辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足

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舌禍 ★

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 これは本当に自分の身体なのだろうかと思う程に、ちっとも思い通りにならない。
 勝手に跳ね上がる腰も、震える手足も、上手く言葉を紡げない口も。
 悲しくないのに勝手に涙を流す目元にニコラスが近付き唇で拭ってくれるけれど、その優しい感触にすら身体が跳ねる。

「大丈夫、じゃないよな。でも初めてなのに上手くイけて凄いぞ。こんなに可愛くて感じやすい奥さんを持てた俺は幸せだな」
「んんっ、あっ、もう、や」

 もう少し普通に話してほしいとジュリアは思った。どうして耳元で吐息まじりに囁く必要があるのか。

「余韻で辛いのか、少し長めの休憩が必要だな」

 そんな状態でも頭を撫でると嬉しそうに笑う愛らしさにニコラスは頬を緩める。
 途中で緊張が解けて彼女に触れるのも平気になった。おかげで彼女の可愛い姿を堪能できた上に、あまり痛い思いをさせずに済みそうだと安堵している。


 身体の震えが何とか治まるとニコラスに唇を重ねられ、馴染みのあるお茶の味が流れ込んできた。渇いた喉が潤い、少し落ち着く。
 長い片想いの中で、ジュリアはこのような状況に憧れていたこともある。だが、今はそれどころではない。
 この状況では愛し合う二人の触れ合いというより、むしろ介護をされているようなものだ。それでも全く嬉しくない訳ではないけれど。


「何回か気をやったら、やっと一つになれるんだが」
「はっ?! 何回も? これを?」

 ニコラスの言葉にふざけているのかと思ったが、しごく真面目な顔をしている。

「そうしないと痛くて耐えられないぞ」
「父に殴られていたから痛みには慣れていますよ」

 そう言うと彼の機嫌が急降下するのが見てとれた。

「あの男のことは忘れろ。それに君はもう何年もそんな目に遭ってないから、耐性は薄れている筈だ」
「そうですか?」
「そもそも痛みの質が違う。外部からの衝撃ではなく、身体の内側から引き裂かれるようなものだと聞くぞ」

 それは聞いている。何度か想像してみたこともあるけれど、やはり分からない。

「少なくとも俺は、なるべくジリーに痛い思いをさせたくないから、しっかり準備してからじゃないとしない」

 ニコラスならそうだろう。わざわざジュリアに苦痛を与える筈がない。それを軽減させる方法がない場合はともかく。


「あと、さっきのはまだ入門編だ。絶頂にもいくつか種類があって、もっとキツいのが控えているぞ」

 あれ以上のものがあるなど冗談じゃない。さっきのでも自分がどうにかなりそうで苦しかったのに。

「でも慣れたら最初よりは受け止めやすくなる。これもある程度は経験で耐性がつくからな」
「耐性……つけます、今すぐに」
「今すぐは無理だろう、そんな状態で」

 ここで引き下がったら今日はもう終わりになるのではないかとジュリアは思った。ならまだ頑張ろう。
 辛いのは確かだけれど、耐えられない程じゃない。

「貴方に抱かれたいんです。こんなに恥ずかしい思いをしたのに、今日はここで終わりなんて嫌ですから」
「ん? 俺、今日は終わりだなんて言ってないぞ」
「えっ?」
「今すぐは、無理だと言ったんだ。当然、休憩したらまた頑張ってもらうからな」

 何て素敵な笑顔なんだろう、こんな状況でなかったら。
 ジュリアは呆然としながら彼を見つめるしかない。

「ジリーは音を上げるかと思ったけど、まだまだ頑張れそうで安心したよ」
「いや、あの、まだまだという程では、んっ」

 口付けられて嬉しい筈なのに、どうしてこんなにも胸騒ぎがするのか。

「俺になら何をされても大丈夫で、全て受け入れてくれるんだよな?
 好きにして良いって言ってくれたし、遠慮なく愛妻の艶っぽくて可愛い姿を楽しませてもらうから」

 完全に言葉の選択を誤った。まさにわざわいの根となった自分の舌を悔やんでも今更である。

「心配しなくても大丈夫。俺には変な性癖はないからわざと痛めつけたりしないし、おかしな玩具や薬にも興味ない」

 それは世間一般ではごく普通のことで、わざわざ宣言する内容なのだろうか。

「俺の体力は常人離れしてるけど、ちゃんとジリーの限界を考えるから」

 ジュリアの健康管理にも気を配ってくれる彼には色々なことを知られている。ごまかしなど利かない。
 言い逃れようがない上に、耳に口付けながら話す彼に翻弄されて言葉を紡げない。

「もうちょっと休憩したら、次に進もうか」
「……はい」

 自分が言い出したことであり、彼の警告を聞き流して煽ったのも自分だ。
 腹を括ったジュリアだった。




「んんっ、もう、そこは」
「辛い?」

 さっきからずっと胸ばかりを攻められている。気持ち良いのは確かだけれど、もどかしい快感が溜まり続けて苦しい。
 それに耐えられずニコラスに目を向けると、胸の先端に舌を絡める彼と目が合いおかしくなりそうだ。少し前まで口に含まれていた反対側も、信じられないくらいに尖った状態で、指で捏ね上げられている。

