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第一話 落とし物を届けに
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―大知―
レッスン所の最寄駅から地下鉄に乗り、三つ目の駅で降りてバスターミナルからバスに乗り換える。
バスを待ちながら悠貴に、今から学生証を届けに大学まで行く事をメッセージで伝えた。すぐに既読がつき、ありがとうございます、と返事がくる。どこで会えば良いか問う返信をしたところで、バスが来たので乗り込む。車内放送で停留所の名前を聞いていると、自分が大学に通っていた頃のことを思い出して少し懐かしくなった。
―アイドルグループ『star.b』としてデビューしてから、もうすぐ一年が経とうとしている。
子役として物心ついた頃から芸能界にいたけれど、この先ずっと芸能界で生きていく決心がつけられず、将来への保険をかけるように大学へ入学した。
大学のサークル活動でダンスに出会って表現する楽しさに気づき、今の事務所のオーディションを受けた。レッスンを積んでデビューが決まってからは、活動に専念するために、大学は中退せざるを得なかった。
ポケットの中でスマホが震えた。悠貴からの返信が来ている。
『大知くん、着いたらカフェテラスまで来て欲しいです』
了解、と短く返して再びスマホをポケットへしまう。バスの外へ視線を向けると、遠目に懐かしい煉瓦造りの正門が見えてきていた。
上着のポケットに手を入れ、パスケースが入っている事を確かめる。手に持っていた方が良いかと思いポケットから出すと、学生証が入っているのとは反対の面に写真が入っている事に気がついた。
オーディションに合格したばかりの頃だろうか、あどけなさの残る笑顔で写る悠貴の隣で控えめに微笑む少年に目が留まる。
どちらかというと吊り目気味な悠貴とは対照的な、たれた柔らかな目尻が特徴的だった。小さい顔に、色の白い肌。派手さはないが、随分と整った顔立ちをしている。業界関係の知り合いだろうか。
見覚えがないからただの地元の友達なのかもしれないが、わざわざパスケースに写真を入れて持ち歩くなんて、相当仲が良いのだろう。
『――〇〇大学前』
車内放送が耳に届く。慌てて降車ボタンを押した。
レッスン所の最寄駅から地下鉄に乗り、三つ目の駅で降りてバスターミナルからバスに乗り換える。
バスを待ちながら悠貴に、今から学生証を届けに大学まで行く事をメッセージで伝えた。すぐに既読がつき、ありがとうございます、と返事がくる。どこで会えば良いか問う返信をしたところで、バスが来たので乗り込む。車内放送で停留所の名前を聞いていると、自分が大学に通っていた頃のことを思い出して少し懐かしくなった。
―アイドルグループ『star.b』としてデビューしてから、もうすぐ一年が経とうとしている。
子役として物心ついた頃から芸能界にいたけれど、この先ずっと芸能界で生きていく決心がつけられず、将来への保険をかけるように大学へ入学した。
大学のサークル活動でダンスに出会って表現する楽しさに気づき、今の事務所のオーディションを受けた。レッスンを積んでデビューが決まってからは、活動に専念するために、大学は中退せざるを得なかった。
ポケットの中でスマホが震えた。悠貴からの返信が来ている。
『大知くん、着いたらカフェテラスまで来て欲しいです』
了解、と短く返して再びスマホをポケットへしまう。バスの外へ視線を向けると、遠目に懐かしい煉瓦造りの正門が見えてきていた。
上着のポケットに手を入れ、パスケースが入っている事を確かめる。手に持っていた方が良いかと思いポケットから出すと、学生証が入っているのとは反対の面に写真が入っている事に気がついた。
オーディションに合格したばかりの頃だろうか、あどけなさの残る笑顔で写る悠貴の隣で控えめに微笑む少年に目が留まる。
どちらかというと吊り目気味な悠貴とは対照的な、たれた柔らかな目尻が特徴的だった。小さい顔に、色の白い肌。派手さはないが、随分と整った顔立ちをしている。業界関係の知り合いだろうか。
見覚えがないからただの地元の友達なのかもしれないが、わざわざパスケースに写真を入れて持ち歩くなんて、相当仲が良いのだろう。
『――〇〇大学前』
車内放送が耳に届く。慌てて降車ボタンを押した。
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