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西遷の章
イザナギイザナミ
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ドンガメの案内で山中へと獣道を進むと、祠を発見した。ドンガメはこれがヒルコの社だと言った。小さな石造りの祠である。石は一面に一枚使われている。移動させたり壊すのは困難な作りである。この場所からは淡路島の南東部方向が見渡せるようになっている。イリヒコらは暫らくその絶景を眺めていた。海には切り立った大岩が聳え立っている。古くからの言い伝えである「天の御柱」とはその大岩のことではないかとイリヒコはぼんやりと思った。ドンガメの指さす社を一瞥した。
「社というよりは祠だな」
イリヒコは社にそう呟きながら近づいた。
「この中にヒルコ様の勾玉が安置されておりました」
といいながら、ドンガメは祠の前にある石棒をグイと動かした。すると強固な一枚岩が開いた。中を除くと竹簡が数枚あった。イリヒコはそれを取り出しカムヤイに渡した。カムヤイは竹簡を読み込むと呟いた。
「イザナギノミコトの書付のようです。妻のイザナミの目を盗み長子のヒルコ様をこの集落に隠した事、長ずればこの辺りの王として育てるように書いてあります。」
ヒルコはイザナギ・イザナミの最初の子神で、決まりを破り妻神から声をかけて夫婦の契りを結んだため、葦の舟にのせて流されたといわれる神の名である。
「なんと?ヒルコは生きていたと」
「この書付を読めを真実とすれば流したというより、隠したのでしょう」
「隠した?何のために?」
「そこまではわかりませんが、何かしらの目的で生まれたばかりの我が子をこの集落に隠したのでしょう」
「初めての子を失った母神を思うと」
「もしや不具の子であったのやもしれませぬ。しかしこの集落の王として育てよとも書かれている」
「この集落に何か大事なものが?」
「そうかもしれません」
イリヒコはドンガメに問いただした。
「ヒルコはこの集落で育てられたようだ。何か記憶しておらぬのか?」
ドンガメは幼い頃に河内に移ったためはっきりした記憶はないので力なく首を横に振った。その様子を見たイリヒコはほかに何かその後を知れるものはないかと祠の中へと松明をもち進んだ。するとさの奥にもう一つ小さな石の扉があるのを見つけた。
「カムヤイ殿、まだ奥に何かあるようです。」
と、カムヤイらを呼び寄せた。カムヤイと二人で力任せに石の扉を開けるとそこにはもう一つ竹簡があった。カムヤイは竹簡を広げ目を細めた。そこには漢字が二文字のみ記されていたいた。
「出雲?」
カムヤイの肩越しに覗いたイリヒコはカムヤイより先にその二文字を口にした。竹簡には大きな文字で出雲とだけ記されていたのだ。こんなところで出雲の文字を見たことにカムヤイもイリヒコも驚きで続く言葉が出ない。出雲の分身である大和の国から逃げ出した二人は絶句した。その声を聞いていたドンガメは叫んだ。
「エビスさま!」
「なんだそれは?」
「その扉をエビス様とお呼びしておりました。出雲に繋がっていると。。。」
「扉が出雲へ繋がっているだと?」
「はい。そのように教えられておりました」
カムヤイはそのやり取りを聞きながら一言呟いた。
「小さな船で流される・・・小さな船でやってくる・・・。スクナヒコナの大神か」
「スクナヒコナというと初代の大国主とともに出雲の国造りをしたという?」
「そうです。偉大なる知識を以て大国主を助けたとされております」
「つまりカムヤイどのは、ヒルコとはエビスとも呼ばれるスクナヒコナ神だと?」
「いや、そこまで直接的なものではないでしょう。しかし気になる符号ではあります」
「イザナギイザナミの子は、筑紫の初代ヒミコ、出雲の初代の大国主ことスサノヲ、そして紀の国でイザナミを祀るツキヨミ。。。」
「彼ら三貴子の兄にあたる神がヒルコ」
「ヒルコの国は?」
「ないとされてるが、時代的には倭国の根本ができる頃に生きていたことになる」
「国造り?」
「スクナヒコナはもしや?」
カムヤイはヒルコが健康で生きていたのではないかと思いはじめている。船に乗せられ、流されたとされる彼は海人たちに育てられ大陸まで渡り大陸の知識をら持ち帰ったのではないか?
その故事がスクナヒコナの伝承として倭国各地に遺されているのではないかと彼は思った。いずれにせよ、もっともスクナヒコナの伝承が濃いのは出雲である。
イザナミのヒマナコと呼ばれたスサノヲ、そしてツキヨミはイザナミの影響をうけている。一方のアマテラスつまりヒミコはイザナギの後継者であるのは明白だ。
黄泉の国の出口で決裂した夫婦神。国生みの夫婦神は何を倭国に遺したのであろうか?
