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1章 出会ったのは白魔導士
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♢ ♢ ♢
「こ、こ、ここここ婚約者!?」
一拍遅れて私は上ずった声を上げた。顔が熱くなるのがわかった。まるでサウナの中に入ってるかのように暑い。
(え!?今、私、プロポーズされた!?人生初プロポーズ!?……じゃなくて!)
元の世界に戻るって話じゃなかった!?それがどうして私がこの人の婚約者になることに繋がるの!?
(……は、話が見えない)
「ひょ!?結婚するのか!?おばちゃんいい匂いだし、なでなでが気持ちいいからボクは賛成だもんね!」
耳元で嬉しそうな声を出したのはルビーだ。視野の端で耳がぴょんと跳ねたのが見えた。
(どういうつもり?)
意図がわからず私は目の前にいる人物を見返した。すると、『全く……、何回言えばいいんだ。お姉さんだろ?』と呆れながら私の肩に乗っているルビーをひょいっと掴んで自分の肩に再び乗せる。そして、ルビーを1つ撫でてから口を開いた。
「大丈夫だよ、そんなに身構えなくて。本気で結婚するつもりはないからさ」
「本気で結婚するつもりは……ない?」
ますます意味がわからない。じゃあ、何故婚約者になれなどと言ったのだろう。目の前にいる彼は『何から話したらいいか……』と左手の人差し指と親指を自らの顎に当ててから考えるそぶりを見せた。普通の人がすると大したことはない所作もこの人がすると様になる。右耳についてある耳飾りが風に揺れてキラキラとゆらめいている。
「いいかい?」
物思いにふけかけていた私は彼の言葉で我に返った。反射的に、『あ、はい』と頷いた。
(いかん、いかん。顔面偏差値高いなーとか思っている場合じゃない)
「話が前後してしまったけれど、キミはこの世界では異質だ」
「そう……ですね」
「異質って?」
「違うものってことだ」
ふーんと言いながら頷くルビーの頭を白マントの人が撫でる。ルビーはというと気持ちの良さそうに目を細めている。
(違うもの……)
元々この世界の住人でない私は本来ここにあってはいけないのだから。この人の言う通りだ。
「けど、それはキミがチキュウから来た人だからという意味だけではない」
そして彼は真っ直ぐに私を見た。曇りなどない碧眼は空のように透き通っている。至近距離で見つめられ思わず息を飲む。そんな私に
「チキュウ人であるキミには魔法が効かないんだ」
切なげな表情を浮かべて、そう口にした。
その刹那、ササァと風が吹き、草木が音を立てる。濡れた髪から水滴が首筋に落ちたのか、ひんやりとしたものが広がった。
「こ、こ、ここここ婚約者!?」
一拍遅れて私は上ずった声を上げた。顔が熱くなるのがわかった。まるでサウナの中に入ってるかのように暑い。
(え!?今、私、プロポーズされた!?人生初プロポーズ!?……じゃなくて!)
元の世界に戻るって話じゃなかった!?それがどうして私がこの人の婚約者になることに繋がるの!?
(……は、話が見えない)
「ひょ!?結婚するのか!?おばちゃんいい匂いだし、なでなでが気持ちいいからボクは賛成だもんね!」
耳元で嬉しそうな声を出したのはルビーだ。視野の端で耳がぴょんと跳ねたのが見えた。
(どういうつもり?)
意図がわからず私は目の前にいる人物を見返した。すると、『全く……、何回言えばいいんだ。お姉さんだろ?』と呆れながら私の肩に乗っているルビーをひょいっと掴んで自分の肩に再び乗せる。そして、ルビーを1つ撫でてから口を開いた。
「大丈夫だよ、そんなに身構えなくて。本気で結婚するつもりはないからさ」
「本気で結婚するつもりは……ない?」
ますます意味がわからない。じゃあ、何故婚約者になれなどと言ったのだろう。目の前にいる彼は『何から話したらいいか……』と左手の人差し指と親指を自らの顎に当ててから考えるそぶりを見せた。普通の人がすると大したことはない所作もこの人がすると様になる。右耳についてある耳飾りが風に揺れてキラキラとゆらめいている。
「いいかい?」
物思いにふけかけていた私は彼の言葉で我に返った。反射的に、『あ、はい』と頷いた。
(いかん、いかん。顔面偏差値高いなーとか思っている場合じゃない)
「話が前後してしまったけれど、キミはこの世界では異質だ」
「そう……ですね」
「異質って?」
「違うものってことだ」
ふーんと言いながら頷くルビーの頭を白マントの人が撫でる。ルビーはというと気持ちの良さそうに目を細めている。
(違うもの……)
元々この世界の住人でない私は本来ここにあってはいけないのだから。この人の言う通りだ。
「けど、それはキミがチキュウから来た人だからという意味だけではない」
そして彼は真っ直ぐに私を見た。曇りなどない碧眼は空のように透き通っている。至近距離で見つめられ思わず息を飲む。そんな私に
「チキュウ人であるキミには魔法が効かないんだ」
切なげな表情を浮かべて、そう口にした。
その刹那、ササァと風が吹き、草木が音を立てる。濡れた髪から水滴が首筋に落ちたのか、ひんやりとしたものが広がった。
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