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1章 出会ったのは白魔導士
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♢ ♢ ♢
「もう大丈夫だよ」
優しそうな声が聞こえて、私は恐る恐る目を開けた。ぼんやりとした視野の中、黄金色が瞳に映り込む。
「あ……れ?私――……」
数度瞬きするとぼやけていた視界がはっきりとしてくる。
――もう、どこにもあの異形な姿をした生き物はなかった。
代わりに月光に照らされて、心配そうに私を覗き込む端正な顔をした男と目が合った。私の目の前に立ってあの異形の姿の生き物から守ってくれた人だと頭の中で思ってからふと我に返る。なぜなら、その人の顔の距離が15センチほどだったからだ。少し動けば触れてしまいそうな距離で私は思わず目を瞬かせた。
「わっ!!」
一拍置いて私は思わず後ろにのけぞった。
「おっと、危ない」
白いマントがひらめいて、私の肩に手が添えられる。
「――……っ!」
一気に距離が縮まり、私は目を大きく見開いた。切れ長の二重瞼に、形の良い眉。月明かりに照らされ、その双眼は碧色なのだとわかった。黄金色の髪は柔らかそうで、癖っけなのか毛先が気が少しはねている。私を支える腕は、ほどよく筋肉がついているのが感じられる。年は私と幾ばくも変わらないように見受けられた。
端的にいうなれば『イケメン』だ。とにかく顔がよい。モデルみたいだ。しかも、いい香りがする。
「どうかしたか?」
「あ……いや、その……」
思わずまじまじと見入ってしまったようだ。不思議そうに首を傾げる“その人”にまさか馬鹿正直に見惚れていたとは言えない。慌てて『何でもない』、そう口を開きかけた瞬間
「おっそいぞー!怖かったもんねー!!!!!」
愛らしい子どもの声が“すぐ傍”から聞こえた。
「え?え?……――子ども?」
こんな真夜中に?
思わず辺りをキョロキョロと見渡すと草や木がそよいでいる。子どもの姿はおろか、人影などどこにも見当たらない。
空耳だったのだろうかときょとんとしていると、今度はクスクスとどこか可笑しそうに笑う声が聞こえる。その声の持ち主は
「あの――……?」
私を支えてくれている白マントを纏った件のイケメン。何かおかしいことを言ったのだろうかと首を傾げると、彼は口元を緩めながら下を指さした。
「下?」
その指を視線で辿り、自らの膝元辺りを見ると、先ほどまで私が抱きしめていた白い猫がなぜか怒ったような表情を浮かべて、私を見上げていた。その瞳と目が合う。先ほどまで暗がりでよくわからなかったが、至近距離でまじまじと見ると大きな目は紅いことが見て取れた。
「子どもじゃないもんね!!」
そして、口を開いた。けれど、それは先ほど聞いた子どもの声で。
「え?」
私は口をぽかーんと開けてしまう。目が点になるということはこういうことを言うのだろう。
「猫が喋った?」
自らの目を疑ってしまう。疲れているんだろうか。喋る猫など聞いたことはない。猫が口を開いた瞬間、幻聴が聞こえたのだろう。喋る猫なんて、画面の奥でしか見たことがない。
「ただの猫でもないもんね!!」
対してズイッとその白猫は見上げた。紅色の瞳が目一杯見開かれている。
「ただの猫じゃないって――……」
目を瞬かせてみてもムッとした様子の白猫は変わらない。
(あれ?やっぱり、幻聴じゃないの?)
