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西遷の章

日向へ

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イリヒコ達が、船を探している最中、大和大物主に就任したタカヒコは多忙な毎日を送っていた。

何しろ東国からの税が集まってくるのだ。それを出雲に送るとモノ、大和で使うもの、周辺に配るもの、などなどの差配とその決定をせねばならない。

股肱之臣に当たるのは出雲から連れてきた加茂の者たちだけである。

大半の大和人にとってタカヒコはまだまだ大事なお客さんではあるが「主」ではない。

腐らない金属器、土器は出雲や周辺地域の実力者へ、食物はその大半を大和に備蓄し、使用することになる。

食料の一部は周辺地域の王達へと送る。

まだまだ世は安定していないので山賊などもたくさんいる。それらを帰順させるために衣食の財を配らねばならない。

大物主は忙しいのだ。

そこで、タカヒコは土地で出雲からの途上で配下にしたタカマヒコを重用した。

葛城に赴任させ、統治への手助けとなるようにしたのだ。葛城はタカマヒコの出身地でもある。うまくやってくれるだろう。

そう考えたタカヒコはタカマヒコと一緒にナガスネヒコら、元々の大和人から薫陶を受けた。

帝王学に似たモノは出雲で学んでいる。それをここ大和で発動させるのだ。

「イリヒコらにまかれました」

エシキオトシキら、追撃した者たちから報告が上がってきた。

マキヒメら女性は紀伊で捕縛して帰ってきたのだ。

「何?逃げられたと?」

「申し訳ない。トベの村で泳がせておいたのですが、女性を置いて脱出されてしまいました」

「海だな、」

タカヒコはアゴに手をやり考えながら、呟いた。そして大きな声で地図を求めた。

地図を開いたタカヒコは淡路島というモノを改めて意識した。

その先にある伊予の二名島つまり四国も。

「どうしましょう?」

エシキオトシキたちとナガスネヒコは新しき大物主の気量を図るようにタカヒコの顔を覗きこむ。

タカヒコは地図の上に指を這わせ、考えこんだ。そして指を止めたまま言った。

「ここだ!ここへ先回りせよ!奴らもバカではあるまい。こちらの味方の多い瀬戸内は通らない筈だ」

と、その場にいた全員がタカヒコのいや大物主の指し示した場所に注目した。

大物主の指は、「土佐」の港を指していた。

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