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邪馬台国の滅亡
紀伊国の王
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三輪山のタカヒコいや大物主の政庁に、賓客が現れた。
紀伊国の王、イタテである。
表向きは新しい大物主への表敬訪問だ。
タカヒコは喜んで面会した。
「これは大物主様、この度は改めてご就任の挨拶に上がりました。お初にお目にかかります。紀伊国のイタテと申します。今後もよろしくお願い申し上げます。
と、下手からイタテは挨拶の言葉を奏上した。
タカヒコは隣にくるように誘い、お互い柏手を打ち合い挨拶の儀式を済ませた。
「これはイタテ殿、遠路のお越しありがとうごさいます。大国主の子、アジスキタカヒコネこと新任の大和大国主にございます」
かなり高齢のイタテにたいして、タカヒコは丁寧な言葉を紡いで挨拶をした。
「いやいや、こちらこそイリヒコらを捉えられず申し訳ない事をしました。河内と紀伊の間から脱出したようにございます」
「それはもう良いです。イワレヒコらを大和から追放したと思えば成功です。」
そばに控えていたタケミナカタが置いていった八千矛軍副将のイセツヒコが口を出した。
「トベの村を通ったようですな。イタテ殿に報告は上がらなかったのですか?」
「私が知った時にはもう海に出ておりました」
「そうですか、紀伊国と出雲は初代の大国主様がお世話になってからの縁と聞きます」
「まあ私の祖、イソタケルもタカヒコ様のように出雲から紀伊国の王としてやってきた人間です。出雲ひいては大和と悶着をおこそうなど考えてはおりません。しかしこの度、大物主様に拝謁させていただきましたのには、父君の出雲大国主様にどうしてもお許し願いたいお願いがございまして」
「ほう、それは?」
タカヒコは軽く聞き返した。
「邪馬台国の事、いや伊都国のタカミムスビ親子についての処遇に関してのお願いです。ぜひタカミムスビ親子を紀伊国に頂きたい。彼らの知識、人脈を使って紀伊国も交易を始めたいと思いまして。」
「と、言う事は父、大国主が邪馬台国に攻め入ってるのをご存知の上での願いですね。」
イセツヒコが横から口を、出した。
「このような戦が始まった原因はそのタカミムスビ親子にあるのはご存知か?」
「?」
「邪馬台国の女王火神子を暗殺したのは?」
さらにイセツヒコは声を大きくした。
「今回の倭国大乱の責任はタカミムスビ親子にある。処刑は免れますまい」
「それは知りもうさなんだ」
イタテは顔を、青くして項垂れた。
「今も吉野ヶ里に深い環濠を、巡らし、籠城の構えを見せている。このまま出雲軍と邪馬台国軍がぶつかれば勝っても負けても大きな損失があるのは目に見えてござる」
「籠城、、、」
タカヒコがたまらず口を開いた。
「イタテ様、タカミムスビ殿は老齢で吉野ヶ里に都を移した直後に亡くなられました。抵抗しているのはオモイカネ殿率いる伊都国軍を中心とした邪馬台国軍です。今、イセツヒコが述べたようにお互い激突しても得るものはない。」
「オモイカネがそのようなことを!」
イタテは本当に知らなかったようだ。
「イタテ様、私は大和の地を離れることはできません。そこでお願いがあります。」
「願いとは?」
「オモイカネへの説得です。無条件降伏するなら、オモイカネを紀伊国にお預けできるよう父、大国主に頼んでみます。どうですか?オモイカネを説得できますか?」
「大物主さま!」
タニグクとイセツヒコが声を揃えて止めに入った。
「そのような勝手なお約束はなされない事です」
イセツヒコは強く忠告した。
「しかし、イセツヒコ、聞くところによると吉野ヶ里を落とすには莫大な損失を覚悟せねばならないそうだ。オモイカネさえ降伏を受け入れれば、その損失は民に還元できるであろう」
「それはそうでございますが」
「無条件降伏、これだけです。筑紫では出雲のアメノホヒと伊都国のオモイカネ、邪馬台国連合の天孫族の間で綱引き外交が行われている。これは当事者同士では解けないほど絡まっていることでしょう。これをイタテ様は解けますか?」
「私に?」
「そうです。第三者の介入が必要です。アメノホヒは第三者として狗奴国を想定しておるのですが、狗奴国は邪馬台国と長年争いを繰り返しておりますので、第三者とは言えますまい。そこで紀伊国の王、イタテ様の出陣をお願いしたい。もちろん外交者として」
イタテは突然の申し出に、困惑し、言葉を失ったように黙り込んでしまった。
オモイカネは欲しい、しかしそれが出雲大国主の勘気に触れるかもしれない。イタテは相当の時間唸りながら考えていた。
タカヒコはイセツヒコに命じた。
「イタテ様が筑紫に行き、出雲有利の条件とオモイカネを筑紫から離し紀伊国に連れて帰る交渉に出られるのなら、随伴してお守りするのだ」
「はい、それはお任せください。しかし、この交渉は難しすぎます。」
タニグクが口を、挟んだ。
「大物主様の言う通り、遠く離れた紀伊国にオモイカネを追放するのなら、万が一はあるやもしれませぬ。一本気だったタカヒコ様も修羅場を経験され、お変わりになられた」
と、涙ぐんだ。
それを見ていたイタテは大きく深呼吸し、自らを奮い立てるように柏手を四つ打った。
その場の人間たちがイタテに注目する。
「お引き受けいたしましょう。大国主様へのおとりなしをお願い申し上げます。」
イタテは、決断した。
翌日、イセツヒコともに筑紫に渡るため、河内へと移動した。果たしてどうなるのか?
