大陰史記〜出雲国譲りの真相〜

桜小径

文字の大きさ
上 下
134 / 179
邪馬台国の滅亡

大和

しおりを挟む
タカヒコいや大物主は、朝廷のつとめの終えて一息ついていた。

思っていたより大物主の仕事は忙しい。カツラギタカマヒコ、イセツヒコそして出雲から連れてきたタニグク、加茂の民、そして結局帰順して神託を担当するコヤネその子タケミカヅチ、地元のタカクラジ、トミビコら、客分として残留してくれているオオナンジらの重臣と方針を決める。

まもなく、播磨国からワカヒコ改めホアカリもやってくる。

人材の豊富さは出雲以上かもしれない。朝廷の段取りは先代から引き継いだ三輪の者たちが担当する。

コヤネはタカヒコに逆らったが、東国代表でもある事も考え、深く謝罪しタケミカヅチと共に帰順を許されたのだが、もう一つ信用がおけない。

ミカヅチはまだコヤネの術から抜けてないどころか、より一層、コヤネの息子として動いている。

ナガスネヒコの代わりに朝廷入りしたトミビコは二人をかなり警戒しており、常に見張りをつけている。

新しい大物主が誕生し、一見平和に見える大和もその内実は一枚岩では無さそうだ。

イリヒコたちの残した女達を見舞う。マキヒメは相変わらず一言もタカヒコと言葉をかわさないが、お付きの女官たちはタカヒコに媚び諂ってくる。

「難しい」

タカヒコがポツリと呟いたのをタカマヒコとタニグクは聞き逃さなかった。

「大物主様、これから纏向はじめ大和中の者たちもやってまいります。もっと難しくなりますよ」

と、タカマヒコは言う。

タニグクはまあ肩肘張らずにと忠告した。

イセツヒコは、トミビコと共に大和軍の再編成を担当する。

オオナンジは大和近辺の豪族たちとの折衝を任された。大物主の新体制はいよいよ本格的に動きだしたのだ。

そんないま、東国からの貢ぎが尾張の津島あたりで滞留しているという。タケミカヅチが派遣される事となった。

邪馬台国攻めのため、熊野あたりの水運を利用しているので、船が足らないのであろう。

タケミカヅチはタカクラジと共に紀伊へ向かう事になった。

タカヒコはホアカリとアカルヒメの到着を待ち望んでいた。二人と会えば少しは気持ちも晴れるだろう。

初代大物主が残した国作りの知恵がたまった書物も勉強しないといけない。

これは、出雲のスクナヒコナの叡智を書写したものである。

大和は単なる一勢力ではない。もう一つの倭国の中心なのだということがタカヒコもヒシヒシと実感しているのである。

戦地になっている筑紫、出雲が停滞している今、大和が倭国を引っ張っていかねばならない。

三代目の大物主はその思いを更に強くして政務に励むのだった。










しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

新・大東亜戦争改

みたろ
歴史・時代
前作の「新・大東亜戦争」の内容をさらに深く彫り込んだ話となっています。第二次世界大戦のifの話となっております。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

帝国夜襲艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1921年。すべての始まりはこの会議だった。伏見宮博恭王軍事参議官が将来の日本海軍は夜襲を基本戦術とすべきであるという結論を出したのだ。ここを起点に日本海軍は徐々に変革していく…。 今回もいつものようにこんなことがあれば良いなぁと思いながら書いています。皆さまに楽しくお読みいただければ幸いです!

戦争はただ冷酷に

航空戦艦信濃
歴史・時代
 1900年代、日露戦争の英雄達によって帝国陸海軍の教育は大きな変革を遂げた。戦術だけでなく戦略的な視点で、すべては偉大なる皇国の為に、徹底的に敵を叩き潰すための教育が行われた。その為なら、武士道を捨てることだって厭わない…  1931年、満州の荒野からこの教育の成果が世界に示される。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

名残雪に虹を待つ

小林一咲
歴史・時代
「虹は一瞬の美しさとともに消えゆくもの、名残雪は過去の余韻を残しながらもいずれ溶けていくもの」 雪の帳が静かに降り、時代の終わりを告げる。 信州松本藩の老侍・片桐早苗衛門は、幕府の影が薄れゆく中、江戸の喧騒を背に故郷へと踵を返した。 変わりゆく町の姿に、武士の魂が風に溶けるのを聴く。松本の雪深い里にたどり着けば、そこには未亡人となったかつての許嫁、お篠が、過ぎし日の幻のように佇んでいた。 二人は雪の丘に記憶を辿る。幼き日に虹を待ち、夢を語ったあの場所で、お篠の声が静かに響く——「まだあの虹を探しているのか」。早苗衛門は答えを飲み込み、過去と現在が雪片のように交錯する中で、自らの影を見失う。 町では新政府の風が吹き荒れ、藩士たちの誇りが軋む。早苗衛門は若者たちの剣音に耳を傾け、最後の役目を模索する。 やがて、幕府残党狩りの刃が早苗衛門を追い詰める。お篠の庇う手を振り切り、彼は名残雪の丘へ向かう——虹を待ったあの場所へ。 雪がやみ、空に淡い光が差し込むとき、追っ手の足音が近づく。 早苗衛門は剣を手に微笑み、お篠は遠くで呟く——「あなたは、まだ虹を待っていたのですね」 名残雪の中に虹がかすかに輝き、侍の魂は静かに最後の舞を舞った。

処理中です...