辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足

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綻ぶ蕾 ★

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 ニコラスに声をかけられるまで、ジュリアはそこがソファーだったことすら忘れていたと気付く。
 そこまで夢中になっていたと思い知らされ、今更ながらに恥ずかしくなった。さっきまでも充分すぎるほどに恥ずかしかったけれど、その比ではないくらいに。

(私、とんでもなく淫らな女だったってこと?)


 お相手にもよりますが、女性にとって閨事は初めのうちは辛いだけ。殿方が満足していれば、それで良しとする方が気持ちが楽ですよ。
 閨教育係はそう言っていたし、姉も「適当な方もいると聞くから、その覚悟でいた方が辛くないかも」と、どこか遠い目で仰った。お姉様はどうだったのか訊くと真っ赤なお顔で狼狽えていたから、答えなくて良いと言ったけれど。

 これは予想とは違いすぎる。
 自分が学んだ知識によるとまだ序盤の筈。でも既に気持ち良くて少し辛いとすら思う。最後まで耐えられるだろうか。


 不安を抱えるジュリアを宥めるように口付けを落とすニコラスに目を覗き込まれ、自分も見つめ返して気付いた。
 いつもの優しい目ではない。
 強い光が宿った目に見つめられると、まるで灼かれているような気分になる。誰よりも安心できる相手を前にして、どうして危険を感じるのだろう。

「ニック様、いつもと違う目をしています」
「そうだろうな。愛する妻に触れるんだ、いつものままの訳がない」
「愛する、つま……」
「俺はジュリアが好きだと言っただろう?」

 大好きな人にそう言われ、嬉しいのに受け止める余裕すらない。
 こんな言葉をかけてもらう日を夢見ていた。けれど実際に聞くと、あまりの破壊力に打ちのめされそうだ。
 ジュリアの狼狽に気付いているのか、片頬を上げた笑顔の彼は不穏な空気を漂わせている。なのに不思議と逃げたいとは思わない。

「何だか悪いお顔になっているような」
「怖いか?」
「少し。でも、ニック様になら何をされても大丈夫だから」


 そう言うとニコラスの眉間に皺が寄り、怒らせたのかと焦る。
 慌てて声をかけようとしたら彼の顔が下がり、次の瞬間、今までの比ではないくらいの快感がジュリアを襲う。

「んっ、ああっ」

 ニコラスが薄衣ごと胸の先端を咥えていた。それだけでは飽き足らず、舌でそれを転がし、更に甘噛みして攻め立てる。

「あっ、待って」

 あまりの刺激についていけなくて中断してほしいのに、ちっとも聞いてくれない。
 それどころか次は反対側を吸いながら唾液で濡れた突起を指で摘み、転がし、軽く引っ張る。
 容赦なく与えられる悦楽に思わずのけぞった。下腹の奥が熱を持って疼いている。それだけではなく、下着に守られた場所の脈を感じて頭が沸騰しそうだ。

 休みなく攻め立てる彼にしがみつき止めようとしても軽くいなされる。経験値の差があり過ぎるジュリアには全くなす術がない。


「ねえ、ああっ、ううん、まって」
「無理だ」

 やっと口を離してくれたと思ったら、返ってきたのは無情な一言。
 そして力の入らないジュリアの夜着の紐を解くと裾を引っ張り、完全に脱がせてしまった。
 元からあってないような薄布であっても、なくなるとやはり心許ない。その恥ずかしさを訴えたいのに、追い詰められて言葉も発せずに息を荒げるだけ。
 なのにそんなジュリアにお構いなしの彼は満足げに見下ろし、また胸に顔を寄せる。そして隔てるものがない状態で直に舐め上げ吸いついた。しかも必死に止めようとするジュリアを楽しそうに見ながら。

 とても耐えられないと思った。だけど目が合うと綺麗だ、可愛いと言われるせいで抵抗できない。
 それでも暴力的なまでの快感の逃がし方が分からなくて、何とかしてほしくて彼に縋りつく。
 普段の彼ならジュリアが嫌がることは絶対にしない。気付かずにしてしまった場合でも、彼女が少しでも嫌だと思ったら察してやめてくれる。
 なのに今は容赦しない。まともに言葉を紡げなくても、様子を見れば望みなど一目瞭然なのに。




「右の方が感じやすいみたいだな」

 どれ程の時間が経ったのかもジュリアには分からない。随分と長い間、翻弄されていたと思う。
 その後ようやくやめたと思ったら、どうでも良い一言をかけられた。左右を交互に虐めて気付いたのだろうが、そんな報告は要らない。
 これ以上恥ずかしがらせるつもりなのかと睨むと、楽しそうに笑い口付ける。それだけで全て受け入れる自分が怖いくらいだ。

「喉が渇いただろう」

 誰かさんのせいなのに、さも労っているかのような顔で言われて文句を言いたくなった。だけど息も絶え絶えなジュリアには無理な話である。
 今は文句よりも先に渇きを癒やす方が先だ、その後で何とかしよう。
 そう思い、必死に頷くだけの彼女は分かっていない。彼女の思考などニコラスには筒抜けだということが。

