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聖徳太子の謎5~用明天皇と蘇我氏そして鬼後編~

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波子「納得できたかい?異端くん??さて話を戻そう。聖徳太子のパパとして有名な用明天皇というのが茨城皇子なのかい?」 

堂田「実はですね。用明天皇には池辺皇子とか大兄皇子という呼び方もあって、一応、系譜の上では茨城皇子とは別人なんですよ。」 

波子「うん?さっきと話が違うじゃないか?」 

堂田「実はですね。日本書紀には茨城皇子が彼の異母姉である磐隈皇女と近親相姦したという記事が載っているんですよ。」

波子「下世話な話まで載せているんだね。日本書紀っていう書物は。。で、それがどうかしたのかい?日本書紀という書物の中の世界ではその茨城皇子と用明天皇つまり池辺皇子は別人なのだろう?」 

堂田「それがですね。池辺皇子がこれまた異母兄敏達天皇の娘、簡単に言うと姪の莵道貝鮹皇女というのを犯したという話もあって・・。このあたり正史では兄弟姉妹の関係が複雑なんですが、この四者が近しい親族だったことは疑いようがないわけですよ。茨城皇子はこの事件が下で失脚してるっぽい。というのはここから先名前が出てこないのですよ。で池辺の方というと彼は大王に即位している。同じような事件を同じような時期に犯しながらこの差は何なのだろうと。。。もしかしてですね、池辺と茨城は同一人物なんじゃないかと。。。」


浪子「なるほど。事件は本当は一回だけで池辺が起こしたけど茨城のせいになっているという事?」


堂田「僕はそう思うんですけどね。まあそういう可能性があるという事。でも二回あったとするなら同時期に二回も『斎王』が犯されて、その任を解かれてる事が異常じゃないかと・・。それも近親者同士、それも相手は斎宮という重責を担う娘なわけですからね。懲りないというなんというか、異常ですよ。」


浪子「そういえば、推古天皇も「アナなんたら」に犯されそうになったとかあったな。」


堂田「穴穂部皇子、この人も天皇候補だったのですが、これに失敗して失脚する運命になります。」

浪子「なんだ!当時の王室はレイプを成功させたら天皇になれるってか?」

堂田「まさかそういうわけではないですが。。。。それに池辺以外はその後失脚してるわけだし。あっ池辺だけが最後まで成功した?で他は途中で邪魔された。磐隈は。。。」


浪子「馬鹿か君は!最後までとか下品きわまりないなぁ。そういう問題じゃないだろう?そんな事当事者にしかわからない。逆に当事者が『最後までやった』と言ってしまえばそれを覆すことはできない。」


堂田「へっ?というと? 」


浪子「もっと明確な答えがでてるだろう?斎宮だよ」


堂田「斎宮が犯された。。。。つまり処女じゃなくなったから?日の神への奉仕なわけだし。。。処女性が重視されたのはわかりますが。」


浪子「馬鹿か君は。処女かどうかなんてこれも自己申告だ。ごまかそうと思えばごまかせる。という事は疑おうと思えば疑えるというとだよ。信仰心が厚いのだから斎宮自身が正直に言ったことは言ったんだろうが、疑いを向けることはいくらでもできるってことが問題なんだよ。」


堂田「そりゃそうですが。。。疑ったってしようがない事でもあるじゃないですか?」


浪子「この前の聖徳太子の話でも出たけどこのころの日本列島の支配者は『日を兄と』したんだろう?」


堂田「中国の史書にはそうあります。それとこれと。。。あっ日の神!!」


浪子「やっと気がついたかい。日を兄としたって事は日の神への奉仕こそ、支配者の義務であり同時に特権なんだ。」


堂田「特権?」


浪子「そうだろう。支配者の上にいる総支配者が日の神だ。その意思を問えるのは斎宮しかいない!」


堂田「あっ。。。。」


浪子「そうだ。日の神への祭祀権を握ったものこそが、「弟」を使って「あめのしたしろしめすおほきみ」つまり後の世でいう『天皇』になれるんだよ。」


堂田「まさか!」


浪子「イワなんたらは茨木に、ウジなんたらは池辺にそれぞれ「犯される」ことによって斎宮の地位を奪われた。」


堂田「ちょっと待ってください。」

といって、堂田は斎宮の一覧を取り出した。


堂田「荳角皇女は継体が、磐隈皇女は欽明が、菟道皇女は敏達が、酢香手皇女は用明がそれぞれ擁立している。」


波子「殺された天皇がいただろう?彼は?」


堂田「崇峻、推古は誰も擁立していません。酢香手は推古の在位中に自ら引いたとあります。聖徳太子が亡くなった年に。その次は天武が擁立した大伯皇女。制度としての斎宮は彼女が初代ということになります。」


浪子「天武といえば、本当の意味での初代天皇だよな。」


堂田「はい。そういわれてますが。」


浪子「初代天皇と初代斎宮は当然同時にできたわけだ。表裏一体だね。これでこの制度は法によって別の次元に無理やり移されたわけだ。「祭」と「政」の分離だね。天武は壬申の乱に勝利することで「政」の実権を握り、日の神への「祭」つまり祭祀権も斎宮を制度化することによって完全に掌握したってことだろう。で、斎宮を天皇の下に持ってきた。崇峻は用明と同列の大王じゃなかったんだ。継体から用明と続く歴代の大王と比べる一段以上下の大王。だから臣下に殺されても誰からも不満が述べられなかった。」


