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1章 出会ったのは白魔導士
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♢ ♢ ♢
「光の矢!!!」
その言葉と共に雷光が目の前を駆け抜けた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!!」
そして、次の瞬間、辺りにけたたましいほどの絶叫が響いた。暗闇の中でもわかるほどに白く輝いた矢のようなものが吸い込まれるように私に右翼を伸ばしかけていた“ソレ”に突き刺さったのだ。
「えっ――……?」
驚きのあまり身を引くと私に触れんばかりになっていた翼が跡形もなく消えていた。“ソレ”は片翼を庇うように後ろへ飛び引いた。
「オマエ、ナニヲシタ!?」
ギリッと私を睨みつける“ソレ”に対して、私は驚きのあまり言葉なんて出ないわけで。
「何をしたって――……」
問われたところで身に覚えもない。
「オマエ、カナラズツレテイク!!!」
“ソレ“が苛立ったように声を張り上げ、左翼を振り上げながら近づいてくる。恐怖のあまり身を竦めた瞬間
「誰が誰を連れて行くって?」
すぐ近くで“声”が聞こえた。そして、異形の姿が見えなくなった。
「えっ――……?」
ふわりと目の前に白い何かが降り立ったからだ。
「誰――……?」
真っ白なマントに身を包んだ“その人”は、明るい黄金色の髪をしていた。月明かりに照らされて、透き通るように輝いている。
ーー光のような人、そう思った。
「遅くなって、ごめんね。もう、大丈夫だから」
そう言って“その人”は振り返った。声は低く穏やかで、恐怖に支配されて身を竦めている私を安心させるように一つ微笑んだ。彼からの黄金色の髪から覗く右耳につけてある細長い結晶型の耳飾りが揺れる。
「あとは俺に任せて」
そして、右翼を押さえ込んでいる異形の“ソレ”から私を隠すように立ちはだかった。夜風が彼が纏っているマントと黄金色の髪を優しくそよいでいる。
「君か?最近この近くの村の女性を攫っていたのは?」
「キサママドウシカ!?」
マントの隙間から見える異形の“ソレ”は私の目の前に立っている“その人”をギリッと睨みつけていた。
「そうだよ。村の娘が姿を消したと連絡が入ってね。調査に来たんだ。……――で、君がやったのかい?」
“その人”は右手を自らの腰に当てて試すように再び問いただした。すると、異形の“ソレ”の双眼が禍々しく輝き始めた。
「オマエハコロス!!!!ソノオンナハムスメタチトオナジヨウニマオウサマノモトヘツレテイク!!!!」
「その反応、犯人はやっぱり君みたいだね」
激昂しギロリと睨みつける“ソレ”に対して、“その人は”ただ静かに言った。風が吹き、髪が後ろに流される。その時に見た彼の瞳は、真っすぐと目の前の“ソレ”を捉えていた。
「オマエハユルサナイ!!」
先に動いたのは異形の“ソレ”だった。左翼を振り上げ禍々しい色を放ちながら円陣が“その人”の周りを取り囲んだ。
(あれが来る!)
