ジュラシック村

惨劇

戦車内のモニターに映しだされていた映像は、まさに兵士が飲み込まれんようとする場面だ。

リモートカメラでも装着されていたのか、激しい噛音、兵士の叫ぶ声と恐竜の口内そして食道部へのみこまれる様子が映し出されているようだ。

胃カメラによる外科手術の様子を思わせる映像ではあるが、鈍い骨の折れる音、迷彩服がちぎられる場面、そして5体を噛み砕かれ吹き出す血飛沫がカメラにへばりついた時には場数を踏んだ門倉でさえ、怯んだ。

それをこの戦車の主は「どうだ」と言わんばかりの表情を見せながら門倉の顔を覗き込む。

「あんたたちこんな映像どうする気だ！狂った人間たちに高値をとって見せるのか？」

「いやいや、編集してから映画にします」

戦車な主はにこやかに答えた。

狂ってる。

と、門倉は思った。貧富の差とかいう差が人間を狂わせるのか？

それとも狂ってる人間しか金を得られないのか？

おかしい。どう考えても理解が追いつかない。

「こ、こんなモノを映画にだと！人間が食われる場面だぞ！」

やっとの思いで門倉は声を振り絞った。

その様子をなごやかに眺めながら戦車の主は何も答えない。

沈黙が戦車の中を支配する。いや、あちこちのモニターから恐竜の咆哮や何かを食いちぎるような音も、聞こえてくる。

お化け屋敷か、門倉は居た堪れなくなり、戦車を出た。