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王子様は誰のもの!?
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♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「王子はんが想っていたエレナはんへの“お・も・い♡♡」
「私への、おもい?」
(それは、どういうことなの?)
思いもよらないシモンの言葉に思考がうまく働かない。思わずシモンの言葉をオウム返しに繰り返す。そんな私を見下ろしながらシモンは面白がるように私を見やると
「王子はんとエレナはんが出会ったことで、二人の“恋”が始まったんやろー?」
ハートのポーズを描いた両手を左右に振って、ニヤニヤと笑う。
「出会ってからずーと、王子はんはエレナはんのことだけ、想ってきたんやろー?」
おまけに片目を瞑ってウインクまでする始末だ。
シモンの真意がわからない。一体、シモンは何を考えているのだろうか。この問いの意味は一体何なのか。
(何がいいたいの?)
シモンの言葉に惑わされてはだめだ。私の反応を揶揄っているだけなのだ。
一旦、落ち着いて頭の中で話を整理しなければ。シモンは、レイ君の私への想いに対して魔法をかけたと言っていた。しかも、それを忘れてもらったと。そして、今は出会った日のことを話し出したわけで。
(......___もしかして!!)
散らばっていたパズルのピースが当てはまり、私はとある結論に辿り着く。
(そんな....まさか___.......!!)
そこまで思い至って、私は思わずレイ君に視線を落とした。
(......___レイ君は、私のことを)
私は気を失っているレイ君をぎゅっと抱きしめながら、シモンを怒りを込めて見返した。対するシモンは、ご名答と言わんばかりに愉快そうに笑う。
「.......___だから、王子はんの中のエレナはんとの記憶をなくしたら、どうなるんやろーって思ったんですわ」
そういって私とレイ君を見比べるシモン。
(そんな、ことのために___.......)
ギリッと唇を噛みしめる私に対して、シモンはどこ吹く風だ。まったく気にも止めていない。
「“積み重ねた想い”なんてあやふやなもん、なくなった方が、すっきりすると思わへん?」
そして、シモンは楽しくて楽しくて仕方がないように満足げに口元を歪ませた。
「つまり、今のレイ殿下は、“エレナはんの王子様”じゃなくなったってこと♡♡」
....____そう、シモンが言い切った瞬間だった。
「.....っ!」
肩にのしかかっていた重さがわずかになくなり、私の肩に回されていた腕がわずかに動いたのは。たまらず私はシモンからレイ君に視線を移して呼びかけた。
「レイ君、レイ君!!」
何度も何度もレイ君の名を呼び、身体を揺らした。そのたびに亜麻栗色の髪が私の頬を撫でる。
(お願い、目を覚まして!)
心の中で何度もそう祈りながらレイ君の名前を呼べば、意識が戻ったのか、はっとしたように息を飲んだような声ががした。
(....____よかった)
そう、私が思った瞬間だった。
「.......___っ」
はじき飛ばされたかのように私から勢いよく身を引くレイ君。状況が把握できないのだろう、何度も瞬きを繰り返していた。
「よかった目が覚めた」
レイ君の意識が戻り、安堵のために胸を撫でおろした。この時の私はレイ君が目覚めたのが嬉しくて、シモンの言葉を失念してしまったんだと思う。
だから、レイ君が次の瞬間発した言葉に、私は思わず息を呑んだ。
「......___私は一体、何をしていたんでしょうか?」
その瞬間、私とレイ君との間に冷たい風が吹き抜けた。亜麻栗色の髪が風で揺らされ、疑心のこもったようなエメラルドグリーンの瞳の中に映し出されたのは、紛れもなく私なわけで____......。
「......____貴女は、誰ですか?」
「.......___っ」
レイ君の中に確かにいたはずの“私”がいとも簡単に消えていた。
脳裏に思い出されるのは、シモンの言葉。
『その“想い”が壊れてしまえば、どないおもろいことが起こるんやろうね』
呆然としながら先ほどまでシモンがいた場所を見れば、最初から誰もいなかったかのように草木が風で揺れていた。
「王子はんが想っていたエレナはんへの“お・も・い♡♡」
「私への、おもい?」
(それは、どういうことなの?)