堂田「確かに、大王が暗殺されてるのに動揺は少なそうですが。。。。でもそれは馬子の政治力が強大だったからじゃ?」


浪子「蘇我馬子か。こいつは何者なんだろう?」


堂田「何者って言われても、大臣でしょう。」


浪子「だからその大臣って何だ?偉大だろうがなんだろうが所詮「臣」。臣下なんだろう?そいつが主殺しをしたのに罪に問われないというのはいくら古代でも納得がいかない。」


堂田「そういわれればそうですが。。。。」


浪子「ちょっとその一覧を見せてみろ。」

といって、一覧を受け取って眺める。その一覧には斎宮の読み方と関係者のよみ方にルビがふってある。


浪子「おい。いばらきじゃないじゃないか。」


堂田「は?」


浪子「『うまらき』とルビがふってある。」


堂田「ああそうですね。古代の読みなんでしょう。それが何か?」


浪子「本当に君はどうしようもないね。「うまらき」だよ?こいつが蘇我馬子だろう。しかし織田信長にしても聖徳太子にしてもやたらと馬に縁がある。」


堂田「はぁ?」


浪子「いやそうだ。これは間違いない。馬子の正体は茨城皇子。だからこそこれだけの特権を持っていた。」

堂田「そんな無茶な」

浪子「いいかい。磐隈皇女が斎宮から失脚したのは茨城皇子の手柄なんだよ。つまり馬子の手柄ってわけさ。」


堂田「手柄って強姦がですか?」


浪子「君の思考は停止しているのかい?強姦があったかなかったなんて関係ないと言っただろう。斎宮を失脚させたことが手柄なんだ。で、池辺もそれに習って菟道皇女を斎宮の座から引き釣りおろした。これが欽明敏達王朝の最後だ。ここから用明王朝が始まる。祭(斎宮)政(大王)一致だよ。こうすることで理論的には非の打ち所の無い王権が誕生する。斎宮が前王朝から続くものなら最終決定は日神の祭祀を握る前王朝の人間たちにも計らなければならない。独裁しにくいってわけだよ。用明王朝の称号こそ『アメノタラシホコ』初代が池辺こと用明、二代目が厩戸こと聖徳太子なんだよ。」


堂田「ちょっと待ってください。確かに新唐書では用明がアメノタリシホコであるとされ、続く宋書ではわさわざ聖徳太子の事まで特筆してますが。。。それに用明朝の専属みたいな言い方をしている斎宮の酢香手は推古の時代、といっても聖徳太子の死まで斎宮の座にいます。」


浪子「そりゃそうだろう。用明王朝の後継者は聖徳太子なんだろう。それが死ぬことで斎宮も役目がおわったってわけさ。」


堂田「じゃあ逆に言うと推古は敏達の妻としての影響力があって敏達系王族やその臣下から戴かれて大王位についたわけじゃなく、用明の妹として用明王朝の後継者として立ったと?」


浪子「そりゃそうだろう。独自に斎宮を立てなかったんだから。女性だから斎宮と兼任していたのかもしれないよ。」


堂田「まさかそんな。」


浪子「それに、その推古の地位にしたって、おそらくアメノタリシホコである聖徳太子の死後、緊急的に選択されたんだろう。」


堂田「推古は最高権力者らしく馬子の要請を断ったこともあるほどの人ですよ。」


浪子「何時のことだ。その要請が行われたのは? 聖徳太子の死後じゃあないのか。」


堂田「あっ!!!そうでした。」


浪子「それまで、天皇らしいことはしてるのか?」


堂田「そういわれれば。。。。。馬子に任せただの、聖徳太子に摂政させたとか『丸投げ』みたいな感じも。。」


浪子「そうだろう。聖徳太子は推古が長生きだったから天皇になれなかったということになってるが、違うんだろう。聖徳太子=アメノタラシホコが死んだから老齢を押して推古が立たざるを得なかった。これが実情だろう。」


堂田「ちょっと待った!うまらきが馬子だと言いましたよね。馬子の生年は551年ころ、磐隈は推古の姉は年は合うのか。。」


浪子「推古の姉なのかい?じゃあ磐隈は用明の姉でもあるわけか。なるほど。。。同母関係はまずすぎるってことで標的を交換したのか。馬子と用明、いや、『うまらき』と『いけべ』はかなりの悪友だったのかもしれないね。」


堂田「でも572年には敏達の世になるから19歳以下か。。。でも可能性はあるわけだ」


浪子「現代なら少年犯罪だね。その時代でも子供扱いされて不問に付されたのかもしれないよ。何時の世も家庭を顧みないとこうなるってことだろう。」


堂田「歴史上の大王の家庭を仮説とはいえちゃかすなんて。。。」


浪子「まあ、家庭のことは仮定ってことで。。。。。。。。。」


堂田「お後がよろしいようで。。。。。。。」

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