 グラスに茶を注いだニコラスが近付き、ジュリアを抱き起こす。上掛けを胸元まで引き上げ隠してくれる優しさに油断し、すっかり身を預けてしまったのは仕方ないことだろう。
 そしてグラスの中身を飲ませ、一息ついた彼女が苦情を申し立てようとして開いた口内に舌を侵入させた。
 驚く彼女に構わず舌を擦り合わせながも、片手は彼女の胸の先端を捉えている。そのまま押し倒され、首を甘噛みしながら敏感な場所を指で擦られ、ジュリアは声にならない悲鳴を上げた。

「凄いな、あんなに感じていたから分かってたけど」

 耳元で囁かれただけで下腹の疼きが酷くなる。

「こんなに濡れた下着じゃ気持ち悪かっただろう? ごめんな、気が利かなくて」
「まっ、て」

 ニコラスが何をしようとしているか気付き、慌てて手を伸ばす。だが言葉すらまともに発せない彼女に何とかできる筈もない。
 あっさりと最後の砦を奪われ、どうして良いか分からないジュリアの膝に手をかけ、脚の間に入り込まれてしまった。


「ニック、さま、まって」
「文句なら後で聞く」

 そう言いながらとんでもない場所に顔を近付ける。

「いや、みないで下さい。そこ、いや」

 同じ寝室でも、ベッドが置いてある奥側はあまり明るくなっていない。けれど夜目が利くニコラスにはあまり問題ではなかった。
 ジュリアは今になってそのことを思い出し、暴れ始める。

「いやっ! ねえ、はなして。見ちゃやだ」
「でも、俺は見たいな。可愛い奥さんの全てを」

(さっき見てたじゃない!)

 思わず脳内で突っ込んでしまう。
 だって先ほどニコラスはそこをじっと見つめていたのだから。

「もう、充分じゃあ……」
「足りない。夜目が利くと言っても、はっきり見える程じゃない。
 適当に触れて、君を傷付けるなんてことになったら大変だ」
「きず?」

 そんなところに怪我をしたらどうなるのか。急に怖くなり、腿を掴むニコラスの手を振りほどこうとして捩っていた腰を静止させた。

「以前話したことがあるけれど、俺は今まで誰かを〝こういう意味〟で好きになったことはない。だから余裕がないんだ。君にはどう見えているか分からないが、ずっと緊張している。
 いい年をしてカッコ悪いと自分でも思うけど、君に触れるのは怖い。傷付けたら、痛い思いをさせたらと不安が大きいんだ」

 だから許してほしい。
 そう言われてなお抵抗する気にはなれなかった。

「分かりました。ニック様のお好きなようにして下さい。私、全て受け入れますから」
「君はどうしてそんなに迂闊なんだ?」

 眉をひそめ溜め息をつく彼の心境は分からない。
 ただ、自分の顔がある場所をもう少し考慮してほしかった。切実に。敏感な場所に息がかかり、盛大に身を震わせるジュリアは言葉に出せないままにそう思う。
 その反応でニコラスは何かに気付いたようで、にっこり笑いかける。まさか大好きな彼の笑顔に恐怖を覚える日が来るとは思わなかった。
 嫌な予感が拭えない。


「ああ、ごめん。お待たせ」

 そう言いながら更に顔を近付けるニコラスを止めようとして絶叫した。

「あああっ!! いやあっ」

 ニコラスが口付けた場所から全身に衝撃が走る。子を産む場所より少し上の小さな突起を口に含み、吸い上げられたのだ。

「気持ち良いか?」

 ジュリアの秘部から口を離したニコラスに訊かれ、全力で首を横に振った。
 気持ちいいなんてものじゃない。
 むき出しの神経に金属を当てられたかのような鋭さで、むしろ痛い程だ。

「これは刺激が強すぎたか、やっぱり敏感だな」

 何かに納得したような彼がまた顔を埋め、同じ場所に優しく舌を這わせた。
 さっきとは全く違う刺激がジュリアを襲い、受け止めきれない快感に身体が震える。

「くうっ、ああ、それ、だめぇ」
「ああ、良かった。これは気持ち良さそうだな」

 今度は全くやめてくれない。そんなとんでもない場所を舐めるだなんて信じられないから、今すぐやめてほしいのに。
 何かがお腹の中で渦巻き追い立てられる。

「ああ、やめて。なんか、おかしく、なりそう」
「そうだろうな。大丈夫、おかしくなっても構わない。むしろ、おかしくなって欲しいから続けるぞ」
「なんでえ……?」
「全て受け入れるんだろう?」

 今日、少しずつ表現は変わっても、この部屋で何度も伝えた内容。まさか今になって自分の首を絞めるとは。
 そんなジュリアの腿をがっちり掴みながら舌を動かし、追い詰めるニコラスはどんなに懇願してもやめてくれない。
 それどころか、舌を尖らせ突いたり、口に含み舌で円を描くようにしながら攻め立てる。

 何かに追い上げられるような感覚がどんどん強くなり、逃げることも許されず、ひたすらその感覚に耐えるしかない。彼の舌が触れる場所を中心に凶猛な快楽が溜まり、暴れ回っている。

「もうっ、むり!」

 叫んだ瞬間、軽くかすめる程度に歯を当てられ、全てが弾け飛んだ。
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