そんなことを思っていると
「ボクはルビー!!使い魔だもんね!そんじょそこらの猫と一緒にしないでほしいもんね!!」
白猫は得意げな表情を浮かべた。
「使い魔?」
私がそう問うと白い細長い尻尾が左右に揺れる。
「魔導士に仕える使い魔!おばちゃん、そんなことも知らないのか?」
「おば……ちゃん……」
無邪気に言う白猫の言葉に思わずグサッと来ていると
「こら、ルビー。お姉さん、だろ?」
「わっ!!何するんだ!!」
視界からぴょいっと白猫が消えた。
「離せ!!首はずるいもんね!!」
「この人をあんまり困らせるんじゃない」
白猫が消えた先を目で追うとバタバタを暴れる白猫の首根っこを左手で掴んで、仕方ないとばかりに眉を顰める白マントの男がいた。
「だいたい魔族を見つけたら連絡くれるんじゃなかったのか?」
「魔法を使って連絡しようとしたもんね!でも、何故だかできなかったもんね!」
「本当か?さっきまでこの人の膝の上で縮こまってたじゃないか?」
「このおばちゃんが猫扱いしてくるから、大人しく猫のふりをしていただけだもんね!別にこのおばちゃんのなでなでが気持ちよくてなんて思ってなかったもんね!」
(また、おばちゃんって言われた――……。しかも、二回連続)
心の中で地味にショックを受けながら、二人が言い合う様子を見ていると、白マントの人は白猫の頬を首を掴んでいる反対の手でむにゅっと掴んだ。
「おねーさん!」
「おばじゃん!」
「おねーさん!」
「おばばん!!」
「おねーさん!」
「おばしゃん!」
ぐにぐにと引っ張られながらも、頑なに『おばちゃん』と言い張ろうとする白猫。いや、まぁ確かにもう30近いし、おばちゃんと言われても仕方ないかと心の中で思ってから、まだなお『お姉さん』と訂正してくれようとする白マントの人に私は声をかけた。
「あ、あの――……」
すると
「ん?」
「にゃんにゃ?」
声をかけると睨みあっている白マントの人と白猫は一斉に私の方を向いた。
「さっきは助けてくれてありがとうございました」
居住まいを正して私は頭を下げた。
(この人が助けてくれなかったら今頃どうなってたか……)
考えただけで恐ろしい。
「ルビーちゃんも、貴方が一緒に傍にいてくれたおかげで少しだけ恐怖が和らいだ。ありがとう」
(腕に感じた確かな温かみのおかげで気を失わずに済んだ)
「本当にありがとうございました」
再び礼を言って顔を上げた。
「ルビーでいいもんね!怖がりなおばちゃんのためにいつでも撫でさせてあげるよ」
ルビーは首を掴まれながら右前足で自らの胸を叩いて胸を張った。対して白マントの人は『全く……、ルビーは』と仕方ないなとばかりにため息をついてから
「礼を言われる筋合いはないよ。もう少し早く来れていたら君が怖い思いをしなくて済んだかもしれないのに。――でも、どういたしまして」
にっこりと笑った。そして、首を掴んでいたルビーを自らの肩に乗せて立ち上がる。
「さて、家まで送るよ。そんなに服が濡れてしまっていては、夜風が体に障る」
「びしょ濡れはよくないぞ!風邪をひいちゃうかもしれないもんね!ボクが村まで案内してあげるもんね!」
(家……。そうだ、家)
白マントの人とルビーの言葉に私は思った。
(異形の生き物。魔法。喋る猫)
それらは私の生きていた世界では空想上のもの。けれど、それが今目の前にあるということは……。
「どうした?」
「ボクをなでなでする?」
そう心配そうに私を見る2人に私は『あの――……』と勇気を振り絞って見上げた。
「ここは、日本……じゃないですよね?」
「もう大丈夫だよ」
優しそうな声が聞こえて、私は恐る恐る目を開けた。ぼんやりとした視野の中、黄金色が瞳に映り込む。
「あ……れ?私――……」
数度瞬きするとぼやけていた視界がはっきりとしてくる。
――もう、どこにもあの異形な姿をした生き物はなかった。
代わりに月光に照らされて、心配そうに私を覗き込む端正な顔をした男と目が合った。私の目の前に立ってあの異形の姿の生き物から守ってくれた人だと頭の中で思ってからふと我に返る。なぜなら、その人の顔の距離が15センチほどだったからだ。少し動けば触れてしまいそうな距離で私は思わず目を瞬かせた。
「わっ!!」
一拍置いて私は思わず後ろにのけぞった。
「おっと、危ない」
白いマントがひらめいて、私の肩に手が添えられる。
「――……っ!」
一気に距離が縮まり、私は目を大きく見開いた。切れ長の二重瞼に、形の良い眉。月明かりに照らされ、その双眼は碧色なのだとわかった。黄金色の髪は柔らかそうで、癖っけなのか毛先が気が少しはねている。私を支える腕は、ほどよく筋肉がついているのが感じられる。年は私と幾ばくも変わらないように見受けられた。
端的にいうなれば『イケメン』だ。とにかく顔がよい。モデルみたいだ。しかも、いい香りがする。
「どうかしたか?」
「あ……いや、その……」
思わずまじまじと見入ってしまったようだ。不思議そうに首を傾げる“その人”にまさか馬鹿正直に見惚れていたとは言えない。慌てて『何でもない』、そう口を開きかけた瞬間
「おっそいぞー!怖かったもんねー!!!!!」
愛らしい子どもの声が“すぐ傍”から聞こえた。
「え?え?……――子ども?」
こんな真夜中に?
