3 / 4
神仏混淆と鴨長明
しおりを挟む
鴨長明は加茂の社の社家の家柄に生まれ、若い頃は神職につきますが、後に出家して僧となります。
彼の中ではそれは矛盾したことではなく、同じ事だったのです。
仏教と神道を全く別のモノと認識するのは、日本の歴史において明治以降の日本人だけなのではないかと思ったりするのですが、これもまた極論的であり表現の難しいところです。
仏教導入直後の仏は神として、仏教が広まってからは神が仏と同体のモノとして祭祀され続けてきたのです。
それを強引に引き剥がし、仏教と神道と二つのものとしたのは、明治以降の国家神道の導入です。この考えは、仏教寺院の破壊を招く「廃仏毀釈運動」として民間にも広がります。私は未読なのですが島崎藤村の「夜明け前」という小説にこのあたりの時代の民間人の心の動きが綴られているそうです。
もちろんそこまでの熱狂は明治政府も想像していなかったのかもしれません。
しかし、徳川時代は仏、明治は神というような印象操作もあり、明治国家誕生という時代の裂け目は民間の信仰の形にも大きく影響を与えたことは想像できます。
特に形式、祭式の上では大きく変わってしまったのは事実です。
こういう変化は、農民層に対する寺院の人民支配から脱却、という地方政治的、身分階層的変化も伴うわけです。
我々が知っている現行の神社の神というものは、仏の影響や名を剥ぎ取ったものであり日本人の歴史とともに変化し、成長してきた八百万の神々とも微妙に違うものとなっている可能性が高いですが、明治初期の強烈かつ強引な廃仏毀釈を生き抜いた寺院も沢山あるわけですから、逆から考えるとそれら歴史とともに培ってきた神性というものを包括した上で、改めて祭神の名が呼びかえられただけなのかもしれません。
神をどう解釈するか、と、神社に神性があるってことはまた違うものであります。
ただ、今のご祭神、神格、霊性、ご利益、そしてそのご神名など、つまり祭祀の仕方、信仰の捕らえ方というものは古代からずっと同じであったということではないという事も頭の片すみにおきつつ、古代史や歴史を考えることも必要だと思います。
ただもう一つ、忘れてはいけないことは、古代の祭祀、そして古代から連綿と続く祭祀の場は先人たち、そして現代の私たちにとっても神聖なものであった、そして今も大事な場所である。ということです。
先人たちは何も王族や豪族の祖先だから「神」や「社」や「宮」を敬ったわけではなく、そこに「神性を発見」したからこそ祭祀の場を築き、思想や流行りの信仰などいろんな影響をうけ、さまざまな形、形式に変化させつつも、信仰を、祭祀を続けてきたという事もまた事実なのです。
彼の中ではそれは矛盾したことではなく、同じ事だったのです。
仏教と神道を全く別のモノと認識するのは、日本の歴史において明治以降の日本人だけなのではないかと思ったりするのですが、これもまた極論的であり表現の難しいところです。
仏教導入直後の仏は神として、仏教が広まってからは神が仏と同体のモノとして祭祀され続けてきたのです。
それを強引に引き剥がし、仏教と神道と二つのものとしたのは、明治以降の国家神道の導入です。この考えは、仏教寺院の破壊を招く「廃仏毀釈運動」として民間にも広がります。私は未読なのですが島崎藤村の「夜明け前」という小説にこのあたりの時代の民間人の心の動きが綴られているそうです。
もちろんそこまでの熱狂は明治政府も想像していなかったのかもしれません。
しかし、徳川時代は仏、明治は神というような印象操作もあり、明治国家誕生という時代の裂け目は民間の信仰の形にも大きく影響を与えたことは想像できます。
特に形式、祭式の上では大きく変わってしまったのは事実です。
こういう変化は、農民層に対する寺院の人民支配から脱却、という地方政治的、身分階層的変化も伴うわけです。
我々が知っている現行の神社の神というものは、仏の影響や名を剥ぎ取ったものであり日本人の歴史とともに変化し、成長してきた八百万の神々とも微妙に違うものとなっている可能性が高いですが、明治初期の強烈かつ強引な廃仏毀釈を生き抜いた寺院も沢山あるわけですから、逆から考えるとそれら歴史とともに培ってきた神性というものを包括した上で、改めて祭神の名が呼びかえられただけなのかもしれません。
神をどう解釈するか、と、神社に神性があるってことはまた違うものであります。
ただ、今のご祭神、神格、霊性、ご利益、そしてそのご神名など、つまり祭祀の仕方、信仰の捕らえ方というものは古代からずっと同じであったということではないという事も頭の片すみにおきつつ、古代史や歴史を考えることも必要だと思います。
ただもう一つ、忘れてはいけないことは、古代の祭祀、そして古代から連綿と続く祭祀の場は先人たち、そして現代の私たちにとっても神聖なものであった、そして今も大事な場所である。ということです。
先人たちは何も王族や豪族の祖先だから「神」や「社」や「宮」を敬ったわけではなく、そこに「神性を発見」したからこそ祭祀の場を築き、思想や流行りの信仰などいろんな影響をうけ、さまざまな形、形式に変化させつつも、信仰を、祭祀を続けてきたという事もまた事実なのです。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アルファポリスで小説を読まれるようになるには? お気に入り・ポイント・解説などなど
王一歩
エッセイ・ノンフィクション
とある小説投稿サイトで日間ランキング3位になったことがある私の体験談から、『どうすれば自分の投稿した小説が伸びるのか?』を考察・解説する小説になります。
投稿に関する裏技・小ネタなどを紹介できればなと思っております。
※実際にアルファポリスにて別の作品が13位になっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる