辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足

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遅れてきた蜜月 ★

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 下から一気に貫かれ間髪入れずに穿たれ続ける衝撃は、ジュリアをすぐさま高みに連れ去った。
 信じられないくらいに気持ちいい。さっき抱かれた時もこんな快楽があったのかと驚いたけれど、まだ上があったとは。


「ああ、んんっ!! すごい、気持ちいいの!」
「凄い締め付けだ。俺も気持ちいい」

 今度はジュリアが落ち着くまで待っていたニコラスがゆっくりと突き上げ始め、彼女はその悦びを素直に伝える。
 だけど今の優しい動きは、きっと彼にとっては物足りない筈だ。さっき抱かれた時は余裕がなくて、もっと激しかった。自分だけが満足するなんて嫌だ。好きにしてもらいたい。
 彼女は素直な気持ちを夫に伝えた。

「ニコラス、好きに動いて、大丈夫、だから、がまんしないで」
「……じゃあお言葉に甘えて」

 それに煽られたニコラスは細い腰をしっかりと掴み、思う存分に穿ち始める。
 彼女の迂闊さはもう分かっていることで、その言葉を額面通りに受け取って、好き勝手に食い荒らすのは良き夫のやることではない。
 それは分かっていても、彼女の全てが彼を煽るのだから抗えないのだ。
 しかも彼女が辛いなら、すぐにやめようと思っていたニコラスの心配を、あっさり吹き飛ばしてしまう。

「あっ、すごい。それ、気持ちいい。もっとそこ、さすって、ああっ、もうイくっ!!」

 そう言いながらニコラスに抱きつき身を震わせる様は、さっき純潔を散らしたばかりだとは思えない。
 こんなに快楽に従順で大丈夫かとニコラスが不安を覚える程だった。




「うん……? あれ、私……」
「おはよう、ジリー。良かった、喉は大丈夫そうだな」

 瞼を上げたジュリアは目の前にある秀麗な顔に少し混乱した。

「まさか全部忘れた訳じゃないよな? ジュリア」

 言うが早いか口付けられ、一気に覚醒する。

「覚えていますっ!」
「待った、急に起きようとするのは危ないぞ。特に今は腰が大変なことになってるだろうからな」

 飛び起きようとしたらしっかり抱きしめて阻止された。そして告げられた言葉で眠る前の痴態を思い出すジュリア。
 それは幸せな記憶であると同時に、今すぐ忘れ去りたい記憶でもある。

「あ、あ……私…………」
「顔が真っ赤だぞ、思い出して今更恥ずかしくなったのか?」
「言わないで!!!」

 どうしてあんなことが出来たのだろう。
 大好きな人に、とんでもない姿を晒してしまった。救いようのない淫婦だと思われたのではないか。

「ジュリア、恥ずかしがる必要なんてないぞ。最高にエ、美しかったからな」
「今、何か余計な母音が紛れていたような」
「気のせい、気のせい」

 ジュリアが恥ずかしがるのは当然だが、それに該当しそうな事柄が多すぎて、下手に慰められないニコラスだった。


「手当てをしたけど腰は痛くないか?」
「道理で何ともないのね。ニックの手当ては本当に不思議です、不思議ね」

 読んで字のごとく、ただ手を当てるだけ。それだけで痛みが消える。ただし、効果があるのはジュリアだけという意味不明なもの。
 ニコラスが彼女を娶って半年ほど経った頃のこと。
 風邪を引いたジュリアが酷い頭痛に悩まされた時に、可哀想に思い頭を撫でたら嘘のように痛みが消えた。その頃には、既に普通に会話が出来るようになっていたからこそ気付けたこと。
 成長してニコラスへの恋心を自覚したジュリアは、それを想い人に触れられたせいかとも思った。でも最初の時は絶対に違うと言いきれる。
 原因は分からないので、もうニコラスだから何でもありだと流しておいた。




「しばらくは急ぎの仕事はないの?」

 遅い朝食を寝室でとった後に確認する。ニコラスはガウン姿のまま寛いでいるので、少し心配になったのだ。

「ない。と言うか、」
「えっ?」

 いきなり膝の上に抱き上げられて戸惑う。

「それを知っていたから、昨日仕掛けてきたんじゃないのか?」
「う……」
「図星か」

 バツが悪そうに縮こまっているジュリアだが、ニコラスは別に怒っている訳ではない。

「ジュリア、俺は喜んでいるんだぞ。おかげでマトモな蜜月を過ごせるから」
「え?」
「もう婚姻五年目だけど、俺たちは本当の夫婦になったばかりだからな」

 当然ながら法的に夫婦になった時は、そのようなものはなかった。むしろ男性恐怖症のジュリアを気遣って顔を合わせないようにしていたので、ニコラスは仕事に勤しんでいた程だ。

「そうなんだ。蜜月って、やっぱりデートとかするの? 旅行は今からでは無理でしょう?」
「デートも良いけど、本来は俺たちが大好きなコトをするのが目的だな」
「大好き……お酒が飲みたいな」

 ジュリアの母方の実家が運営する領地はエールの産地として有名だ。それが関係するのか、ジュリアたちも酒に強い。特にジュリアは姉の上を行くうわばみである。
 ニコラスも酒に酔わない体質なので二人で飲むことも多く、ジュリアはその時間が大好きだった。