「危ない!!」
私がそう叫んだ瞬間
「悪魔の鞭!」
異形の“ソレ”はキャハハと高笑いをあげ勝ち誇ったかのようにそう叫んだ。尖った木の根が“その人”に向かって一直線に向かっていく。目も当てられず思わず両手で顔を覆いかけた刹那
「悪いが、ここで殺されるわけにはいかないんだ」
目の前から声が聞こえた。私は気がつけば覆いかけた手をぴたりと止めて、私は“その人”を見ていた。木の根が勢いよく向かってくるのもお構いなしに“その人”は真っすぐ前を見据えていた。
ーー一瞬、痛ましい何かを見るように、その生き物に視線を寄越したような気がした
けれどもそれは一瞬のことで、左手を真横に掲げた。すると、異形の“ソレ”が発動した円陣の内側に眩い光の円陣が浮かび上がった。
「邪悪なる者を消し飛ばせ!光の風!!」
そう彼が言うと光が辺り一帯を包み込んで、私は眩しさのあまり目を閉じた。
「光の矢!!!」
その言葉と共に雷光が目の前を駆け抜けた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!!」
そして、次の瞬間、辺りにけたたましいほどの絶叫が響いた。暗闇の中でもわかるほどに白く輝いた矢のようなものが吸い込まれるように私に右翼を伸ばしかけていた“ソレ”に突き刺さったのだ。
「えっ――……?」
驚きのあまり身を引くと私に触れんばかりになっていた翼が跡形もなく消えていた。“ソレ”は片翼を庇うように後ろへ飛び引いた。
「オマエ、ナニヲシタ!?」
ギリッと私を睨みつける“ソレ”に対して、私は驚きのあまり言葉なんて出ないわけで。
「何をしたって――……」
問われたところで身に覚えもない。
「オマエ、カナラズツレテイク!!!」
“ソレ“が苛立ったように声を張り上げ、左翼を振り上げながら近づいてくる。恐怖のあまり身を竦めた瞬間
「誰が誰を連れて行くって?」
すぐ近くで“声”が聞こえた。そして、異形の姿が見えなくなった。
「えっ――……?」
ふわりと目の前に白い何かが降り立ったからだ。
「誰――……?」
真っ白なマントに身を包んだ“その人”は、明るい黄金色の髪をしていた。月明かりに照らされて、透き通るように輝いている。
ーー光のような人、そう思った。
「遅くなって、ごめんね。もう、大丈夫だから」
そう言って“その人”は振り返った。声は低く穏やかで、恐怖に支配されて身を竦めている私を安心させるように一つ微笑んだ。彼からの黄金色の髪から覗く右耳につけてある細長い結晶型の耳飾りが揺れる。
「あとは俺に任せて」
そして、右翼を押さえ込んでいる異形の“ソレ”から私を隠すように立ちはだかった。夜風が彼が纏っているマントと黄金色の髪を優しくそよいでいる。
「君か?最近この近くの村の女性を攫っていたのは?」
「キサママドウシカ!?」
マントの隙間から見える異形の“ソレ”は私の目の前に立っている“その人”をギリッと睨みつけていた。
「そうだよ。村の娘が姿を消したと連絡が入ってね。調査に来たんだ。……――で、君がやったのかい?」
“その人”は右手を自らの腰に当てて試すように再び問いただした。すると、異形の“ソレ”の双眼が禍々しく輝き始めた。
「オマエハコロス!!!!ソノオンナハムスメタチトオナジヨウニマオウサマノモトヘツレテイク!!!!」
「その反応、犯人はやっぱり君みたいだね」
激昂しギロリと睨みつける“ソレ”に対して、“その人は”ただ静かに言った。風が吹き、髪が後ろに流される。その時に見た彼の瞳は、真っすぐと目の前の“ソレ”を捉えていた。
「オマエハユルサナイ!!」
先に動いたのは異形の“ソレ”だった。左翼を振り上げ禍々しい色を放ちながら円陣が“その人”の周りを取り囲んだ。
(あれが来る!)
「危ない!!」
私がそう叫んだ瞬間
「悪魔の鞭!」
異形の“ソレ”はキャハハと高笑いをあげ勝ち誇ったかのようにそう叫んだ。尖った木の根が“その人”に向かって一直線に向かっていく。目も当てられず思わず両手で顔を覆いかけた刹那
「悪いが、ここで殺されるわけにはいかないんだ」
目の前から声が聞こえた。私は気がつけば覆いかけた手をぴたりと止めて、私は“その人”を見ていた。木の根が勢いよく向かってくるのもお構いなしに“その人”は真っすぐ前を見据えていた。
ーー一瞬、痛ましい何かを見るように、その生き物に視線を寄越したような気がした
けれどもそれは一瞬のことで、左手を真横に掲げた。すると、異形の“ソレ”が発動した円陣の内側に眩い光の円陣が浮かび上がった。
「邪悪なる者を消し飛ばせ!光の風!!」
そう彼が言うと光が辺り一帯を包み込んで、私は眩しさのあまり目を閉じた。
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