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夜もすがら
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「アレが劇物まで持っていたのが気になる。それが撒き散らされていたら目も当てられない」
ニコラスの言う通り、家人が集まる部屋に撒くだけで甚大な被害を齎していた筈だ。
「お前たちも大事な親族だからな。ここにいれば誰が相手だろうと確実に守れる」
更に領地からも人員を呼び寄せると言う彼は、もう何か考えているようだ。ちなみに国境線を守る辺境伯家の私設軍隊は、大陸最強との呼び声も高い。
どことなく楽しそうな上に、軍まで呼び寄せると言うニコラスはどう見ても不穏だ。少なくともミルズ公の目にはそう映る。
だが彼の考えが分からない今はどうしようもない。結局は、自分もしばらく滞在させてほしいと願い出る以外に打つ手はなかった。
ミルズ公は恐れているが、実のところニコラスは何か企んでいる訳ではない。今回はジュリアに精神的なものも含めて一切の被害がなかったので落ち着いているだけだ。
軍隊も守る対象が増えるから念のため呼ぶだけのこと。
なのに警戒する悪友にご苦労なことだと呆れている。だが自分が正直な気持ちを告げたところで信じないだろうから黙って見ているしかない。
そこまで危険視される原因は自分にあると分かっているから尚のこと。
二年前の王宮への襲撃は、王弟がジュリアに目を付け、迫ったことが原因だ。ちなみにジュリアに迫った男には、もっと年上の者もいる。
王弟はニコラスたちの二つ年上だが以前から評判が悪く、立場を利用して強引に迫り、何人もの令嬢を弄んでいたのは公然の秘密である。
報告を受けたニコラスはミルズ公にも断りを入れずに独りで王宮に乗り込み、内戦か王弟の幽閉か好きな方を選べと言い放ち決断を迫った。実際には既に騎士団が無力化されてしまっていたので、内戦を選べる筈もないのだが。
ただでさえ苦手な年代の男性に迫られ、しばらくニコラスから離れられなくなったジュリアを見て彼の堪忍袋の緒が切れたらしい。
かなり昔から、ニコラスは王弟を何とかしろと意見していた。なのに黙殺され続けた挙げ句がこれだ。
そのせいで高位貴族家の当主たちもこぞってニコラスを支持した結果、王弟は去勢された上に幽閉されるという結果に落ち着いた。
その時から王家の権威は完全に地に落ちている。
余談だがニコラスは乗り込む前にキャロルたちを自邸に招待し、すぐに戻ると約束してジュリアを落ち着かせていた。その周囲を領地から呼び寄せた辺境伯家の私設軍隊が固めていたので、ニコラスは安心して暴れられた訳である。
「今は静かに待って、背後が分かれば攻勢に転じたら良いからな」
そう言いながらも大体の目星をつけているニコラスは、あとはのんびり答え合わせを待つだけだと思っている。万が一違っていた場合に備えて警戒は怠らないが。
何にせよ、余計な先入観を与えないよう、それについて誰にも話す気はない。
「今日はもう遅い。寝た方が良いぞ」
客人たちに向けてニコラスはそう言うが、すぐに眠れそうにない。一人は気が立っているせいで、そしてもう一人は気にかかることがあるせいで。
すぐに動き出しそうにない二人を見てニコラスは苦笑しながら問いかける。
「それとも酒でも飲むか?」
「飲みたい」
真っ先に答えたのはジュリアだ。この中ではニコラスの次に強い彼女は、成人してから彼と飲むのが大好きになった。
想う相手と夜に二人でゆっくり過ごせる。それだけでも嬉しいのに、好みに合うものをニコラスが手ずから用意してくれるのだ。その時間を楽しみにするのも無理はない。
最初はごく弱いものを少量だけで、それから徐々に量を増やして慎重に飲ませていたニコラスも、彼女の強さには驚いていた。蜜月中にもよく飲んでいたので、今では夫婦の寝室にも酒を置いてある。
「あー、いや、僕は遠慮しようかな」
「俺も、ちょっと」
目を逸らしながら断る二人に、不思議そうな顔をするジュリア。
彼女は正真正銘の辺境伯夫人となって初めて、夫の友人や親族をもてなす機会を得たと喜んでいる。おまけに今の彼らはいかにも飲みたそうな顔をしていたのだから、遠慮しないでほしいのに。
「どうしてですか? せっかくうちに泊まって下さるのだから飲みましょうよ」
「あとは頼んだ。ジリー、行くぞ」
二人が辞退した理由に心当たりがあり過ぎるニコラスは苦笑しながら執事に指示を出す。そしてジュリアを連れて夫婦の寝室に向かった。
「ニック、どうして私たちはこっちの部屋なの?」
「それは、可愛い奥さんが艶っぽい顔をしているからだな」
全く分かっていないジュリアだが、『ニコラスの本当の妻』である自分自身を意識している時のジュリアは途方もない色香を漂わせているどころか、もはや垂れ流している。
ジュリアが子供の頃から顔を合わせている二人にとって、彼女は親戚の子供のような存在なのだ。実際にカーティス侯にとっては義妹なのだが、八つ年齢が離れている彼にとっては、むしろ年の近い姪のような存在である。
ミルズ公にとっては言うまでもない。
そんな彼女の婀娜やかな姿を見ると、二人がいたたまれない気分になるのも無理はないだろう。
二人がこの間のキャロルと似たような顔をしているのを見たニコラスが、気の毒に思い即座に離脱を決めたのも当然だ。
ニコラスは気付いていないが、実は二人を落ち着かなくさせた一因は彼自身にもある。
ジュリアを見る目があまりにも妖しいのだ。
彼が欲に塗れた顔をしているのは、何も彼女を組み敷いた時だけではない。特に彼女が艷やかな表情しているのを少しでも目にしてしまえば、その場の空気を塗り替えてしまう。
ただの会話ですら夫婦の睦言を聞かされているようで、周囲の者は身の置きどころがなくなる。
二人の過去を知っているので尚更だ。
「しばらくここで世話になるが大丈夫か?」
「少しつらいけど耐えてみせますよ。子の前では流石に自重して下さるでしょうし」
溜め息をつきながらグラスを傾ける二人は、早く寝てしまおうとすぐに引き上げた。
納得いかない顔をしているジュリアに苦笑しながら用意した酒を渡してやる。するとすぐに頬を緩める姿に内心では悶絶しながらも、それを隠してゆっくり隣に腰かけ酒を口に含む。
今日は軽く潰した苺にシロップと洋梨のブランデーを合わせて炭酸を注いだものを用意してやったが、ジュリアは気に入ったようだ。
「美味しい! 苺は一年中手に入るけど、この時期のものが一番好きなの」
「まだ露地栽培ものが手に入るから、確かに美味いな」
ニコラスは甘い酒を好まなかったのだが、ジュリアと飲むようになってからは平気になるどころか、むしろ気に入っている。最初はあまりに美味そうに飲むジュリアにつられて飲んでいただけなのだが。
「でも、苺よりも美味そうなのが、ここにあるぞ」
「何? それ。ん……ニック、ちょっと。まだ飲んでるの」
「ごちそうさま」
徐ろに唇を舐め少し舌を侵入させ、すぐに解放する。ジュリアの抗議を聞き入れた訳ではないが、これでゆっくり飲めると油断しているジュリアは夫の悪戯を思いついた顔に気付かなかった。
「もうお酒は良いの?」
「飲んでるよ」
そう言いながらも合間にジュリアの耳や首筋に唇を落とす。口を塞がれている訳ではないので飲もうと思えば飲める。
だけどそれどころではない気分になってしまう。落ち着かない。
「飲みにくいからそこはだめ」
「そっか、じゃあ手なら良いか?」
「別に構わないけど?」
ジュリアはニコラスへの認識がまだ甘い。そして自身の敏感さや、愛する夫に触れられた際の反応についても同様。
