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王子様は誰のもの!?

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「......____どう、して?」


かすれて出た声は我ながらあり得ないほどに震えている。

「お姉様!!!レイ!!!」

焦ったようなルーカスの声が遠くで聞こえたような気がした。





「......____っ」

衝撃はなかった。

痛みももちろんなかった。

けれども、心臓はあり得ないほど脈を打っている。

嫌な汗が額を流れた。





禍々しい光はいつの間にか消え、目の前に広がるのは優しい亜麻栗色。

(どうして、こんなことに___.......)

レイ君が私とシモンが放った魔法との間に割り込んだんだ、と思い立ったときにはすでに遅くて___.......。

「......____レイ君?」

触れる温もりは温かいはずなのに、いつも恥ずかしいくらいに愛おしそうに私を見ていたエメラルドグリーンの瞳は固く閉じられている。いつもは私を優しく抱きしめてくれる腕は、力なく、今はただ私の肩に手を回しているだけ。

「......____レイ君!?」

私にもたれかかるレイ君は意識を失っているのか呼びかけても返答はない。

「......____レイ君!?」

何度も何度もレイ君の名を呼んでも、レイ君の体をゆすってもピクリともしない。

「......____わっ!?」

次第にレイ君を私だけでは支えていることができずに、私はその場にへたり込んでしまった。そのせいでレイ君は私に手を回したまま、膝をつく形になる。けれども、その衝撃でもレイ君は目を覚まさない。

「......____レイ君!?レイ君!?レイ君!!!」

必死にレイ君に呼びかけている私に対して

「王子はん、エレナはんのこと“やっぱり”ちゃんと守りはりましたねー」

“ひゅー、ひゅー、ラブラブカップル♡”とシモンは冷やかすように私に言い放った。

「レイ君になにしたの!?」

私がシモンに怒りを込めて睨みつければ

「そんな目で見んといてやー。別に命まで取ってへんでぇ~」

どこか愉快そうに笑いながらシモンは言った。心外だ、とでもいうように両手をひらひらと振って見せる。

「じゃあ、なにしたの!?」
「しっかし、王子はんにとって、エレナはんは本当に大切な人やったんやねー♪」
「さっき、あなたが放った魔法は何!?」
「王子様が愛する人を守る、ロマンチックやね♡」
「質問に答えてっ!!」

私の問いかけにのらりくらりと言葉を返すシモンに痺れを切らす。ギリッとシモンを睨みつければ

「おぉー、怖っ」

と言葉とは裏腹に愉快げに私を見るシモン。そして

「王子はんに、ちょっとばかり忘れてもらっただけですやん♪」

悪いことなどしていないというように首を傾げた。

「忘れるって何を!?」

私の問いにシモンは

「決まっているやん♪」

まるでずっとしかけていた“罠”に獲物がかかったっ!と言わんばかりに、口元を歪めながら確かにこういったのだ。

「王子はんが想っていたエレナはんへの“お・も・い”♡♡」

そういって彼は、自らの両手を使ってハートのポーズを取り、どこか楽しげに笑った。
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