「確かに蜂蜜酒は飲むらしいが」
「蜂蜜酒……?」

 ジュリアの脳裏に昔に習った記憶がおぼろげながら甦る。この話を続けてはいけないと気付いたが、もう遅い。

「君の閨教育がいかに偏ったものだったのか、よく分かった」

 すっかり思い出して顔を赤らめるジュリアを膝に乗せたまま抱きしめる。

「気持ちいいコト、ジュリアは大好きだろう?」

 決して嫌いではない。飾らずに本音を言うなら好きだ。いや、夫が言う通り大好きだ。
 夢中になりすぎたのか曖昧な箇所もあるけれど、乱れてとんでもないことをした記憶も残っているのだから。
 でも好きだとは言いたくない。恥ずかしい。
 そう思って口を引き結ぶジュリアは、そんな胸の内も見透かす夫に抱きしめられたままだ。

「ふうん、好きじゃないのか。俺は大好きなんだけどな、ジュリアとする気持ちいいことが」

 そう言いながら、そっと唇を重ねる。

「こうしているだけでも気持ちいい。最高に幸せだって思える。身体を重ねなくても、こんなに満たされる相手なんて他にいないぞ」

 そう言いながら頭を撫でて伝える。ニコラスが愛する女性はジュリアだけなのだと分かるように。

「ニックは、私と出来なくても構わないの?」
「それは困るけど、四六時中しなくても良いと思う。一緒にいるだけで満たされるからな」
「そっか」

 少しくすぐったそうな笑顔を浮かべて抱きつく愛らしさに目が眩む。今までも可愛いとは思っていたが、もうあんな保護者の目では見られない。

「……ニック、ごめんなさい」
「ジリー? どうしたんだ?」
「凄く嬉しいことを言ってくれたのに、その……したいの」

 そう言いながら潤んだ目で見つめられると、呆気なく欲を煽られる自分に呆れてしまう。偉そうなことを言っておいて結局はこのザマかと。
 しかしこんなに可愛い妻にあんなことを言われて、その気にならない方がおかしいだろう。そう言い訳しながらジュリアに溺れていく。




「ジュリア、ここ、気持ちいい?」
「いい、凄くいいの」

 ガウンをはだけ、触れている夫に縋る。耳に口付けを落とされる度に背中を走る痺れも相まって、もはやどこを触られても快楽が込み上げる。
 そんな彼女に見惚れながら、ニコラスは口を胸元に移動させる。

「ここも、こんなに尖って『触ってほしい』って言ってるみたいだ。美味しそうだな」

 そのまま胸の飾りを口に含むと、彼女の腰が跳ね上がる。もう片方も指で摘むと高い声が上がり、身体が震え始めた。
 そこからは夢中だった。ジュリアにはそう見えないが、彼女に触れるニコラスに余裕なんて露ほどもない。
 どんなに懇願されても聞かずに彼女が上りつめるまで攻め続けた。


「もう、ひどい」
「でも凄く気持ち良さそうだったぞ。あんなに腰を揺らして、俺の口が胸から離れたら押し付けてきたし。
 それにしても最初より胸でイきやすくなってる。イった時も、そんなに苦しそうでもなかったよな。
 ジュリアはあらゆる面で有能だ」

 下を愛撫しながら抗議を聞き流し、それでもまだ片手は胸から離さない。
 
「もうそれやだ、早く挿れて」
「確かにこれなら大丈夫か。もう欲しい?」
「欲しい、ニックのでいっぱい突いて」
「本っ当に君は煽るのが上手いな!」

 可愛い妻にこんなことを言われて、止まれる男がいるのかと半ば憤りながら胡座をかき、ジュリアを抱き起こす。

「え?」

 混乱する彼女を背中向けの状態で持ち上げ、そのまま下ろした。

「あ、これ、違うとこに当たって」
「後背位の一種だからな。痛くないか?」
「ううん、痛くは、ないけど、あっ、待って」
「もうこんなに締め付けてる。気に入ったようだな」

 ゆっくり突き上げながら両手を前に回して胸と蜜口付近の突起を攻める。

「あ、ちょっと、それは」
「もうそろそろイきそうだな、ここが凄くうねってる」

 やめさせようにも素直すぎる彼女の身体がそれを阻み、彼に翻弄されるばかり。それが嫌じゃないどころか嬉しいのだから、彼女にはどうすることも出来ない。

「今日は何回イけるか挑戦しようか?」
「むり、やだぁ」
「じゃあ一回ごとにじっくり時間をかけようか?
 なかなかイけないから、焦らされた分、イく時はめちゃくちゃ気持ちいいぞ」
「それも、むりぃ、あっ、もうっ!!」

 困ったな、と白々しく呟きながら達したばかりの彼女を穿ち続ける夫に身を委ねるジュリアは、口とは裏腹に何の抵抗も見せずされるがままだ。

 恥ずかしいけど嬉しい。自分が望んでいた通り、思うさま貪ってくれる夫に愛しさが募る。
 今となっては、おかしくなりそうな快楽への恐れも消えた。
 五年に迫る歳月が、彼は自分が本気で嫌がることは決してしないと教えてくれる。危ない目にも遭わせない。だから大丈夫。
 それに彼が言った通り、覚えたばかりのこの悦びが大好きなのだから。
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