アマテラスがイザナギ派とすれば、ヒルコ、スサノヲ、ツキヨミをイザナミ派。夫婦神は切磋琢磨するために子孫を各地にばら撒いたのか?
将来、火種を生むことになるであろうに、、、大きく分ければ自分たちはイザナギ派である。出雲から播磨、淡路、大和そして木の国にわたる広大な、敵を平らげる必要がある。
「カムヤイ殿、なにか?」
と、イリヒコは考えこんでいるカムヤイに問いかけた。
「社というよりは祠だな」
イリヒコは社にそう呟きながら近づいた。
「この中にヒルコ様の勾玉が安置されておりました」
といいながら、ドンガメは祠の前にある石棒をグイと動かした。すると強固な一枚岩が開いた。中を除くと竹簡が数枚あった。イリヒコはそれを取り出しカムヤイに渡した。カムヤイは竹簡を読み込むと呟いた。
「イザナギノミコトの書付のようです。妻のイザナミの目を盗み長子のヒルコ様をこの集落に隠した事、長ずればこの辺りの王として育てるように書いてあります。」
ヒルコはイザナギ・イザナミの最初の子神で、決まりを破り妻神から声をかけて夫婦の契りを結んだため、葦の舟にのせて流されたといわれる神の名である。
「なんと?ヒルコは生きていたと」
「この書付を読めを真実とすれば流したというより、隠したのでしょう」
「隠した?何のために?」
「そこまではわかりませんが、何かしらの目的で生まれたばかりの我が子をこの集落に隠したのでしょう」
「初めての子を失った母神を思うと」
「もしや不具の子であったのやもしれませぬ。しかしこの集落の王として育てよとも書かれている」
「この集落に何か大事なものが?」
「そうかもしれません」
イリヒコはドンガメに問いただした。
「ヒルコはこの集落で育てられたようだ。何か記憶しておらぬのか?」
ドンガメは幼い頃に河内に移ったためはっきりした記憶はないので力なく首を横に振った。その様子を見たイリヒコはほかに何かその後を知れるものはないかと祠の中へと松明をもち進んだ。するとさの奥にもう一つ小さな石の扉があるのを見つけた。
「カムヤイ殿、まだ奥に何かあるようです。」
と、カムヤイらを呼び寄せた。カムヤイと二人で力任せに石の扉を開けるとそこにはもう一つ竹簡があった。カムヤイは竹簡を広げ目を細めた。そこには漢字が二文字のみ記されていたいた。
「出雲?」
カムヤイの肩越しに覗いたイリヒコはカムヤイより先にその二文字を口にした。竹簡には大きな文字で出雲とだけ記されていたのだ。こんなところで出雲の文字を見たことにカムヤイもイリヒコも驚きで続く言葉が出ない。出雲の分身である大和の国から逃げ出した二人は絶句した。その声を聞いていたドンガメは叫んだ。
「エビスさま!」
「なんだそれは?」
「その扉をエビス様とお呼びしておりました。出雲に繋がっていると。。。」
「扉が出雲へ繋がっているだと?」
「はい。そのように教えられておりました」
カムヤイはそのやり取りを聞きながら一言呟いた。
「小さな船で流される・・・小さな船でやってくる・・・。スクナヒコナの大神か」
「スクナヒコナというと初代の大国主とともに出雲の国造りをしたという?」
「そうです。偉大なる知識を以て大国主を助けたとされております」
「つまりカムヤイどのは、ヒルコとはエビスとも呼ばれるスクナヒコナ神だと?」
「いや、そこまで直接的なものではないでしょう。しかし気になる符号ではあります」
「イザナギイザナミの子は、筑紫の初代ヒミコ、出雲の初代の大国主ことスサノヲ、そして紀の国でイザナミを祀るツキヨミ。。。」
「彼ら三貴子の兄にあたる神がヒルコ」
「ヒルコの国は?」
「ないとされてるが、時代的には倭国の根本ができる頃に生きていたことになる」
「国造り?」
「スクナヒコナはもしや?」
カムヤイはヒルコが健康で生きていたのではないかと思いはじめている。船に乗せられ、流されたとされる彼は海人たちに育てられ大陸まで渡り大陸の知識をら持ち帰ったのではないか?
その故事がスクナヒコナの伝承として倭国各地に遺されているのではないかと彼は思った。いずれにせよ、もっともスクナヒコナの伝承が濃いのは出雲である。
イザナミのヒマナコと呼ばれたスサノヲ、そしてツキヨミはイザナミの影響をうけている。一方のアマテラスつまりヒミコはイザナギの後継者であるのは明白だ。
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将来、火種を生むことになるであろうに、、、大きく分ければ自分たちはイザナギ派である。出雲から播磨、淡路、大和そして木の国にわたる広大な、敵を平らげる必要がある。
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