「こんなに腰を揺らして……本当に感じやすくて最高だな」

 嬉しそうに呟いた彼が歯を立てると同時にもう片方を少しだけ強めに摘んだ瞬間、強いうねりにさらわれ押し流された。

「んーっ、やああっ!! ああっ! たすけて、おかしいっ!!!」
「大丈夫。胸でイくと快感が散りにくいから、最初は辛いんだ」

 ニコラスが何か言っているのは分かる。だけどそれすらもまともに聞こえないジュリアは、ただ暴れ狂う快楽に身を震わせて涙を流している。

「もうっ、やだあ! 死んじゃうぅ!!」
「死なない、大丈夫だから。これで死んでたら最後までなんて無理だぞ」

 抱きしめて宥めながらも、ここまで快楽に弱い子も少ないだろうなとニコラスは思った。
 まず胸で達する女性が少ない。今までに開発済みの相手と関係したことはあっても、自らそれをしたいとは思わなかった。
 そもそもジュリアでなければ前戯にここまで時間をかけないが。

「まさか今日中に胸でイけるとは。俺の妻は優秀だよな」
「そんな、優秀さ、いらない!」
「ああ、お帰り」

 ようやく理性が戻りつつあるジュリアを歓迎すると、恨みがましい目で見られた。

「さっきのが、なくても、最後まで、出来ますよね?」
「うん、そうだな。正直言って本当にイくとは思ってなかった。
 でも俺は嬉しいぞ。ジリーのエ、色っぽい姿がたくさん見られて。胸に慣れたら、もっと他の場所でもイけるように色々試そうな」

 デートの場所を提案するかのような気軽さで言わないでほしい。そんなに楽しみでたまらないという顔をされたら、頷きそうになるから。
 そう思ってしまう時点でジュリアの未来は確定しているが。




「何で、そんなとこ、ばっかり」
「そりゃあここで繋がるからだよ」

 秘部に顔を埋めるニコラスに抗議しても、どこ吹く風だ。彼が舌を入れている場所から上がる水音は、どう考えても彼の唾液だけではないだろう。
 しばらくすると舌を敏感な肉芽に絡めながら、すっかり勃ち上がった胸の先に手を伸ばす。

「あ、もう……や、それ、だめ」
「そんな気持ち良さそうな声で言われてやめるとでも?」

 顔を覗かせた小さな芽を刺激しすぎないように軽く捏ね回すと腿でニコラスの顔を強く挟み小刻みに身体を震わせる。まさかもう達しそうなのかと内心で驚愕しながら胸にやった手で先端を軽く弾いた。

「ああっ! またくるっ、イっちゃうからっ駄目っ!」

 言葉とは裏腹にニコラスに下腹部を押し付け腰を揺すり、達しやすいよう動いていることにジュリアは気付いていない。その無意識の行動が彼を酷く煽り立てていることにも。

「良いから、そのままイって」
「んんーっ! ああっ、ニック、もうイくっ!」

 痙攣しながら名を呼ぶ妻の姿に脳の回路が焼き切れるかと思う程に興奮しているニコラスは、これから先何があろうとジュリア以外にその気になることはないだろうと確信した。



「もう大丈夫かな、痛かったら教えてくれ」

 すっかり落ち着き身体の力が抜けたジュリアの内部に人差し指を侵入させると、少し抵抗はあるが最後まで入る。

「今日はもう三回もイったから指一本は普通に入ったな。
 ジュリア、大丈夫か? 痛みは?」
「痛くはないけど、違和感が」
「だろうな、これは長期戦だぞ。いっぱい気持ち良くなったらもう少し挿れやすくなるからな」
「まだ、これ以上……?」
「ちゃんと休憩を挟むから大丈夫だって」

 そう言いながらニコラスが指を軽く曲げた瞬間、ジュリアの身体が跳ね上がる。

「ああ、ここか」
「あっ?! 何? これ」
「もしかして刺激が強すぎたか?」

 ジュリアの反応で気付いたらしいニコラスに質問され頷く。
 そこを刺激されると奥まで響く痛みを感じる。まるで酷く凝った肩を指圧された時のような感じだ。なのに快感も潜んでいるから対処に困る。

「ここも気持ち良くなれる場所なんだけど、ジリーは敏感だから最初は辛いだろうな。でも大丈夫」
「んああっ」

 いきなり肉芽を吸い上げられ腰が跳ねた。

「ここも最初は吸ったら辛かったのに、もうこんなに感じてる。まあ軽めにしているけど。
 それにしても凄い締め付けだな、そこまで感じてくれて嬉しいよ」

 ジリーは順応性が高いな、凄いぞと褒める彼の声が少し掠れていて、それがジュリアの感度を更に高める。

「また締まった。ただでさえモテるのに、こんなに感じやすくて心配になるな」
「あっ、ああっ、んんっ」

 そう言いながら指を抜き差しするのはやめて下さい。そう言いたいのに言葉にならない。

「ここはまだあまり強く刺激したら辛いだろう? だからまずはその周囲から、ゆっくり、じっくり触っていくから安心してくれ。
 感じすぎて大変かもしれないけど、全て受け入れてくれるなら大丈夫だよな?」

 何一つ安心できる要素がないと思いつつ、もう迂闊なことは言わないと心に誓うジュリアだった。
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