夫に優しく左手をとられたジュリアは、それでも特に気にしなかった。右手さえ空いていれば問題ない。
そんな油断しきった彼女の指先に口付けを落とし、そっと唇を滑らせる。手の甲を伝い手首を啄みつつ、時おり舌先で擽る。
段々と落ち着かない顔になってきたジュリアを見据えながら指の間に舌を這わせ、ゆっくり指先に移っていった。
「んっ、ちょっと、なんで、やめ」
「約束通り、手、だけなんだが?」
そう言いながら指先を口に含み、舌を絡める。他の場所を可愛がる時と同じ動きで。
「やっ、ああ、んんっ」
「どうした? 全然飲んでないじゃないか」
「むりぃ。ねえ、もう、あっちに行きたい」
そう言いながらベッドを指差す姿に口端がつり上がるのを抑えられず、即座に抱き上げて移動する。
友人や親族が滞在している時まで抱くのはどうかと思っていた。なのに、いざ二人きりになると抑えが利かない。そんな自分に呆れつつ、今日も可愛い妻を愛でる。
「ニック、もっと、いっぱいして」
「ああ。俺も全然足りない」
こんなにも離れようがない程に重なり合っているのに、どうしてもっと近付きたいと思ってしまうのか。どんなに肌を合わせようとすぐに飢え、求めてしまう。
不意に両頬を手の平で包み込むように挟んだジュリアに目を覗き込まれる。
「もう、こっちの目も、慣れたわ」
「また、変わっているのか?」
「うん。どっちも、綺麗。何だか、得した気分」
特に今は片方だけが金に変わっているから神秘的にすら見える。美しい人だとは思っていたけれど、更に魅力が増した夫にまたもや不安を覚えてしまう。
ニコラスはいきなり目の色が変わってしまう自分を見ても不気味がらないどころか、そんな自分も当然のように受け入れるジュリアに愛おしさが募り、更に欲が膨れ上がる。
だがジュリアにとって、目の色どころか美醜ですらどうでも良いことだ。彼がニコラスとして自分の傍にいてくれるなら、それ以外は問題ではない。
そしてまた金の光に包まれて朝を迎える。
ニコラスの言う通り、家人が集まる部屋に撒くだけで甚大な被害を齎していた筈だ。
「お前たちも大事な親族だからな。ここにいれば誰が相手だろうと確実に守れる」
更に領地からも人員を呼び寄せると言う彼は、もう何か考えているようだ。ちなみに国境線を守る辺境伯家の私設軍隊は、大陸最強との呼び声も高い。
どことなく楽しそうな上に、軍まで呼び寄せると言うニコラスはどう見ても不穏だ。少なくともミルズ公の目にはそう映る。
だが彼の考えが分からない今はどうしようもない。結局は、自分もしばらく滞在させてほしいと願い出る以外に打つ手はなかった。
ミルズ公は恐れているが、実のところニコラスは何か企んでいる訳ではない。今回はジュリアに精神的なものも含めて一切の被害がなかったので落ち着いているだけだ。
軍隊も守る対象が増えるから念のため呼ぶだけのこと。
なのに警戒する悪友にご苦労なことだと呆れている。だが自分が正直な気持ちを告げたところで信じないだろうから黙って見ているしかない。
そこまで危険視される原因は自分にあると分かっているから尚のこと。
二年前の王宮への襲撃は、王弟がジュリアに目を付け、迫ったことが原因だ。ちなみにジュリアに迫った男には、もっと年上の者もいる。
王弟はニコラスたちの二つ年上だが以前から評判が悪く、立場を利用して強引に迫り、何人もの令嬢を弄んでいたのは公然の秘密である。
報告を受けたニコラスはミルズ公にも断りを入れずに独りで王宮に乗り込み、内戦か王弟の幽閉か好きな方を選べと言い放ち決断を迫った。実際には既に騎士団が無力化されてしまっていたので、内戦を選べる筈もないのだが。
ただでさえ苦手な年代の男性に迫られ、しばらくニコラスから離れられなくなったジュリアを見て彼の堪忍袋の緒が切れたらしい。
