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西遷の章

ヒルコの行方

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カムヤイは唸った。

「スクナヒコナがヒルコの正体というか関係者なら出雲に?」

「今もスクナヒコナの知恵の伝承はなされているとか」

イリヒコはそう答えた。さらに

「出雲にヒルコの子孫が?」

「かもしれぬ」

カムヤイは答えた。

それを聞いていたドンガメが口を挟んだ。

「いや、ヒルコ様は日向におられるはずです」

「日向?」

「我々が向かう先も日向。」

イリヒコは奇妙な偶然に気色ばんだ。

「しかし、何故ヒルコは日向に?」

ドンガメはそれはわからないと答えた。

「その答えも我らが日向に迎えば、わかるだろう」

イリヒコは日向に向かうことを完全に決定したのだ。


ヤマトや出雲に気取られないように日向に向かうなら伊予の二名島の南側の海を渡らねばならない。

瀬戸内と違って大洋だ。

幸い、イリヒコたちは淡路の南側にいる。このまま瀬戸内の海人たちに気づかれないように行くには土佐を目指す必要がある。

しかし土佐には何のつながりもない。

ドンガメに二名島の南に行ける船を求めてくるように言い含め、淡路の海人たちに接触させることにした。

淡路の海人たちも決して一枚岩ではあるまい。

ドンガメは集落へと向かった。

果たして、四国へと渡してくれる海人は見つかるのか?

しかしこれで単なる逃亡者の群れだったイリヒコたちには目指す方向が見えてきたのだった。

筑紫島の南、日向。今は亡きイワレヒコの誕生の土地でもある。

イワレヒコらは瀬戸内から河内を目指したが失敗し、紀伊の国から上陸した。

イリヒコたちはイワレヒコとは違う海の道を行く必要があるのであった。
















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