思わず辺りをキョロキョロと見渡すと草や木がそよいでいる。子どもの姿はおろか、人影などどこにも見当たらない。
空耳だったのだろうかときょとんとしていると、今度はクスクスとどこか可笑しそうに笑う声が聞こえる。その声の持ち主は
「あの――……?」
私を支えてくれている白マントを纏った件のイケメン。何かおかしいことを言ったのだろうかと首を傾げると、彼は口元を緩めながら下を指さした。
「下?」
その指を視線で辿り、自らの膝元辺りを見ると、先ほどまで私が抱きしめていた白い猫がなぜか怒ったような表情を浮かべて、私を見上げていた。その瞳と目が合う。先ほどまで暗がりでよくわからなかったが、至近距離でまじまじと見ると大きな目は紅いことが見て取れた。
「子どもじゃないもんね!!」
そして、口を開いた。けれど、それは先ほど聞いた子どもの声で。
「え?」
私は口をぽかーんと開けてしまう。目が点になるということはこういうことを言うのだろう。
「猫が喋った?」
自らの目を疑ってしまう。疲れているんだろうか。喋る猫など聞いたことはない。猫が口を開いた瞬間、幻聴が聞こえたのだろう。喋る猫なんて、画面の奥でしか見たことがない。
「ただの猫でもないもんね!!」
対してズイッとその白猫は見上げた。紅色の瞳が目一杯見開かれている。
「ただの猫じゃないって――……」
目を瞬かせてみてもムッとした様子の白猫は変わらない。
(あれ?やっぱり、幻聴じゃないの?)
そんなことを思っていると
「ボクはルビー!!使い魔だもんね!そんじょそこらの猫と一緒にしないでほしいもんね!!」
白猫は得意げな表情を浮かべた。
「使い魔?」
私がそう問うと白い細長い尻尾が左右に揺れる。
「魔導士に仕える使い魔!おばちゃん、そんなことも知らないのか?」
「おば……ちゃん……」
無邪気に言う白猫の言葉に思わずグサッと来ていると
「こら、ルビー。お姉さん、だろ?」
「わっ!!何するんだ!!」
視界からぴょいっと白猫が消えた。
「離せ!!首はずるいもんね!!」
「この人をあんまり困らせるんじゃない」
白猫が消えた先を目で追うとバタバタを暴れる白猫の首根っこを左手で掴んで、仕方ないとばかりに眉を顰める白マントの男がいた。
「だいたい魔族を見つけたら連絡くれるんじゃなかったのか?」
「魔法を使って連絡しようとしたもんね!でも、何故だかできなかったもんね!」
「本当か?さっきまでこの人の膝の上で縮こまってたじゃないか?」
「このおばちゃんが猫扱いしてくるから、大人しく猫のふりをしていただけだもんね!別にこのおばちゃんのなでなでが気持ちよくてなんて思ってなかったもんね!」
(また、おばちゃんって言われた――……。しかも、二回連続)
心の中で地味にショックを受けながら、二人が言い合う様子を見ていると、白マントの人は白猫の頬を首を掴んでいる反対の手でむにゅっと掴んだ。
「おねーさん!」
「おばじゃん!」
「おねーさん!」
「おばばん!!」
「おねーさん!」
「おばしゃん!」
ぐにぐにと引っ張られながらも、頑なに『おばちゃん』と言い張ろうとする白猫。いや、まぁ確かにもう30近いし、おばちゃんと言われても仕方ないかと心の中で思ってから、まだなお『お姉さん』と訂正してくれようとする白マントの人に私は声をかけた。
「あ、あの――……」
すると
「ん?」
「にゃんにゃ?」
声をかけると睨みあっている白マントの人と白猫は一斉に私の方を向いた。
「さっきは助けてくれてありがとうございました」
居住まいを正して私は頭を下げた。
(この人が助けてくれなかったら今頃どうなってたか……)
考えただけで恐ろしい。
「ルビーちゃんも、貴方が一緒に傍にいてくれたおかげで少しだけ恐怖が和らいだ。ありがとう」
(腕に感じた確かな温かみのおかげで気を失わずに済んだ)
「本当にありがとうございました」
再び礼を言って顔を上げた。
「ルビーでいいもんね!怖がりなおばちゃんのためにいつでも撫でさせてあげるよ」
ルビーは首を掴まれながら右前足で自らの胸を叩いて胸を張った。対して白マントの人は『全く……、ルビーは』と仕方ないなとばかりにため息をついてから
「礼を言われる筋合いはないよ。もう少し早く来れていたら君が怖い思いをしなくて済んだかもしれないのに。――でも、どういたしまして」
にっこりと笑った。そして、首を掴んでいたルビーを自らの肩に乗せて立ち上がる。
「さて、家まで送るよ。そんなに服が濡れてしまっていては、夜風が体に障る」
「びしょ濡れはよくないぞ!風邪をひいちゃうかもしれないもんね!ボクが村まで案内してあげるもんね!」
(家……。そうだ、家)
白マントの人とルビーの言葉に私は思った。
(異形の生き物。魔法。喋る猫)
それらは私の生きていた世界では空想上のもの。けれど、それが今目の前にあるということは……。
「どうした?」
「ボクをなでなでする?」
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「ここは、日本……じゃないですよね?」
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