かなり昔から、ニコラスは王弟を何とかしろと意見していた。なのに黙殺され続けた挙げ句がこれだ。
そのせいで高位貴族家の当主たちもこぞってニコラスを支持した結果、王弟は去勢された上に幽閉されるという結果に落ち着いた。
その時から王家の権威は完全に地に落ちている。
余談だがニコラスは乗り込む前にキャロルたちを自邸に招待し、すぐに戻ると約束してジュリアを落ち着かせていた。その周囲を領地から呼び寄せた辺境伯家の私設軍隊が固めていたので、ニコラスは安心して暴れられた訳である。
「今は静かに待って、背後が分かれば攻勢に転じたら良いからな」
そう言いながらも大体の目星をつけているニコラスは、あとはのんびり答え合わせを待つだけだと思っている。万が一違っていた場合に備えて警戒は怠らないが。
何にせよ、余計な先入観を与えないよう、それについて誰にも話す気はない。
「今日はもう遅い。寝た方が良いぞ」
客人たちに向けてニコラスはそう言うが、すぐに眠れそうにない。一人は気が立っているせいで、そしてもう一人は気にかかることがあるせいで。
すぐに動き出しそうにない二人を見てニコラスは苦笑しながら問いかける。
「それとも酒でも飲むか?」
「飲みたい」
真っ先に答えたのはジュリアだ。この中ではニコラスの次に強い彼女は、成人してから彼と飲むのが大好きになった。
想う相手と夜に二人でゆっくり過ごせる。それだけでも嬉しいのに、好みに合うものをニコラスが手ずから用意してくれるのだ。その時間を楽しみにするのも無理はない。
最初はごく弱いものを少量だけで、それから徐々に量を増やして慎重に飲ませていたニコラスも、彼女の強さには驚いていた。蜜月中にもよく飲んでいたので、今では夫婦の寝室にも酒を置いてある。
「あー、いや、僕は遠慮しようかな」
「俺も、ちょっと」
目を逸らしながら断る二人に、不思議そうな顔をするジュリア。
彼女は正真正銘の辺境伯夫人となって初めて、夫の友人や親族をもてなす機会を得たと喜んでいる。おまけに今の彼らはいかにも飲みたそうな顔をしていたのだから、遠慮しないでほしいのに。
「どうしてですか? せっかくうちに泊まって下さるのだから飲みましょうよ」
「あとは頼んだ。ジリー、行くぞ」
二人が辞退した理由に心当たりがあり過ぎるニコラスは苦笑しながら執事に指示を出す。そしてジュリアを連れて夫婦の寝室に向かった。
「ニック、どうして私たちはこっちの部屋なの?」
「それは、可愛い奥さんが艶っぽい顔をしているからだな」
全く分かっていないジュリアだが、『ニコラスの本当の妻』である自分自身を意識している時のジュリアは途方もない色香を漂わせているどころか、もはや垂れ流している。
ジュリアが子供の頃から顔を合わせている二人にとって、彼女は親戚の子供のような存在なのだ。実際にカーティス侯にとっては義妹なのだが、八つ年齢が離れている彼にとっては、むしろ年の近い姪のような存在である。
ミルズ公にとっては言うまでもない。
そんな彼女の婀娜やかな姿を見ると、二人がいたたまれない気分になるのも無理はないだろう。
二人がこの間のキャロルと似たような顔をしているのを見たニコラスが、気の毒に思い即座に離脱を決めたのも当然だ。
ニコラスは気付いていないが、実は二人を落ち着かなくさせた一因は彼自身にもある。
ジュリアを見る目があまりにも妖しいのだ。
彼が欲に塗れた顔をしているのは、何も彼女を組み敷いた時だけではない。特に彼女が艷やかな表情しているのを少しでも目にしてしまえば、その場の空気を塗り替えてしまう。
ただの会話ですら夫婦の睦言を聞かされているようで、周囲の者は身の置きどころがなくなる。
二人の過去を知っているので尚更だ。
「しばらくここで世話になるが大丈夫か?」
