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西遷の章

土佐の戦い

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タカヒコの討伐隊は早船で土佐の港に先着していた。そこで、大物主の詔を見せて兵士を集めて数日間、待ち構えていた。

イリヒコを乗せたタヂカラヲを船は土佐の港に入港しようとき、港の狭い部分から矢の雨を降らされ慌てて逃げだし、大洋に船を戻した。

「近づけませんな」

タヂカラヲは力無くイリヒコにつぶやいた。

「ここに入らず筑紫へ向かうわけにはいかないのですか?」

「水と食料がたりません。ここで手にいれておかないと。淡路では全てシイネツヒコが抑えておりましたので」

「筑紫まで何日かかる?」

「風によりますが、あと4、5日はかかります。」

「それはつらいな」

イリヒコはくちびるを噛んだ。

「他の港で手に入れるしかあるまい」

碇を下ろし、しばし沖にとどまって今後の方針を話しあっているときだった。

西から大型の海洋船が来るのが見えた。狗奴国の旗をはためかせている。タヂカラヲから見れば敵国である。

イリヒコ以下は戦闘準備を整えて、狗奴国船を待ち受けた。

そうこうしていると土佐の港からも討伐隊の船団が向かってきた。

万事休す。

とりあえず、近い土佐からの船へ矢を射掛ける。向こう側からも矢が飛んでくるが、まだ距離がある。

「いちかばちか、狗奴国の船に助けを求めよう。このまま大物主の船隊と戦ってもやがてやられるのは目にみえてる」

「そうですな」

タヂカラヲは碇を上げ、西へと船を動かした。遠く見えていた狗奴国の船にもあと少しで近づくだろう。

下手をするとハサミ撃ちに合う。

タヂカラヲはそれを恐れていた。
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