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王子様は誰のもの!?
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♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「あんさんも生まれたてのひな鳥のように"王子はん"のこと、ただの擦り込みで恋だと認識しているだけと違います?」
(......___刷り込み?私が、レイくんに抱いている感情が“恋”じゃない?)
彼の問いかけに一瞬言いよどんだ私に対して、愉快そうに彼は私を見ていた。
「あーれれ―?図星やったんですかー?冗談だったのに」
そういってニヤリと笑う彼の言葉に
「そんなこと、むぐっ!!!」
と即座に反論のために口を開きかけた瞬間、彼の姿が一瞬消え、見失ってしまう。
(いつの間に____......)
視界にとらえたときにはすでに遅く、どこか面白そうに彼は私の口を右手で塞いでいた。警戒して瞬きもしていないにもかかわらず、まるで死角に入り込むように気が付けば、そこにいたのだ。
(瞬間移動でもしたの!?)
「むぐぐぐ」
「どうして?、って言ってはるんですかー?」
くつくつとどこか不気味に笑っている彼は愉快そうにそういった。彼から離れるために後退りしようとしたが、どういうわけだか体の自由が利かない。
「ボクが何もせんとエレナはんに近づくわけないでしょー?」
「......._____っ!?」
「拘束魔法で体を縛らせてもらっていますわー!」
「......___っ!」
「ボクがエレナはんに触れている間は、あんさんは指一本動かせへんよ」
(この男、一体何者なの!?)
レイ君と私の関係だけでなく、ベル=フォーサイスの件も知っている。極秘も極秘扱いのことを何故知っているのか。
しかも、こんなことまでして......。
(何が、目的!?)
「おっと!美人のエレナさんにそんなにぐっと見つめられると照れるわー!!」
ギリッと睨んだところで現状の打破はできない。
(どうしよう、これじゃ__.......)
体の自由が利かず、おまけに声まで出せない。これでは、誰かに助けを求めることさえできない。
どうにかこの拘束から逃れる術がないか、頭をフル回転させていると予想だにしない一言に思考が一瞬停止してしまう。
「エレナはんだって、何年も昔のあの王子はんの約束を忘れてはりましたやん!」
「......___っ」
(何で、そんなことまで知っているの!?)
信じられない思いで彼をみると、彼は私の様子を楽しんでいるようで
「だから、ボク、思ったんやけど、エレナはんとあの王子の想いって案外もろいと思うんですわー!」
身動きができない私をあざ笑うように彼は続ける。
「そもそも、エレナはんだって、ベルさんの件がなければ、あの王子のことただの年下の王子としか思ってなかったんとちゃいます??」
(確かに最初はそうだった)
(なんで、アラサーの私なんだって。きっと騙しているんだって)
「あれ?図星やないんですの?なんか、言いたげですやん!会話できんとつまらんし、話したいことがあるんやったら、話したらええですやん」
彼はそう可笑しそうに言って、私の口を塞いでいた手を私の頬にわずかにずらす。その隙に私は新鮮な空気を思いっきり吸い込んで、我慢ならずに彼に言い放った。
「それがきっかけだとしても、レイ君の“何年も私を想ってくれた、その“想い”が“本物”だったから!!だから、私のこの想いも刷り込みなんかじゃない!!」
(約束なんて忘れていた私を何年も何年も想い続けて___......)
(私を何年も想ってくれた想いは、“本物”だったから)
(“運命の赤い糸”なんてものがあるのなら、レイ君が諦めずに必死に結び付けてくれたんだ)
(そんなレイ君だったからこそ、私は___......!!!)
思いの丈を叫び、肩で息をしている私に対して、目の前の彼は先ほどとは打って変わりどこか冷ややかに私を見ていた。
「“想い”が“本物”ねぇー」
面白くなさそうに彼は口を尖らせて
「あんさんたちの“恋”っていうのは“積み重ねた想い”のことなんやねぇ~」
嘲るように私を見て確かにこういったのだ。
「その“想い”が壊れてしまえば、どないおもろいことが起こるんやろうね?」
.......____その刹那の出来事だった。
『突風魔法《エアレイド》!!』
とここにいるはずのない“彼”の声がして、どこからともなく突風が吹き
「何ですのん!?」
私を拘束した男を吹き飛ばした。彼に拘束されていた私はその拍子にふらりとよろめいてしまう。
「きゃっ!!」
(倒れる!?)
迫りくる衝撃に思わず目をつぶった瞬間、“誰”かが優しく私の肩を抱いた。備えていた衝撃は一切来ず、慣れ親しんだ温もりに思わず胸がぎゅっと締め付けられ、安堵のために深く息を吐いた。
(何でだろう、この温もりに触れるだけで、泣きそうになってしまうのは)
そんな私の肩を抱いた“彼”は翡翠色の瞳を私に向け安心させるように優しく微笑みかけ、次の瞬間、目の前の少年に鋭い視線を送った。
「お前、エレナに、一体何をした!?」
怒りを湛えた“レイ君”が、私を守るようにぎゅっと私を引き寄せる。
「ここで“王子様登場”!!かっこよー!!エレナはん、惚れ直したんとちゃいますのん!」
吹き飛ばされたはずの彼は、ゆらゆらと立ち上がりながら、まるで新しいおもちゃでも見つけたとばかりに、唇をいびつに歪ませていた。
「あんさんも生まれたてのひな鳥のように"王子はん"のこと、ただの擦り込みで恋だと認識しているだけと違います?」
(......___刷り込み?私が、レイくんに抱いている感情が“恋”じゃない?)
