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邪馬台国の滅亡
邪馬台国連合解散
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ホホデミは困っていた。
議長に祭り上げられたものの、この混乱と紛糾の場をまとめ上げる能力なぞホホデミにはない。
火神子の男王として威厳があっただけなのである。
もう一人のクマノクスヒは人望はあるが狡さに欠ける。
この二人が主役では何も決まらないし何も具体的な話し合いもはじまらない。
出席者はみんなざわついて、それぞれが勝手にヒソヒソ話をしている。
そんな状況である。
それを遠目に眺めていた狗奴国客分として参加していたイリヒコが痺れをきらし立ち上がった時だった。
西の入り口からオモイカネ、東の入り口からアメノホヒがタイミングを測ったように入場してきた。
その瞬間、議場には緊張が走る。ざわつきが収まって沈黙が訪れた。
その様子をみてイリヒコも座り直した。
まず口を開いたのはオモイカネだった。
「お集まりの皆様、お待たせいたしました。火神子様の祠でこの先の事を考えておりました。申し訳ない」
と、深々と頭を下げた。次に口火をきったのはアメノホヒだ。
「皆さん、お久しぶりです。出雲の大国主様のところに人質として送られていたアメノホヒです。久しぶりの対面がこのようなことになるとは、考えもつきませんでした。そこで私め火神子様の祠に報告してまいりました。遅れた事をお許しください。この席では、私は天孫族の立場ではなく、出雲族の代表として話をさせていただきます。」
ざわつきがまた戻ってきた。それを遮るようにアメノホヒは続ける。
「皆さんに紹介しましょう。今回、当時者である邪馬台国と出雲国以外から第三者として立ち合いをねがい了承していただいた、淡路王のヒルコ様、そして大和に移住したイワレヒコ様の義理の息子になるイリヒコ様のお二人です。お二人とも先祖は我々と同じく天孫族ですので広い意味で同族です」
ヒルコとイリヒコが立ち上がった。おーっと再び議場にざわめきが戻ってきた。
ヒルコが挨拶をする。
「みなさまお初にお目にかかります。天孫族とはいえ、本流からははるか昔に別れ、淡路島に住まいしておりましたが、縁あって今は狗奴国に住まいしております。こちらに控えるイリヒコも同じくです。よろしくお願い申し上げます。と柏手を打って挨拶を済ませた。
オモイカネがホホデミに声をかける。
「ホホデミ様、開始の挨拶を」
「うむ」
ホホデミは緊張気味に今の状況を述べた。
邪馬台国連合はもはや実態がないこと、邪馬台国の揺るぎない領地はここ阿蘇と吉野ヶ里の要塞だけ、出雲の大国主が奴国まで進出してきており、豊の国のほとんどの勢力は大国主についたこと。
そして、最後に火神子がオモイカネに殺されたこと。
議場にため息が充満する。
クマノクスヒが口を挟む。
「先祖代々の土地として必死に守ってきた日向の国も狗奴国に明け渡し、私と私に着いてきた民も吉野ヶ里に入っている。」
つまりは邪馬台国、天孫族には吉野ヶ里しかないのである。
ホホデミは最後にこう結んだ。
「出雲と和睦の道を探るか、吉野ヶ里に立て籠り徹底抗戦するか、それがこの会議の大きな議題だ」
クマノクスヒが補足する。
「それぞれ立場も領国もある。忌憚なき意見を聞かせてもらいたい。天孫族は別れた道を行っても天孫族だ。この誇りだけは念頭において発言をお願いする」
議場は再び、沈黙に覆われた。
議長に祭り上げられたものの、この混乱と紛糾の場をまとめ上げる能力なぞホホデミにはない。
火神子の男王として威厳があっただけなのである。
もう一人のクマノクスヒは人望はあるが狡さに欠ける。
この二人が主役では何も決まらないし何も具体的な話し合いもはじまらない。
出席者はみんなざわついて、それぞれが勝手にヒソヒソ話をしている。
そんな状況である。
それを遠目に眺めていた狗奴国客分として参加していたイリヒコが痺れをきらし立ち上がった時だった。
西の入り口からオモイカネ、東の入り口からアメノホヒがタイミングを測ったように入場してきた。
その瞬間、議場には緊張が走る。ざわつきが収まって沈黙が訪れた。
その様子をみてイリヒコも座り直した。
まず口を開いたのはオモイカネだった。
「お集まりの皆様、お待たせいたしました。火神子様の祠でこの先の事を考えておりました。申し訳ない」
と、深々と頭を下げた。次に口火をきったのはアメノホヒだ。
「皆さん、お久しぶりです。出雲の大国主様のところに人質として送られていたアメノホヒです。久しぶりの対面がこのようなことになるとは、考えもつきませんでした。そこで私め火神子様の祠に報告してまいりました。遅れた事をお許しください。この席では、私は天孫族の立場ではなく、出雲族の代表として話をさせていただきます。」
ざわつきがまた戻ってきた。それを遮るようにアメノホヒは続ける。
「皆さんに紹介しましょう。今回、当時者である邪馬台国と出雲国以外から第三者として立ち合いをねがい了承していただいた、淡路王のヒルコ様、そして大和に移住したイワレヒコ様の義理の息子になるイリヒコ様のお二人です。お二人とも先祖は我々と同じく天孫族ですので広い意味で同族です」
ヒルコとイリヒコが立ち上がった。おーっと再び議場にざわめきが戻ってきた。
ヒルコが挨拶をする。
「みなさまお初にお目にかかります。天孫族とはいえ、本流からははるか昔に別れ、淡路島に住まいしておりましたが、縁あって今は狗奴国に住まいしております。こちらに控えるイリヒコも同じくです。よろしくお願い申し上げます。と柏手を打って挨拶を済ませた。
オモイカネがホホデミに声をかける。
「ホホデミ様、開始の挨拶を」
「うむ」
ホホデミは緊張気味に今の状況を述べた。
邪馬台国連合はもはや実態がないこと、邪馬台国の揺るぎない領地はここ阿蘇と吉野ヶ里の要塞だけ、出雲の大国主が奴国まで進出してきており、豊の国のほとんどの勢力は大国主についたこと。
そして、最後に火神子がオモイカネに殺されたこと。
議場にため息が充満する。
クマノクスヒが口を挟む。
「先祖代々の土地として必死に守ってきた日向の国も狗奴国に明け渡し、私と私に着いてきた民も吉野ヶ里に入っている。」
つまりは邪馬台国、天孫族には吉野ヶ里しかないのである。
ホホデミは最後にこう結んだ。
「出雲と和睦の道を探るか、吉野ヶ里に立て籠り徹底抗戦するか、それがこの会議の大きな議題だ」
クマノクスヒが補足する。
「それぞれ立場も領国もある。忌憚なき意見を聞かせてもらいたい。天孫族は別れた道を行っても天孫族だ。この誇りだけは念頭において発言をお願いする」
議場は再び、沈黙に覆われた。
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