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噂の騎士様のイベントが起きないように頑張るようです
03
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♢ ♢ ♢
「何かしら?」
薄暗い庭園。ほんのり明かりが灯ったのは、庭園の奥の方。私が立っている辺りから50mは離れている場所。
「お邪魔します」
恐怖心よりも好奇心が勝り、私は庭園の中へ足を踏み入れる。恐る恐る近づけば、20mほど進んで何が光っているのか理解した。
「花だわ……」
それは花だった。白薔薇だろうか、淡く黄色く光っていて、とても幻想的だ。庭園の奥の一角にある白薔薇がぼぅと光り輝いている。
「わぁ……」
あまりの美しさに目を見開いた。もっと近くに寄ってみたい。そういった気持ちが働き、足早に近づいて私はあまりの美しい光景に声をあげた。
「すごいですわ!!」
思わず声を上げれば、淡く光り輝く白薔薇の中に佇んでいた人が驚いたように振り返った。
年は、私と同じ年くらいだろうか?大きな二重まぶたの瞳に、整った容姿。はっきり言って、美少年。
今日の社交界に出ていれば、一躍大人気だろう。そして、ご令嬢達がごぞって彼をターゲットにする。それぐらいには整った顔立ちをしている。
でも、どこだろう?どこかで見たような気がする。けれども、思い出すよりも興奮が勝ってしまって、私はまくし立てるように彼に問いただした。
「これ、あなたがやってらっしゃるの?」と。
光り輝く白薔薇を見ながら言うと
「……そうですよ」
突然現れた私に驚いたのだろう。目を大きく見開いていた。けれども、驚いたのも一瞬で彼は一瞬で笑みを浮かべて丁寧に答えた。
「すごく、綺麗ですね!これ、あなたの魔法ですか?」
なんて美しい魔法なのだろうと思った。淡く輝く白薔薇が時折光が強くなったり、弱くなったりを繰り返して、この辺一帯を幻想的な世界に作り上げていた。
「はい。エンチャントの応用ですよ」
何のことはないようにいう彼。
「エンチャントというと強化魔法のことですよね」
確か強化魔法のことをエンチャントというとも言っていたなといつぞやのオリバーの講義を思い出していえば
「よくご存じで」
彼はにこりと微笑んだ。完璧な微笑みだ。そんな彼に興奮が収まらない私は駆け寄って
「素敵な素敵な魔法ですね」
彼に笑いかけた。
「ありがとうございます」
魔法によって白薔薇が光っている。暗闇の中に光る白薔薇。とても幻想的で美しい光景だと思った。
「是非、どのようにしているのか教えてください!」
感動が収まり切らず、思わず彼の右手を取って自分の両手で挟み込んだ。この素敵な魔法を一体どういう原理で行っているのだろうと思ったのだ。
「…………」
そして、少し驚いたように目を見開く彼と目が合った。
(や、やってしまった。つい……)
「あ、ごめんなさい。はしたない真似を」
ぱっと手を離して即座に謝る。魔法に興奮しすぎて我を忘れていた。見知らぬ女に手を取られて不審に思わない人はいない。
けれど彼はというと
「いえ、大丈夫ですよ」
少し驚いたふうであったがふわりと彼は笑った。
「申し遅れました。わたくし、アリア・マーベルと申します」
私は今更ながらではあったが、ドレスを軽くつまみ挨拶をする。先ほどは失礼をしてしまったが正式な礼を取り直す。ミーナやオリバーのおかげである程度のこちらの礼儀は身についた。我ながらもうどこの社交界に出ても大丈夫だと自負はある。
そんなことを考えていれば
「……アリア・マーベル」
私の名前を繰り返して、彼はなぜだか少し考える仕草を取った。そして、どこか怪訝そうな表情を浮かべて私を見る。
(あれ?私、何か失礼な挨拶をしてしまったっけ?)
「何かしら?」
薄暗い庭園。ほんのり明かりが灯ったのは、庭園の奥の方。私が立っている辺りから50mは離れている場所。
「お邪魔します」
恐怖心よりも好奇心が勝り、私は庭園の中へ足を踏み入れる。恐る恐る近づけば、20mほど進んで何が光っているのか理解した。
「花だわ……」
それは花だった。白薔薇だろうか、淡く黄色く光っていて、とても幻想的だ。庭園の奥の一角にある白薔薇がぼぅと光り輝いている。
「わぁ……」
あまりの美しさに目を見開いた。もっと近くに寄ってみたい。そういった気持ちが働き、足早に近づいて私はあまりの美しい光景に声をあげた。
「すごいですわ!!」
思わず声を上げれば、淡く光り輝く白薔薇の中に佇んでいた人が驚いたように振り返った。
年は、私と同じ年くらいだろうか?大きな二重まぶたの瞳に、整った容姿。はっきり言って、美少年。
今日の社交界に出ていれば、一躍大人気だろう。そして、ご令嬢達がごぞって彼をターゲットにする。それぐらいには整った顔立ちをしている。
でも、どこだろう?どこかで見たような気がする。けれども、思い出すよりも興奮が勝ってしまって、私はまくし立てるように彼に問いただした。
「これ、あなたがやってらっしゃるの?」と。
光り輝く白薔薇を見ながら言うと
「……そうですよ」
突然現れた私に驚いたのだろう。目を大きく見開いていた。けれども、驚いたのも一瞬で彼は一瞬で笑みを浮かべて丁寧に答えた。
「すごく、綺麗ですね!これ、あなたの魔法ですか?」
なんて美しい魔法なのだろうと思った。淡く輝く白薔薇が時折光が強くなったり、弱くなったりを繰り返して、この辺一帯を幻想的な世界に作り上げていた。
「はい。エンチャントの応用ですよ」
何のことはないようにいう彼。
「エンチャントというと強化魔法のことですよね」
確か強化魔法のことをエンチャントというとも言っていたなといつぞやのオリバーの講義を思い出していえば
「よくご存じで」
彼はにこりと微笑んだ。完璧な微笑みだ。そんな彼に興奮が収まらない私は駆け寄って
「素敵な素敵な魔法ですね」
彼に笑いかけた。
「ありがとうございます」
魔法によって白薔薇が光っている。暗闇の中に光る白薔薇。とても幻想的で美しい光景だと思った。
「是非、どのようにしているのか教えてください!」
感動が収まり切らず、思わず彼の右手を取って自分の両手で挟み込んだ。この素敵な魔法を一体どういう原理で行っているのだろうと思ったのだ。
「…………」
そして、少し驚いたように目を見開く彼と目が合った。
(や、やってしまった。つい……)
「あ、ごめんなさい。はしたない真似を」
ぱっと手を離して即座に謝る。魔法に興奮しすぎて我を忘れていた。見知らぬ女に手を取られて不審に思わない人はいない。
けれど彼はというと
「いえ、大丈夫ですよ」
少し驚いたふうであったがふわりと彼は笑った。
「申し遅れました。わたくし、アリア・マーベルと申します」
私は今更ながらではあったが、ドレスを軽くつまみ挨拶をする。先ほどは失礼をしてしまったが正式な礼を取り直す。ミーナやオリバーのおかげである程度のこちらの礼儀は身についた。我ながらもうどこの社交界に出ても大丈夫だと自負はある。
そんなことを考えていれば
「……アリア・マーベル」
私の名前を繰り返して、彼はなぜだか少し考える仕草を取った。そして、どこか怪訝そうな表情を浮かべて私を見る。
(あれ?私、何か失礼な挨拶をしてしまったっけ?)
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