大陰史記〜出雲国譲りの真相〜

桜小径

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邪馬台国の滅亡

前哨戦、タケミナカタvsフツヌシ

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アメノホヒとオモイカネらの会談が決まった翌日、ついにタケミナカタが豊の国に上陸した。

邪馬台国のフツヌシも当然その情報を得ていた。フツヌシは邪馬台国最強と名高い将軍である。

タケミナカタを意識するのは当然である。将軍としてより、一人の武人としてタケミナカタとあいみまえたいのだ。

オモイカネの制止を振り切ったフツヌシは、豊の国に向かって、いやタケミナカタのもとへと旅だった。



豊の国についたタケミナカタは、聞いていた豊の国の印象と違い、廃れていることに、驚いた。

火神子が暗殺された時に起こった阿蘇の噴火の影響をうけ、そこから全くといって復興できてないのが現状だ。

兵糧の一部を物乞いたちに寄付してやったタケミナカタは、民衆から崇められた。到着直後にはフツヌシがこっちに向かってきている情報を得ていた。

ここで迎え打つつもりであったが、この荒廃した豊の国では不憫だと思ったタケミナカタは、フツヌシがやってくるであろう筑紫の街道を吉野ヶ里に向かって少数の騎馬で駆けた。


一方のフツヌシも軍を率いての移動では出雲軍そのものとぶつかってしまうのを避け、少数精鋭の騎馬隊でタケミナカタを迎え撃とうと出発した。



お互い駆けで出雲軍が駐留している糸島の真南にあたる旧の奴国でかちあった。

街道で待ち構えたフツヌシがまず声をかける。

「やあやあ我こそは天孫族に連なる邪馬台国の大将軍フツヌシなり、そこへ行くは、出雲の大将軍タケミナカタ殿とお見受けする。」

「そうだ我こそは出雲大国主の一子、最強八千矛軍を統べるタケミナカタなり。風前の灯火と聞く邪馬台国の将軍が何のようか」

タケミナカタは愛馬に跨り、得意の長槍を携えてそう答えた。

「まつりごとのことはオモイカネ殿にまかせておる。我は是非、タケミナカタ殿と手合わせ願いたい!」

「良いだろう、ちょうどこのあたりには人家もない。兵は控えさせ、一対一の戦いを望む!」

「勿論!」

二人は馬を降り、まずは長槍で撃ち合う、渡り合うこと五十合、互角である。

「おおおお!」

控えている兵士たちから感嘆の声が漏れ出た。

長槍では決着が付かないとみた二人は、長槍を投げ捨て、お互いの自慢の鉄剣にもち、改めて戦いの姿勢に入った。

剣の撃ち合いでもほぼ互角、大陸製の鉄剣と出雲で打った鉄剣の戦いだ。

鉄剣でも撃ち合うこと六十合、お互い、譲りはしない。

タケミナカタに比べやや細身のフツヌシが後ろに飛んで距離をとった。

「さすが、出雲最強の男、痺れるぞ!」

「なあにまだまだ」

と、おそらく体力では上回るタケミナカタが出雲製鉄剣を振り上げて、一気に間を詰めて一合わせした。

「グィン」

と、激しい剣のぶつかり合う音がした。

その時、大陸製鉄剣は脆くも真っ二つに割れてしまった。

「得物を変えよ!水入りだ!」

タケミナカタはフツヌシに向かって叫んで、構えを崩した。

兵士たちは敵味方合い乱れてこの戦いに見入っており、声援も送っている。

なかなかこれだけの戦いは見られないのだ。

フツヌシは部下が差し出してきた伊都国で打った鉄剣を手にした。

そこへ、糸島方面から早馬が走ってきた。

「あいやまたれよ」

早馬の乗り手はどうも出雲の伝令である。タケミナカタの前にでて、戦いを中断するように訴えた。大国主直々の命令だそうだ。すぐに出雲軍に合流するようにと一気に伝令は叫んだ。

しばらく遅れて吉野ヶ里からも伝令が来た。同じくフツヌシに帰還するように天孫族長老のクマノクスヒの名での命令である。

タケミナカタはフツヌシに言った。

「せっかくの楽しみに邪魔が入ったな。出雲軍は大国主様の軍、ここは引かせてもらう!」

「良いだろう。こちらも天孫族の長老どのよりの伝令だ。無視するわけにいくまい」

「フツヌシよ、改めて、戦場で会おう!」

タケミナカタは愛馬に跨り、出雲軍の本隊を目指して駆けて言った。

「フツヌシ様」

伝令は恐る恐る興奮状態のフツヌシに声をかけた。

「強いぞ、あの男。あのまま続けていたら、やられてたかもしれない。出雲八千矛軍、侮るべからず」

と、一言呟いて、精鋭部隊を率いて吉野ヶ里方面に退いて行った。

最強同士の一騎討ちは、ひとまず終了したのだった。













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