「少しつらいけど耐えてみせますよ。子の前では流石に自重して下さるでしょうし」
溜め息をつきながらグラスを傾ける二人は、早く寝てしまおうとすぐに引き上げた。
納得いかない顔をしているジュリアに苦笑しながら用意した酒を渡してやる。するとすぐに頬を緩める姿に内心では悶絶しながらも、それを隠してゆっくり隣に腰かけ酒を口に含む。
今日は軽く潰した苺にシロップと洋梨のブランデーを合わせて炭酸を注いだものを用意してやったが、ジュリアは気に入ったようだ。
「美味しい! 苺は一年中手に入るけど、この時期のものが一番好きなの」
「まだ露地栽培ものが手に入るから、確かに美味いな」
ニコラスは甘い酒を好まなかったのだが、ジュリアと飲むようになってからは平気になるどころか、むしろ気に入っている。最初はあまりに美味そうに飲むジュリアにつられて飲んでいただけなのだが。
「でも、苺よりも美味そうなのが、ここにあるぞ」
「何? それ。ん……ニック、ちょっと。まだ飲んでるの」
「ごちそうさま」
徐ろに唇を舐め少し舌を侵入させ、すぐに解放する。ジュリアの抗議を聞き入れた訳ではないが、これでゆっくり飲めると油断しているジュリアは夫の悪戯を思いついた顔に気付かなかった。
「もうお酒は良いの?」
「飲んでるよ」
そう言いながらも合間にジュリアの耳や首筋に唇を落とす。口を塞がれている訳ではないので飲もうと思えば飲める。
だけどそれどころではない気分になってしまう。落ち着かない。
「飲みにくいからそこはだめ」
「そっか、じゃあ手なら良いか?」
「別に構わないけど?」
ジュリアはニコラスへの認識がまだ甘い。そして自身の敏感さや、愛する夫に触れられた際の反応についても同様。
夫に優しく左手をとられたジュリアは、それでも特に気にしなかった。右手さえ空いていれば問題ない。
そんな油断しきった彼女の指先に口付けを落とし、そっと唇を滑らせる。手の甲を伝い手首を啄みつつ、時おり舌先で擽る。
段々と落ち着かない顔になってきたジュリアを見据えながら指の間に舌を這わせ、ゆっくり指先に移っていった。
「んっ、ちょっと、なんで、やめ」
「約束通り、手、だけなんだが?」
そう言いながら指先を口に含み、舌を絡める。他の場所を可愛がる時と同じ動きで。
「やっ、ああ、んんっ」
「どうした? 全然飲んでないじゃないか」
「むりぃ。ねえ、もう、あっちに行きたい」
そう言いながらベッドを指差す姿に口端がつり上がるのを抑えられず、即座に抱き上げて移動する。
友人や親族が滞在している時まで抱くのはどうかと思っていた。なのに、いざ二人きりになると抑えが利かない。そんな自分に呆れつつ、今日も可愛い妻を愛でる。
「ニック、もっと、いっぱいして」
「ああ。俺も全然足りない」
こんなにも離れようがない程に重なり合っているのに、どうしてもっと近付きたいと思ってしまうのか。どんなに肌を合わせようとすぐに飢え、求めてしまう。
不意に両頬を手の平で包み込むように挟んだジュリアに目を覗き込まれる。
「もう、こっちの目も、慣れたわ」
「また、変わっているのか?」
「うん。どっちも、綺麗。何だか、得した気分」
特に今は片方だけが金に変わっているから神秘的にすら見える。美しい人だとは思っていたけれど、更に魅力が増した夫にまたもや不安を覚えてしまう。
ニコラスはいきなり目の色が変わってしまう自分を見ても不気味がらないどころか、そんな自分も当然のように受け入れるジュリアに愛おしさが募り、更に欲が膨れ上がる。
だがジュリアにとって、目の色どころか美醜ですらどうでも良いことだ。彼がニコラスとして自分の傍にいてくれるなら、それ以外は問題ではない。
そしてまた金の光に包まれて朝を迎える。
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