56 / 57
王子様は誰のもの!?
04
しおりを挟む
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「......____どう、して?」
かすれて出た声は我ながらあり得ないほどに震えている。
「お姉様!!!レイ!!!」
焦ったようなルーカスの声が遠くで聞こえたような気がした。
「......____っ」
衝撃はなかった。
痛みももちろんなかった。
けれども、心臓はあり得ないほど脈を打っている。
嫌な汗が額を流れた。
禍々しい光はいつの間にか消え、目の前に広がるのは優しい亜麻栗色。
(どうして、こんなことに___.......)
レイ君が私とシモンが放った魔法との間に割り込んだんだ、と思い立ったときにはすでに遅くて___.......。
「......____レイ君?」
触れる温もりは温かいはずなのに、いつも恥ずかしいくらいに愛おしそうに私を見ていたエメラルドグリーンの瞳は固く閉じられている。いつもは私を優しく抱きしめてくれる腕は、力なく、今はただ私の肩に手を回しているだけ。
「......____レイ君!?」
私にもたれかかるレイ君は意識を失っているのか呼びかけても返答はない。
「......____レイ君!?」
何度も何度もレイ君の名を呼んでも、レイ君の体をゆすってもピクリともしない。
「......____わっ!?」
次第にレイ君を私だけでは支えていることができずに、私はその場にへたり込んでしまった。そのせいでレイ君は私に手を回したまま、膝をつく形になる。けれども、その衝撃でもレイ君は目を覚まさない。
「......____レイ君!?レイ君!?レイ君!!!」
必死にレイ君に呼びかけている私に対して
「王子はん、エレナはんのこと“やっぱり”ちゃんと守りはりましたねー」
“ひゅー、ひゅー、ラブラブカップル♡”とシモンは冷やかすように私に言い放った。
「レイ君になにしたの!?」
私がシモンに怒りを込めて睨みつければ
「そんな目で見んといてやー。別に命まで取ってへんでぇ~」
どこか愉快そうに笑いながらシモンは言った。心外だ、とでもいうように両手をひらひらと振って見せる。
「じゃあ、なにしたの!?」
「しっかし、王子はんにとって、エレナはんは本当に大切な人やったんやねー♪」
「さっき、あなたが放った魔法は何!?」
「王子様が愛する人を守る、ロマンチックやね♡」
「質問に答えてっ!!」
私の問いかけにのらりくらりと言葉を返すシモンに痺れを切らす。ギリッとシモンを睨みつければ
「おぉー、怖っ」
と言葉とは裏腹に愉快げに私を見るシモン。そして
「王子はんに、ちょっとばかり忘れてもらっただけですやん♪」
悪いことなどしていないというように首を傾げた。
「忘れるって何を!?」
私の問いにシモンは
「決まっているやん♪」
まるでずっとしかけていた“罠”に獲物がかかったっ!と言わんばかりに、口元を歪めながら確かにこういったのだ。
「王子はんが想っていたエレナはんへの“お・も・い”♡♡」
そういって彼は、自らの両手を使ってハートのポーズを取り、どこか楽しげに笑った。
「......____どう、して?」
かすれて出た声は我ながらあり得ないほどに震えている。
「お姉様!!!レイ!!!」
焦ったようなルーカスの声が遠くで聞こえたような気がした。
「......____っ」
衝撃はなかった。
痛みももちろんなかった。
けれども、心臓はあり得ないほど脈を打っている。
嫌な汗が額を流れた。
禍々しい光はいつの間にか消え、目の前に広がるのは優しい亜麻栗色。
(どうして、こんなことに___.......)
レイ君が私とシモンが放った魔法との間に割り込んだんだ、と思い立ったときにはすでに遅くて___.......。
「......____レイ君?」
触れる温もりは温かいはずなのに、いつも恥ずかしいくらいに愛おしそうに私を見ていたエメラルドグリーンの瞳は固く閉じられている。いつもは私を優しく抱きしめてくれる腕は、力なく、今はただ私の肩に手を回しているだけ。
「......____レイ君!?」
私にもたれかかるレイ君は意識を失っているのか呼びかけても返答はない。
「......____レイ君!?」
何度も何度もレイ君の名を呼んでも、レイ君の体をゆすってもピクリともしない。
「......____わっ!?」
次第にレイ君を私だけでは支えていることができずに、私はその場にへたり込んでしまった。そのせいでレイ君は私に手を回したまま、膝をつく形になる。けれども、その衝撃でもレイ君は目を覚まさない。
「......____レイ君!?レイ君!?レイ君!!!」
必死にレイ君に呼びかけている私に対して
「王子はん、エレナはんのこと“やっぱり”ちゃんと守りはりましたねー」
“ひゅー、ひゅー、ラブラブカップル♡”とシモンは冷やかすように私に言い放った。
「レイ君になにしたの!?」
私がシモンに怒りを込めて睨みつければ
「そんな目で見んといてやー。別に命まで取ってへんでぇ~」
どこか愉快そうに笑いながらシモンは言った。心外だ、とでもいうように両手をひらひらと振って見せる。
「じゃあ、なにしたの!?」
「しっかし、王子はんにとって、エレナはんは本当に大切な人やったんやねー♪」
「さっき、あなたが放った魔法は何!?」
「王子様が愛する人を守る、ロマンチックやね♡」
「質問に答えてっ!!」
私の問いかけにのらりくらりと言葉を返すシモンに痺れを切らす。ギリッとシモンを睨みつければ
「おぉー、怖っ」
と言葉とは裏腹に愉快げに私を見るシモン。そして
「王子はんに、ちょっとばかり忘れてもらっただけですやん♪」
悪いことなどしていないというように首を傾げた。
「忘れるって何を!?」
私の問いにシモンは
「決まっているやん♪」
まるでずっとしかけていた“罠”に獲物がかかったっ!と言わんばかりに、口元を歪めながら確かにこういったのだ。
「王子はんが想っていたエレナはんへの“お・も・い”♡♡」
そういって彼は、自らの両手を使ってハートのポーズを取り、どこか楽しげに笑った。
31
お気に入りに追加
1,169
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる