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筑紫島の章
アメノヒワシ
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筑紫のオモイカネは着々と出雲との戦の準備を進めていた。出雲軍を筑紫に引き入れたたいておけば当分出雲は動けない。大国主の命でもとれれば大成功だが出雲を敗戦にさえおいこめば吉備のアラシトとの連携で瀬戸内から四国を固めることができる。大和での工作が成功し出雲と大和の連携を絶てば、出雲・越の大国主勢力を地元にくぎづけにできる。そうしておいて瀬戸内、太平洋の航路を独占できれば出雲も越も怖くは無い。
そんなときに、サグメが大国主の元から舞い戻ってきた。サグメはアメノホヒとの密約をオモイカネに報告した。タカミムスビとオモイカネは至急に協議をし早速ホヒの提案した連携作戦に乗ることにした。オモイカネは上手すぎる話だと思いつつもヤマタイ二大将軍フツヌシの配下の副将アメノヒワシを連絡官として大国主の軍勢に同行させることを条件にホヒの作戦にのることにした。
ヒワシならこの作戦がホヒの罠だとしても最悪の展開を防げる能力と器量を持ち合わせているからだ。サグメと共にヒワシと彼の配下の精鋭を佐比売山の出雲の関に送ることにした。ヒワシには、ホヒとの交渉を全て想定して教え込んだ。オモイカネとしては一撃必殺の機会を得るための策を手に入れたこともそうだが、武人であるヒワシに出雲の様子を見せられるチャンスだとも判断していた。
タカミムスビは不安そうにオモイカネに問うた。
「大丈夫かの?ホヒはなかなかに策を労じるものと聞いておる。宇佐に居ったおりから抜け目のない奴だったからな。信用できるのか?」
「そこじゃ、父上。我はホヒのことをよく知らぬ。なにせ我が物心つくかつかぬかのうちに出雲に人質にいったのだ。罠の可能性もあると思うておる。しかし我が魏にいっておったときは故郷がいとしくてしょうがなかった。それを思えばホヒがヤマタイへ帰りたいと願うもわからんわけではない。」
「というても、アラシトとタヂカラオの居ぬまに、こんな大事を決めていいものか?ことは伊都のわれらがヤマタイの全てを手にできるかどうかだけでなく、万が一ホヒの罠だとすれば伊都の血も絶えてしまうほどの敗戦になるやもしれぬ」
「御歳を召されましたな父上。ヒワシを出雲へ遣わしてそれなりの手は打たせまする。例え罠だとしても合戦の場所は我らの地元、地の利もあります。そうは簡単にホヒの思うがままにはさせません。なにより出雲の大国主という大立者を倒せる機会などそうはありませぬ。何、ご安心めされ、このオモイカネが智謀とホヒの姦計、どちらが上と思われるか?」
「いや、そなたの知恵を疑っておるわけではない。兵を伊勢・大和に送った今の兵力では出雲全軍が襲ってきた場合凌げるかどうか?それも心配なのだ」
「それは大丈夫でござろう。タケミナカタは越にて動いてはおりませぬし、今回は大和とてアラシトの策で封じ込まれているでしょうから、兵力的にも我らの方が勝っておる計算です」
「そうじゃな、敵の精鋭八千鉾軍さえこなければ、勝算は我に在りだ。これでアラシトのヤマトからの日神子招請がうまくいけばヤマタイどころか筑紫島、さらには倭国のはてまでわれらのものじゃ」
「ところで、大和を取りこんだ暁には、遷都を行おうと思っております。まず吉備の浦あたりがよろしいかと、そのうち大和も我らの手の内におさめる所存でございます」
「阿蘇を捨てるのか?」
「出雲を完全に叩き潰すには正直なところまだまだ力がたりません。初代のヒミコ様のおり、魏を後ろ盾にした時でさえも出雲はひるみませんでした。それどころか大国主はあの長城を越え遠く蜀漢や北方部族の力を借り魏への牽制まで行いました。張政どのがなかなか半島より離れられなかったのは出雲の策謀が原因でござる。一筋縄ではいきません。さらには狗奴国のヒミクコやキクチヒコを焚き付け我らを呉と揉めさせたのは記憶に新しゅうございます。常に大陸からの影響に晒される筑紫では出雲に対抗する戦力を作り上げるのも難しいのです。ミマキイリヒコと新しき日神子様を通じ大和の地が手に入るなら我々は東遷してかの地に盤居するが上策と思われます。今や大和の国力は無視できない程成長しております。いくら出雲の後ろ盾があろうとこれほどの短期間にあそこまで強大になるのは倭国全体を見渡しても地の利があるということでしょう」
「そうじゃな。我らは火の山の祭祀を捨てたのじゃ、阿蘇に何の未練があろうぞ」
