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邪馬台国の滅亡
トシロ出陣!
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「おい、鎧の化け物じゃの」
サルタヒコはトシロの姿を見て微笑んだ。
「そんなこと言ったって!」
「そらそうじゃ、ワシやお前のようなちびっこに似合う鎧などないからの。それも大将の用じゃ。今からじゃ間に合わん」
と、サルタヒコはまた笑った。
修行場の洞窟から急遽呼び出され、追加の派兵と兵糧を送る軍の総大将にトシロは任命された。
もちろん名ばかりの総大将だ。
運搬は宗像の民が担う。トシロの母、タギリヒメの地元の民たちである。宗像の民は親しげにトシロ様、トシロ様と話しかけてくるが、トシロはどう答えて良いのかわからない。
サルタヒコが小さな声で、「良きに計らえ!」と、いうので、トシロは大声で、
「良きに計らえ!」
と、返答するだけである。
そこへキクリヒメがやってきた。母のお付きの女官の長、老女である。
「トシロ様、お久しぶりでございます。私がトシロ様と宗像、筑紫へと同行させていただきます」
トシロはこの女官長がもう一つ苦手である。幼児の頃から叱られてばかりなのである。トシロはキクリヒメに向かって、大きな声で答えた。
「良きに計らえ!」
周りの者はそれを聞いていて大笑いだ。
キクリヒメは筑紫にもいた事がある。イザナミ、イザナギの争いにも関わったと言われるほど老齢だ。サルタヒコと良い勝負だろう。
トシロはおじいちゃんとおばあちゃんに付き添いを受けた七五三のようなモノである。
必ず勝つであろうこの戦をトシロの初戦にしたいという大国主とタギリヒメの親心である。
トシロにしてみれば、良い迷惑だ。
うるさい年寄りと船旅である。もう飽きてしまったのか、鎧兜を脱ぎ捨て、大船に興味津々という感じで眺めている。
沢山の海人たちが荷物や武器を積み込んでいる。
それを嬉しそうな顔をして眺めている。トシロはまだまだ少年なのだ。
サルタヒコとキクリヒメは旧知の間柄らしく、二人で話しこんでいる。
「あートシロ様、そこは危ないよ!」
海人たちに笑顔で注意されて慌てて場所を変える。
まるで遠足にむかう子どものようなトシロだった。
サルタヒコはトシロの姿を見て微笑んだ。
「そんなこと言ったって!」
「そらそうじゃ、ワシやお前のようなちびっこに似合う鎧などないからの。それも大将の用じゃ。今からじゃ間に合わん」
と、サルタヒコはまた笑った。
修行場の洞窟から急遽呼び出され、追加の派兵と兵糧を送る軍の総大将にトシロは任命された。
もちろん名ばかりの総大将だ。
運搬は宗像の民が担う。トシロの母、タギリヒメの地元の民たちである。宗像の民は親しげにトシロ様、トシロ様と話しかけてくるが、トシロはどう答えて良いのかわからない。
サルタヒコが小さな声で、「良きに計らえ!」と、いうので、トシロは大声で、
「良きに計らえ!」
と、返答するだけである。
そこへキクリヒメがやってきた。母のお付きの女官の長、老女である。
「トシロ様、お久しぶりでございます。私がトシロ様と宗像、筑紫へと同行させていただきます」
トシロはこの女官長がもう一つ苦手である。幼児の頃から叱られてばかりなのである。トシロはキクリヒメに向かって、大きな声で答えた。
「良きに計らえ!」
周りの者はそれを聞いていて大笑いだ。
キクリヒメは筑紫にもいた事がある。イザナミ、イザナギの争いにも関わったと言われるほど老齢だ。サルタヒコと良い勝負だろう。
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必ず勝つであろうこの戦をトシロの初戦にしたいという大国主とタギリヒメの親心である。
トシロにしてみれば、良い迷惑だ。
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沢山の海人たちが荷物や武器を積み込んでいる。
それを嬉しそうな顔をして眺めている。トシロはまだまだ少年なのだ。
サルタヒコとキクリヒメは旧知の間柄らしく、二人で話しこんでいる。
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