大陰史記〜出雲国譲りの真相〜

桜小径

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邪馬台国の滅亡

狗奴国の動き

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狗奴国では、大騒ぎになっていた。あの強敵、邪馬台国連合が崩壊し、吉野ヶ里に籠っているという。

さらに攻めて来た出雲軍と邪馬台国との交渉の立ち合い人を狗奴国から出して欲しいと双方から連絡が入ってる。

狗奴国王は乗り気ではない。

いずれが勝っても次の大敵になるのは決まってるからだ。

「断ろう」

狗奴国王は言った。それを聞いたキクチヒコは暫く決断をお待ちくださいと奏上した。

「何故だ。勝手に戦わせて漁夫の利を得るのが上策であろう?」

「いえ、出雲の勝利は目に見えております。このままだと、筑紫島北部は完全に出雲の支配下に入り、今後我らが北上することができなくなります。」

「うむ。我らの国土は火の山の噴火のおかげで作物が育ちにくい。それで日向を手に入れたのではないか?」

「邪馬台国を手に入れましょう!」

狗奴国王とキクチヒコは声がした方に視線を向けた。

ヒルコである。この小男は何を言い出すのか。狗奴国王はどうやって?とヒルコに聞いた。ヒルコは改めて柏手をうちあいさつの口上を述べた。

「会見の場所はあの阿蘇です。以前キクチヒコ将軍がツヌガアラシトの邪魔をうけ、撤退した因縁の土地。まず、この阿蘇を落とします。主力は吉野ヶ里なので今回は簡単に落ちるでしょう。筑紫島北部への道筋は確保しておくべきでしょう。」

「それは分かるが阿蘇までしかいけないのならこの前と同じ結果だ。アラシトが出雲に変わるだけだろう」

「ですから、出雲と共闘して邪馬台国を完膚なきまで叩き潰すのです。」

「そんな事が可能か?」

「こちらにも、出雲から誘いが来ております。そうですね?キクチヒコ将軍」

「そうだ、大国主名義の立ち合いの願いの翌日にアメノホヒの名で、オモイカネを撃ち果たして、筑紫島を狗奴国に預けるのが出雲の策だと。怪しい誘いです。」

「これは本気ではないでしょうか?」

「何故そう思う」

キクチヒコは強めに詰問した。

「天孫族の集約です。」

「天孫族を集めるというのか?」

「はい。私ヒルコが思うに、この地、日向を天孫族の子孫たちに返して、それ以外の筑紫島を狗奴国が取るのです。」

「そんな事ができるか!」

「できまする。邪馬台国連合の王族はみんなオモイカネから離れて降臨の土地日向で暮らしたいというのが本音です。」

「ばかな?」

「失礼します。二、三の若者をこの場に呼んで良いでしょうか?」

「イリヒコか?」

「そうです。大和から落ちてきたのを保護しております。彼は天孫族の本流、イワレヒコの跡継ぎです。かなりの傑物です。彼を狗奴国の傀儡の王として、筑紫島に散らばった天孫族を集めさせます。」

「狗奴国の下風に立つ日向を作る」

「そうです。軍隊は持たせません。名目上、天孫族の国にして天孫族を集めます。」

イリヒコが、口を開いた。

「狗奴国王様、天孫族を囲うとお考えください。我らは狗奴国には逆らいません。」

「何故じゃ?筑紫島各地の王族として散らばっておる奴らもそれを了承しておるのか?」

「いえ、私に軍隊をお預け下さい。天孫族の新天地を日向に再度作り上げたいのです。」

「そんな事をしてどうする?」

「私は日向から大和に攻め上がるつもりです。」

「なんだと!」

「まず狗奴国の邪馬台国占領と出雲の筑紫島からの撤退を実現します。それができれば日向を私に下さい。大和に攻め上がるその日までで良いのです。

「どうやるつもりじゃ?」

「とにかく、出雲まかせにしている邪馬台国の支配を狗奴国王におまかせしたい。その後、私の東遷に手助けをお願いしたい」

「そんなムシの良い事を」

「近いうちにこの案ができなければ、私の首をお切りください」

イリヒコは柏手を打って、狗奴国王の前にひざまづいた。




























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