「父上そうでございます。大舟の建造で瀬戸内の海運も発達した今、筑紫に拘る必要はないとおもわれます。」
伊都の国王親子二人の策謀を聞いてか知らずか、阿蘇の山は「どーん」と突如怒りの咆哮のような噴火を二・三回くりかえした。二人のいる館からももうもうと湧きあがる噴煙が天を覆い隠さんとばかり昇るのが見てとれた。
そんなときに、サグメが大国主の元から舞い戻ってきた。サグメはアメノホヒとの密約をオモイカネに報告した。タカミムスビとオモイカネは至急に協議をし早速ホヒの提案した連携作戦に乗ることにした。オモイカネは上手すぎる話だと思いつつもヤマタイ二大将軍フツヌシの配下の副将アメノヒワシを連絡官として大国主の軍勢に同行させることを条件にホヒの作戦にのることにした。
ヒワシならこの作戦がホヒの罠だとしても最悪の展開を防げる能力と器量を持ち合わせているからだ。サグメと共にヒワシと彼の配下の精鋭を佐比売山の出雲の関に送ることにした。ヒワシには、ホヒとの交渉を全て想定して教え込んだ。オモイカネとしては一撃必殺の機会を得るための策を手に入れたこともそうだが、武人であるヒワシに出雲の様子を見せられるチャンスだとも判断していた。
タカミムスビは不安そうにオモイカネに問うた。
「大丈夫かの?ホヒはなかなかに策を労じるものと聞いておる。宇佐に居ったおりから抜け目のない奴だったからな。信用できるのか?」
「そこじゃ、父上。我はホヒのことをよく知らぬ。なにせ我が物心つくかつかぬかのうちに出雲に人質にいったのだ。罠の可能性もあると思うておる。しかし我が魏にいっておったときは故郷がいとしくてしょうがなかった。それを思えばホヒがヤマタイへ帰りたいと願うもわからんわけではない。」
「というても、アラシトとタヂカラオの居ぬまに、こんな大事を決めていいものか?ことは伊都のわれらがヤマタイの全てを手にできるかどうかだけでなく、万が一ホヒの罠だとすれば伊都の血も絶えてしまうほどの敗戦になるやもしれぬ」
「御歳を召されましたな父上。ヒワシを出雲へ遣わしてそれなりの手は打たせまする。例え罠だとしても合戦の場所は我らの地元、地の利もあります。そうは簡単にホヒの思うがままにはさせません。なにより出雲の大国主という大立者を倒せる機会などそうはありませぬ。何、ご安心めされ、このオモイカネが智謀とホヒの姦計、どちらが上と思われるか?」
「いや、そなたの知恵を疑っておるわけではない。兵を伊勢・大和に送った今の兵力では出雲全軍が襲ってきた場合凌げるかどうか?それも心配なのだ」
「それは大丈夫でござろう。タケミナカタは越にて動いてはおりませぬし、今回は大和とてアラシトの策で封じ込まれているでしょうから、兵力的にも我らの方が勝っておる計算です」
「そうじゃな、敵の精鋭八千鉾軍さえこなければ、勝算は我に在りだ。これでアラシトのヤマトからの日神子招請がうまくいけばヤマタイどころか筑紫島、さらには倭国のはてまでわれらのものじゃ」
「ところで、大和を取りこんだ暁には、遷都を行おうと思っております。まず吉備の浦あたりがよろしいかと、そのうち大和も我らの手の内におさめる所存でございます」
「阿蘇を捨てるのか?」
「出雲を完全に叩き潰すには正直なところまだまだ力がたりません。初代のヒミコ様のおり、魏を後ろ盾にした時でさえも出雲はひるみませんでした。それどころか大国主はあの長城を越え遠く蜀漢や北方部族の力を借り魏への牽制まで行いました。張政どのがなかなか半島より離れられなかったのは出雲の策謀が原因でござる。一筋縄ではいきません。さらには狗奴国のヒミクコやキクチヒコを焚き付け我らを呉と揉めさせたのは記憶に新しゅうございます。常に大陸からの影響に晒される筑紫では出雲に対抗する戦力を作り上げるのも難しいのです。ミマキイリヒコと新しき日神子様を通じ大和の地が手に入るなら我々は東遷してかの地に盤居するが上策と思われます。今や大和の国力は無視できない程成長しております。いくら出雲の後ろ盾があろうとこれほどの短期間にあそこまで強大になるのは倭国全体を見渡しても地の利があるということでしょう」
「そうじゃな。我らは火の山の祭祀を捨てたのじゃ、阿蘇に何の未練があろうぞ」
「父上そうでございます。大舟の建造で瀬戸内の海運も発達した今、筑紫に拘る必要はないとおもわれます。」
伊都の国王親子二人の策謀を聞いてか知らずか、阿蘇の山は「どーん」と突如怒りの咆哮のような噴火を二・三回くりかえした。二人のいる館からももうもうと湧きあがる噴煙が天を覆い隠さんとばかり昇るのが見てとれた。
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