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邪馬台国の滅亡

人質交換

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アメノホヒは、阿蘇の手前で逗留した。

同伴したのは、アメノヒワシ。オモイカネの側近の1人であり邪馬台国の一軍の将でもある。

彼とアメノホヒの息子、ヒナトリを人質としてお互い交換していたのだ。

それを阿蘇会談の前に元に戻せというのが、アメノホヒの条件だ。

オモイカネとしては、ヒナトリを返す代わりに、戦いになった時に頼りになるヒワシを取り戻せる。

悪くはない。

というか、突っぱねるだけの力がもうオモイカネにはないのだ。

ヒナトリも天孫族の子孫の一人だ。

これを、処刑して団結するという効果はもう期待できない。それどころか、今は味方である天孫族たちからの支持も失ってしまう確率が高い。

オモイカネは熟慮の結果、人質交換を飲んだ。

「ヒナトリ、大丈夫だったか?」

久しぶりにあった息子は敵地での生活のせいか心持ち成長を感じさせた。

「はい、天孫族の方達も多く居られて、虐げられたりはしませんでした。父上が何故、大国主様に寝返ったかは詰問されましたが、私はまだ幼くわからないと答えました」

「うむ、それで良い。オモイカネとは話したのか?」

「はい、連れてこられた時に出雲の事を細かく聞かれました。その後は会っていません」

「なるほどなあ、出雲の国力を把握したな。オモイカネは。」

ホヒはヒワシに言った。

「お主はどうする?阿蘇へ一緒にいくか?それとも吉野ヶ里へと駆けつけるか?」

「フツヌシ将軍、タヂカラヲ将軍も吉野ヶ里にいるそうなので、武人たる私も吉野ヶ里に向かわせていただきます。」

「そうか…ここから先はどうなるか、私にもわからない。次に見舞えるのは戦場になるやもしれんな」

「はい、その時はこちらも全力をもって出雲軍から民を守ります。」

「おいおい、今回の出雲の筑紫入りは民の支配ではない。邪馬台国連合の完全解体と伊都国首脳を滅ぼすことだ。民にはなるべく手は出さん」

「わかりました。ホヒ様。では私は吉野ヶ里に向かいます。」

人質交換は前もって終わった。

これで吉野ヶ里の守りはさらに鉄壁になる一方、アメノホヒの策略も遠慮なくすすめることができる環境がそろったのだ。

アメノホヒは息子を連れ立ち、阿蘇へと向かった。










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