紀伊国の王、イタテである。
表向きは新しい大物主への表敬訪問だ。
タカヒコは喜んで面会した。
「これは大物主様、この度は改めてご就任の挨拶に上がりました。お初にお目にかかります。紀伊国のイタテと申します。今後もよろしくお願い申し上げます。
と、下手からイタテは挨拶の言葉を奏上した。
タカヒコは隣にくるように誘い、お互い柏手を打ち合い挨拶の儀式を済ませた。
「これはイタテ殿、遠路のお越しありがとうごさいます。大国主の子、アジスキタカヒコネこと新任の大和大国主にございます」
かなり高齢のイタテにたいして、タカヒコは丁寧な言葉を紡いで挨拶をした。
「いやいや、こちらこそイリヒコらを捉えられず申し訳ない事をしました。河内と紀伊の間から脱出したようにございます」
「それはもう良いです。イワレヒコらを大和から追放したと思えば成功です。」
そばに控えていたタケミナカタが置いていった八千矛軍副将のイセツヒコが口を出した。
「トベの村を通ったようですな。イタテ殿に報告は上がらなかったのですか?」
「私が知った時にはもう海に出ておりました」
「そうですか、紀伊国と出雲は初代の大国主様がお世話になってからの縁と聞きます」
「まあ私の祖、イソタケルもタカヒコ様のように出雲から紀伊国の王としてやってきた人間です。出雲ひいては大和と悶着をおこそうなど考えてはおりません。しかしこの度、大物主様に拝謁させていただきましたのには、父君の出雲大国主様にどうしてもお許し願いたいお願いがございまして」
「ほう、それは?」
タカヒコは軽く聞き返した。
「邪馬台国の事、いや伊都国のタカミムスビ親子についての処遇に関してのお願いです。ぜひタカミムスビ親子を紀伊国に頂きたい。彼らの知識、人脈を使って紀伊国も交易を始めたいと思いまして。」
「と、言う事は父、大国主が邪馬台国に攻め入ってるのをご存知の上での願いですね。」
イセツヒコが横から口を、出した。
「このような戦が始まった原因はそのタカミムスビ親子にあるのはご存知か?」
「?」
「邪馬台国の女王火神子を暗殺したのは?」
さらにイセツヒコは声を大きくした。
「今回の倭国大乱の責任はタカミムスビ親子にある。処刑は免れますまい」
「それは知りもうさなんだ」
イタテは顔を、青くして項垂れた。
「今も吉野ヶ里に深い環濠を、巡らし、籠城の構えを見せている。このまま出雲軍と邪馬台国軍がぶつかれば勝っても負けても大きな損失があるのは目に見えてござる」
「籠城、、、」
タカヒコがたまらず口を開いた。
「イタテ様、タカミムスビ殿は老齢で吉野ヶ里に都を移した直後に亡くなられました。抵抗しているのはオモイカネ殿率いる伊都国軍を中心とした邪馬台国軍です。今、イセツヒコが述べたようにお互い激突しても得るものはない。」
「オモイカネがそのようなことを!」
イタテは本当に知らなかったようだ。
「イタテ様、私は大和の地を離れることはできません。そこでお願いがあります。」
「願いとは?」
「オモイカネへの説得です。無条件降伏するなら、オモイカネを紀伊国にお預けできるよう父、大国主に頼んでみます。どうですか?オモイカネを説得できますか?」
「大物主さま!」
タニグクとイセツヒコが声を揃えて止めに入った。
「そのような勝手なお約束はなされない事です」
イセツヒコは強く忠告した。
「しかし、イセツヒコ、聞くところによると吉野ヶ里を落とすには莫大な損失を覚悟せねばならないそうだ。オモイカネさえ降伏を受け入れれば、その損失は民に還元できるであろう」
「それはそうでございますが」
「無条件降伏、これだけです。筑紫では出雲のアメノホヒと伊都国のオモイカネ、邪馬台国連合の天孫族の間で綱引き外交が行われている。これは当事者同士では解けないほど絡まっていることでしょう。これをイタテ様は解けますか?」
「私に?」
「そうです。第三者の介入が必要です。アメノホヒは第三者として狗奴国を想定しておるのですが、狗奴国は邪馬台国と長年争いを繰り返しておりますので、第三者とは言えますまい。そこで紀伊国の王、イタテ様の出陣をお願いしたい。もちろん外交者として」
イタテは突然の申し出に、困惑し、言葉を失ったように黙り込んでしまった。
オモイカネは欲しい、しかしそれが出雲大国主の勘気に触れるかもしれない。イタテは相当の時間唸りながら考えていた。
タカヒコはイセツヒコに命じた。
「イタテ様が筑紫に行き、出雲有利の条件とオモイカネを筑紫から離し紀伊国に連れて帰る交渉に出られるのなら、随伴してお守りするのだ」
「はい、それはお任せください。しかし、この交渉は難しすぎます。」
タニグクが口を、挟んだ。
「大物主様の言う通り、遠く離れた紀伊国にオモイカネを追放するのなら、万が一はあるやもしれませぬ。一本気だったタカヒコ様も修羅場を経験され、お変わりになられた」
と、涙ぐんだ。
それを見ていたイタテは大きく深呼吸し、自らを奮い立てるように柏手を四つ打った。
その場の人間たちがイタテに注目する。
「お引き受けいたしましょう。大国主様へのおとりなしをお願い申し上げます。」
イタテは、決断した。
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