思いもよらないシモンの言葉に思考がうまく働かない。思わずシモンの言葉をオウム返しに繰り返す。そんな私を見下ろしながらシモンは面白がるように私を見やると
「王子はんとエレナはんが出会ったことで、二人の“恋”が始まったんやろー?」
ハートのポーズを描いた両手を左右に振って、ニヤニヤと笑う。
「出会ってからずーと、王子はんはエレナはんのことだけ、想ってきたんやろー?」
おまけに片目を瞑ってウインクまでする始末だ。
シモンの真意がわからない。一体、シモンは何を考えているのだろうか。この問いの意味は一体何なのか。
(何がいいたいの?)
シモンの言葉に惑わされてはだめだ。私の反応を揶揄っているだけなのだ。
一旦、落ち着いて頭の中で話を整理しなければ。シモンは、レイ君の私への想いに対して魔法をかけたと言っていた。しかも、それを忘れてもらったと。そして、今は出会った日のことを話し出したわけで。
(......___もしかして!!)
散らばっていたパズルのピースが当てはまり、私はとある結論に辿り着く。
(そんな....まさか___.......!!)
そこまで思い至って、私は思わずレイ君に視線を落とした。
(......___レイ君は、私のことを)
私は気を失っているレイ君をぎゅっと抱きしめながら、シモンを怒りを込めて見返した。対するシモンは、ご名答と言わんばかりに愉快そうに笑う。
「.......___だから、王子はんの中のエレナはんとの記憶をなくしたら、どうなるんやろーって思ったんですわ」
そういって私とレイ君を見比べるシモン。
(そんな、ことのために___.......)
ギリッと唇を噛みしめる私に対して、シモンはどこ吹く風だ。まったく気にも止めていない。
「“積み重ねた想い”なんてあやふやなもん、なくなった方が、すっきりすると思わへん?」
そして、シモンは楽しくて楽しくて仕方がないように満足げに口元を歪ませた。
「つまり、今のレイ殿下は、“エレナはんの王子様”じゃなくなったってこと♡♡」
....____そう、シモンが言い切った瞬間だった。
「.....っ!」
肩にのしかかっていた重さがわずかになくなり、私の肩に回されていた腕がわずかに動いたのは。たまらず私はシモンからレイ君に視線を移して呼びかけた。
「レイ君、レイ君!!」
何度も何度もレイ君の名を呼び、身体を揺らした。そのたびに亜麻栗色の髪が私の頬を撫でる。
(お願い、目を覚まして!)
心の中で何度もそう祈りながらレイ君の名前を呼べば、意識が戻ったのか、はっとしたように息を飲んだような声ががした。
(....____よかった)
そう、私が思った瞬間だった。
「.......___っ」
はじき飛ばされたかのように私から勢いよく身を引くレイ君。状況が把握できないのだろう、何度も瞬きを繰り返していた。
「よかった目が覚めた」
レイ君の意識が戻り、安堵のために胸を撫でおろした。この時の私はレイ君が目覚めたのが嬉しくて、シモンの言葉を失念してしまったんだと思う。
だから、レイ君が次の瞬間発した言葉に、私は思わず息を呑んだ。
「......___私は一体、何をしていたんでしょうか?」
その瞬間、私とレイ君との間に冷たい風が吹き抜けた。亜麻栗色の髪が風で揺らされ、疑心のこもったようなエメラルドグリーンの瞳の中に映し出されたのは、紛れもなく私なわけで____......。
「......____貴女は、誰ですか?」
「.......___っ」
レイ君の中に確かにいたはずの“私”がいとも簡単に消えていた。
脳裏に思い出されるのは、シモンの言葉。
『その“想い”が壊れてしまえば、どないおもろいことが起こるんやろうね』
呆然としながら先ほどまでシモンがいた場所を見れば、最初から誰もいなかったかのように草木が風で揺れていた。
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雪様
その通りです。王子は余裕でいなければならないですよね。
けれど、18の少年ですから精神面でまだ少し幼いところもあるのだと思います。
どうなっていくかは、本日の更新で明らかにされていると思います。
コメントありがとうございます!
コメントありがとうございます。
まさにその通りだと思います。
自らが犯してしまった罪をしっかり償って、
新しい人生を歩んでもらいたいものです。
コメントありがとうございます。大丈夫です。エレナの人タラシは健在ですので、殿下はウカウカしてられません。
それに次編では今編脇役だったあの男が、、、((
これ以上は機密事項ですが。せっかくコメントくださったので笑