ジュラシック村

埃まみれの村

マンションから出た私は驚いた。

ズシンという音は、やはり歩く音のようで、音が響くのと同時に埃が巻き起こる。

マンションから見えた家を目指す。

近くと人々が集まりながらも遠巻きに見ているのが埃に巻かれた景色の向こうに見てとれた。

誰も声を発しない。

これが地震や大型自動車の起こした事故の結果なら喧騒の世界が出来上がっているはずである。

見てはいるが、声が出せないのだ。皆、目の前で繰り広げられた場面を理解できないのであろう。

さらに、怪物が逆戻りしてくる可能性もある。

弱肉強食。

という言葉が思い浮かんだ。

肉食獣から見れば、市会議員だろうが、穀潰しであろうが平等だ。

死は平等に訪れる。

集まった弱々しい人間たちは、きっと平等に恐怖を感じているのだろう。

村の北側にはやや低めの山々が控えている。

怪物はおそらく、その山を目指しているのだろう。

怪物の正体が恐竜なら、田舎とはいえコンクリートジャングルになっている中心部よりも、太古から変わらぬ山々や川が過ごしやすいのではないかと私は漠然と思った。

小走りに駆け寄って、集まっている人々の最後尾に並んでる中年の男性に声をかけた。

名前まではしらないが、通勤時間に駅でよく見る顔だからだ。

彼は、真っ青な顔をして振り向いた。

目があったので、相手の言葉を待ったが、黙りこくったままだ。