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邪馬台国の滅亡
タケミナカタ出陣
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タケミナカタは八千矛軍と、建設部隊を率いて奴国の本陣を出発した。
吉野ヶ里の近郊に陣地を設営し、衝車を製造するためだ。砦を落とすのに衝車は必要不可欠だ。
それも今や列島随一の要塞である。
ただ攻めかかるだけでは、矢の的になり下がるのみ。それは避けねばならない。また陣地建設を邪魔しにくるであろう邪馬台国の群勢を蹴散らさないといけない。
壱岐や伊都から集めた最新の武具で武装しているであろう邪馬台国軍、今や孤立無援といえども易々とは落とせない。
数日後、吉野ヶ里までの最後の森林地帯に辿り着き、木材を確保して陣地を選択するために建設部隊を止め起き、八千矛軍が吉野ヶ里に先発した。
それを察知したのか、邪馬台国軍は吉野ヶ里から迎え打つために出発した。
率いるのはフツヌシである。タヂカラヲは防衛戦には長けているが攻め込むタイプの将軍ではない。綺羅星のごとく居た指揮官も今や頼りになるのはこの二名の将軍のみである。
ちょうど森林地帯から二日後、両者は再びあいまみえた。
「やあやあそこに屯してるのは出雲のタケミナカタと見た!豊の国では引き分けたが今回は叩き潰しやる!」
先頭で長槍を手にした騎馬姿のフツヌシがタケミナカタに呼びかけた。
「おーっ、また返り討ちにしてくれるわ!」
タケミナカタも返答し、お互い一騎がけで長槍を合わせる。
「ガツン」
まずは一合。
馬首を返して騎馬のまま槍を打ち合うこと二十合。
しびれを切らしたフツヌシが一旦、馬を引き、馬上から降りて待ち構える。タケミナカタもそれに呼応し、馬を降りて剣を手にする。
お互いの部下たちは豊の国での遭遇の時のように一騎打ちを見物だ。
フツヌシが自慢の大陸製の長剣を振り翳し走ってくる。タケミナカタは呼吸を整え、こちらも出雲造の太い鉄剣を構える。
せめぎあうようにお互いが剣を打ち合う。渡り合うこと五十合。
どよめきがお互いの部下から巻き起こる。
最初は長剣を持ったフツヌシ有利に見えたが、じわりとタケミナカタは間を詰める。
間を詰めると出雲造の太い剣撃が有利になってくる。
数十合撃ち合ったあと、一旦、間をとるように二人が同時に後ろに飛ぶ。構え直して再び剣撃を交わしたその時、フツヌシの長剣が根元から折れた。
トドメを指すかにみえたタケミナカタだったが、それ以上の攻撃をやめ大笑いした。
「楽しませてもらったぞ!」
「何を!」
「其方にトドメを指すのは、またの機会に楽しみにとっておく!」
フツヌシは悔しそうに地面に剣を叩きつけ長槍に持ち替える。そして、後ろに控えていた部下たちに号令をかけた。
「退け!」
フツヌシは、タケミナカタをひと睨みして、馬首を返した。
またもや引き分け、いや今回はタケミナカタの勝ちだと言えよう。
邪馬台国軍が去ったのを見届けて、タケミナカタは最前線になる陣地の場所を探すように配下に命じた。
吉野ヶ里の近郊に陣地を設営し、衝車を製造するためだ。砦を落とすのに衝車は必要不可欠だ。
それも今や列島随一の要塞である。
ただ攻めかかるだけでは、矢の的になり下がるのみ。それは避けねばならない。また陣地建設を邪魔しにくるであろう邪馬台国の群勢を蹴散らさないといけない。
壱岐や伊都から集めた最新の武具で武装しているであろう邪馬台国軍、今や孤立無援といえども易々とは落とせない。
数日後、吉野ヶ里までの最後の森林地帯に辿り着き、木材を確保して陣地を選択するために建設部隊を止め起き、八千矛軍が吉野ヶ里に先発した。
それを察知したのか、邪馬台国軍は吉野ヶ里から迎え打つために出発した。
率いるのはフツヌシである。タヂカラヲは防衛戦には長けているが攻め込むタイプの将軍ではない。綺羅星のごとく居た指揮官も今や頼りになるのはこの二名の将軍のみである。
ちょうど森林地帯から二日後、両者は再びあいまみえた。
「やあやあそこに屯してるのは出雲のタケミナカタと見た!豊の国では引き分けたが今回は叩き潰しやる!」
先頭で長槍を手にした騎馬姿のフツヌシがタケミナカタに呼びかけた。
「おーっ、また返り討ちにしてくれるわ!」
タケミナカタも返答し、お互い一騎がけで長槍を合わせる。
「ガツン」
まずは一合。
馬首を返して騎馬のまま槍を打ち合うこと二十合。
しびれを切らしたフツヌシが一旦、馬を引き、馬上から降りて待ち構える。タケミナカタもそれに呼応し、馬を降りて剣を手にする。
お互いの部下たちは豊の国での遭遇の時のように一騎打ちを見物だ。
フツヌシが自慢の大陸製の長剣を振り翳し走ってくる。タケミナカタは呼吸を整え、こちらも出雲造の太い鉄剣を構える。
せめぎあうようにお互いが剣を打ち合う。渡り合うこと五十合。
どよめきがお互いの部下から巻き起こる。
最初は長剣を持ったフツヌシ有利に見えたが、じわりとタケミナカタは間を詰める。
間を詰めると出雲造の太い剣撃が有利になってくる。
数十合撃ち合ったあと、一旦、間をとるように二人が同時に後ろに飛ぶ。構え直して再び剣撃を交わしたその時、フツヌシの長剣が根元から折れた。
トドメを指すかにみえたタケミナカタだったが、それ以上の攻撃をやめ大笑いした。
「楽しませてもらったぞ!」
「何を!」
「其方にトドメを指すのは、またの機会に楽しみにとっておく!」
フツヌシは悔しそうに地面に剣を叩きつけ長槍に持ち替える。そして、後ろに控えていた部下たちに号令をかけた。
「退け!」
フツヌシは、タケミナカタをひと睨みして、馬首を返した。
またもや引き分け、いや今回はタケミナカタの勝ちだと言えよう。
邪馬台国軍が去ったのを見届けて、タケミナカタは最前線になる陣地の場所を探すように配下に命じた。
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