彼の問いかけに一瞬言いよどんだ私に対して、愉快そうに彼は私を見ていた。
「あーれれ―?図星やったんですかー?冗談だったのに」
そういってニヤリと笑う彼の言葉に
「そんなこと、むぐっ!!!」
と即座に反論のために口を開きかけた瞬間、彼の姿が一瞬消え、見失ってしまう。
(いつの間に____......)
視界にとらえたときにはすでに遅く、どこか面白そうに彼は私の口を右手で塞いでいた。警戒して瞬きもしていないにもかかわらず、まるで死角に入り込むように気が付けば、そこにいたのだ。
(瞬間移動でもしたの!?)
「むぐぐぐ」
「どうして?、って言ってはるんですかー?」
くつくつとどこか不気味に笑っている彼は愉快そうにそういった。彼から離れるために後退りしようとしたが、どういうわけだか体の自由が利かない。
「ボクが何もせんとエレナはんに近づくわけないでしょー?」
「......._____っ!?」
「拘束魔法で体を縛らせてもらっていますわー!」
「......___っ!」
「ボクがエレナはんに触れている間は、あんさんは指一本動かせへんよ」
(この男、一体何者なの!?)
レイ君と私の関係だけでなく、ベル=フォーサイスの件も知っている。極秘も極秘扱いのことを何故知っているのか。
しかも、こんなことまでして......。
(何が、目的!?)
「おっと!美人のエレナさんにそんなにぐっと見つめられると照れるわー!!」
ギリッと睨んだところで現状の打破はできない。
(どうしよう、これじゃ__.......)
体の自由が利かず、おまけに声まで出せない。これでは、誰かに助けを求めることさえできない。
どうにかこの拘束から逃れる術がないか、頭をフル回転させていると予想だにしない一言に思考が一瞬停止してしまう。
「エレナはんだって、何年も昔のあの王子はんの約束を忘れてはりましたやん!」
「......___っ」
(何で、そんなことまで知っているの!?)
信じられない思いで彼をみると、彼は私の様子を楽しんでいるようで
「だから、ボク、思ったんやけど、エレナはんとあの王子の想いって案外もろいと思うんですわー!」
身動きができない私をあざ笑うように彼は続ける。
「そもそも、エレナはんだって、ベルさんの件がなければ、あの王子のことただの年下の王子としか思ってなかったんとちゃいます??」
(確かに最初はそうだった)
(なんで、アラサーの私なんだって。きっと騙しているんだって)
「あれ?図星やないんですの?なんか、言いたげですやん!会話できんとつまらんし、話したいことがあるんやったら、話したらええですやん」
彼はそう可笑しそうに言って、私の口を塞いでいた手を私の頬にわずかにずらす。その隙に私は新鮮な空気を思いっきり吸い込んで、我慢ならずに彼に言い放った。
「それがきっかけだとしても、レイ君の“何年も私を想ってくれた、その“想い”が“本物”だったから!!だから、私のこの想いも刷り込みなんかじゃない!!」
(約束なんて忘れていた私を何年も何年も想い続けて___......)
(私を何年も想ってくれた想いは、“本物”だったから)
(“運命の赤い糸”なんてものがあるのなら、レイ君が諦めずに必死に結び付けてくれたんだ)
(そんなレイ君だったからこそ、私は___......!!!)
思いの丈を叫び、肩で息をしている私に対して、目の前の彼は先ほどとは打って変わりどこか冷ややかに私を見ていた。
「“想い”が“本物”ねぇー」
面白くなさそうに彼は口を尖らせて
「あんさんたちの“恋”っていうのは“積み重ねた想い”のことなんやねぇ~」
嘲るように私を見て確かにこういったのだ。
「その“想い”が壊れてしまえば、どないおもろいことが起こるんやろうね?」
.......____その刹那の出来事だった。
『突風魔法《エアレイド》!!』
とここにいるはずのない“彼”の声がして、どこからともなく突風が吹き
「何ですのん!?」
私を拘束した男を吹き飛ばした。彼に拘束されていた私はその拍子にふらりとよろめいてしまう。
「きゃっ!!」
(倒れる!?)
迫りくる衝撃に思わず目をつぶった瞬間、“誰”かが優しく私の肩を抱いた。備えていた衝撃は一切来ず、慣れ親しんだ温もりに思わず胸がぎゅっと締め付けられ、安堵のために深く息を吐いた。
(何でだろう、この温もりに触れるだけで、泣きそうになってしまうのは)
そんな私の肩を抱いた“彼”は翡翠色の瞳を私に向け安心させるように優しく微笑みかけ、次の瞬間、目の前の少年に鋭い視線を送った。
「お前、エレナに、一体何をした!?」
怒りを湛えた“レイ君”が、私を守るようにぎゅっと私を引き寄せる。
「ここで“王子様登場”!!かっこよー!!エレナはん、惚れ直したんとちゃいますのん!」
吹き飛ばされたはずの彼は、ゆらゆらと立ち上がりながら、まるで新しいおもちゃでも見つけたとばかりに、唇をいびつに歪ませていた。
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