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邪馬台国の滅亡
決闘
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壇上に座る狗奴国王そしてキクチヒコらの首脳をはじめ、兵士たちも格闘用に作られた土俵の回りに集まり、2人の入場をまっていた。
予想というか賭けでは、クマソタケルが9対1で勝利の予想が出ている。
身内贔屓もあるのだろう。
応援も当然、クマソタケルに集中している。ヒルコやカムヤイら橿原以来の仲間たち、そしてタヂカラヲ、淡路から合流した元の天之日矛の面々らだけだが、イリヒコを応援すると絡まれそうなので大人しくしている。
歓声が怒涛のように響く。
クマソタケルが入場してきたのだ。
狗奴国だけでなく、各勢力とも相撲の大会は行われている。戦場の楽しみのひとつである。
ヒルコはカムヤイに問いかけた。
「イリヒコ殿の実力は?」
「なかなかですよ。早業がお得意です」
「早業とは?」
「まあご覧になればわかります。ヒルコ様はきっと大儲けなさるでしょう」
と、カムヤイはにこやかに笑った。
そうこうしてるとイリヒコが土俵に登った。ヤジが飛ぶ
「このヒョロヒョロが相手になるのか!」
まわりは「そうだ、そうだ」と、どっと受ける
いよいよ、開幕である。
クマソタケルはいつもそうしているのか、中腰になって両手を前に出して構えた。
イリヒコは身体を斜にかまえた。
キクチヒコが立ち上がる。緊張が周囲を包む。
「皆にも紹介する。大和は橿原からのミマキイリヒコ、そして我らが英雄のクマソタケルだ」
2人は構えたまま手をあげる。
「用意はよいようだな。」
キクチヒコは壇上から合図を送る。
「はじめ!」
クマソタケルはジリジリと前に出た、その瞬間、イリヒコは華麗なステップを踏みクマソタケルの背後に回った。
クマソタケルが振り返ったその瞬間、イリヒコのハイキックがクマソタケルの側頭部にクリーンヒットした。
よろけるクマソタケル。
一瞬で間を詰めたイリヒコはアッパーカットのように拳を固め、クマソタケルの顎を思い切り殴った。
クマソタケルはその場に崩れ落ちた。
得意の組み技も披露することなく、クマソタケルは破れたのである。
土俵まわりからはどよめきとブーイングがまきあがるが、クマソタケルは倒れたままである。
所謂、ノックアウト状態だ。二度にわたる頭部への打撃で意識がとんでしまったのだ。
壇上に座って観ていた狗奴国王もキクチヒコさえも思わず立ち上がり呆然としていた。
カムヤイらが囃し立てる。
「イリヒコさまの勝ちだ!」
まさに早業だった。いきなりの蹴り技がクリーンヒットしたあと、既にクマソタケルの意識はなかったろう。
それでも、敵を探して振り返った。その闘争心は見事だった。
こうして、イリヒコ達の顔見せ興行は終わった。大半のものはあっという間の決着に納得がいかないところだったが肝心のクマソタケルがたちあかれないのだから仕方ない。
この相撲でイリヒコの名は狗奴国にも轟いたのだった。
予想というか賭けでは、クマソタケルが9対1で勝利の予想が出ている。
身内贔屓もあるのだろう。
応援も当然、クマソタケルに集中している。ヒルコやカムヤイら橿原以来の仲間たち、そしてタヂカラヲ、淡路から合流した元の天之日矛の面々らだけだが、イリヒコを応援すると絡まれそうなので大人しくしている。
歓声が怒涛のように響く。
クマソタケルが入場してきたのだ。
狗奴国だけでなく、各勢力とも相撲の大会は行われている。戦場の楽しみのひとつである。
ヒルコはカムヤイに問いかけた。
「イリヒコ殿の実力は?」
「なかなかですよ。早業がお得意です」
「早業とは?」
「まあご覧になればわかります。ヒルコ様はきっと大儲けなさるでしょう」
と、カムヤイはにこやかに笑った。
そうこうしてるとイリヒコが土俵に登った。ヤジが飛ぶ
「このヒョロヒョロが相手になるのか!」
まわりは「そうだ、そうだ」と、どっと受ける
いよいよ、開幕である。
クマソタケルはいつもそうしているのか、中腰になって両手を前に出して構えた。
イリヒコは身体を斜にかまえた。
キクチヒコが立ち上がる。緊張が周囲を包む。
「皆にも紹介する。大和は橿原からのミマキイリヒコ、そして我らが英雄のクマソタケルだ」
2人は構えたまま手をあげる。
「用意はよいようだな。」
キクチヒコは壇上から合図を送る。
「はじめ!」
クマソタケルはジリジリと前に出た、その瞬間、イリヒコは華麗なステップを踏みクマソタケルの背後に回った。
クマソタケルが振り返ったその瞬間、イリヒコのハイキックがクマソタケルの側頭部にクリーンヒットした。
よろけるクマソタケル。
一瞬で間を詰めたイリヒコはアッパーカットのように拳を固め、クマソタケルの顎を思い切り殴った。
クマソタケルはその場に崩れ落ちた。
得意の組み技も披露することなく、クマソタケルは破れたのである。
土俵まわりからはどよめきとブーイングがまきあがるが、クマソタケルは倒れたままである。
所謂、ノックアウト状態だ。二度にわたる頭部への打撃で意識がとんでしまったのだ。
壇上に座って観ていた狗奴国王もキクチヒコさえも思わず立ち上がり呆然としていた。
カムヤイらが囃し立てる。
「イリヒコさまの勝ちだ!」
まさに早業だった。いきなりの蹴り技がクリーンヒットしたあと、既にクマソタケルの意識はなかったろう。
それでも、敵を探して振り返った。その闘争心は見事だった。
こうして、イリヒコ達の顔見せ興行は終わった。大半のものはあっという間の決着に納得がいかないところだったが肝心のクマソタケルがたちあかれないのだから仕方ない。
この相撲でイリヒコの名は狗奴国にも轟いたのだった。
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