された。
そこで、正午から土産物売り場の食堂で簡単な昼食を採りながら面会する事となった。
供養は昼過ぎから夕刻に掛けて執り行うとの事。
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