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ライバル令嬢登場!?
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♢ ♢ ♢
「無事、だったんですか?」
エレナ・クレメンスに化けた私の姿を見た瞬間、レイ様は大きく見開いた。
「えぇ、どうにか」
私がそういうと安堵するように息を吐いて、こちらへゆっくりと近づいてきて立ち止まる。私の姿を上から下へ視線を動かした。まるで、怪我がないか確かめるように。やっぱり、ノアの変身魔法は完璧ね。こんなにまじまじと見られても見破られないなんて。
あとは、話し方だけ気を付ければ……。そんなことを思っていると視野に何かが映り込んだ。
「その手のひら、どうしたの?」
レイ様の左の美しい手のひらに赤い線が入っているのが見えた。
「あぁ、これは懐中時計でこすってしまったみたいで」
対してレイ様は困ったように笑って言った。そう言いながら、懐から懐中時計を取り出して私に見せる。
「それは大変。すぐに医務室に行こう。誰かに見てもらえるといいんだけど」
レイ様の体に傷が入るのは、私の意図するところじゃない。すると、『いえ』とスッと目を細めて私を見る。そして
「それよりもレナ姉をテレポーションで移動した犯人を捕まえないといけませんからね」
とエメラルドグリーンの瞳を細めたまま、今度は懐中時計を懐にしまった。その瞳が怪しげに揺れていたのは、エレナ・クレメンスを攫った犯人への怒りだろうか。思わずぞっとしてする。こんなにも冷たい瞳をしたレイ様を私は見たことがなかった。
けれども、滑稽だ。レイ様の言うところのレナ姉を攫った計画を立てたのはまぎれもない目の前にいる私なのだから。
あの女も今頃ノアに化けたレイ様に不信感を抱いて、貴方のことを信じられなくなっているはずなのに。二人の絆なんて、壊すのは簡単なこと。所詮は、その程度のものだったってことだわ。
(レイ様にふさわしいのは私なのだから)
計画通りに事が運び、思わず緩んでしまった口元を隠すように右の手のひらを翳すと
「それで、貴女は何故ここにいたのですか?」
レイ様は私に尋ねてきた。レイ様の手のひらは心配だったけれど、これ以上深く突っ込んでいると怪しまれるかもしれないし、あまり話していてはボロがでるかもしれない。口元を引き締め、私はエメラルドグリーンの瞳を見返した。
「それが、わからないの。テレポーションでここに移されてしばらく気を失っていて、気が付いたらここにいたの」
しかも、いい具合に計画に話が進んでいる。これなら、計画通りに事が進めるわ。思わずにやついてしまいそうな顔を正し、心の中でほくそ笑む。
「では、犯人の人数は?」
「それが、わからないの。レイ君がバルコニーから出ていって、そのあとに眠り薬か何かを後ろから嗅がされたから」
「手掛かりはなしですか……」
そういってレイ様は左手の人差し指と親指で自らの顎を軽く掴み、考える素振りを見せる。
「ほかに何か知っていることはありますか?」
首を傾げて私を見てくるレイ様に『そういえば!』と私は声を上げた。
「眠り薬を嗅がされてたときに、北側が何とかって言っていたような……」
「なるほど。北側は正門がある南側と比べて警備が手薄ですからね。もしかしたら、犯人はそこへ向かったのかもしれませんね」
そういってレイ様は北側の方を向いて
「貴女も来てください」
とエメラルドグリーンの瞳が私を捉えた。そのエメラルドグリーンの瞳に映っているのは、紛れもなく『エレナ・クレメンス』の姿。レイ様には私が『エレナ・クレメンス』として映っている。
(無事にレイ様をおびき寄せれた)
「えぇ」
と私は首を縦に振って即答した。すると、『では、行きましょう』レイ様は私の少し先を歩いていく。その後ろ姿を見ながら、思わず口元が緩んだ。内心、笑いが止まらない。
(順調すぎて怖いくらいだわ。レイ様を北側に連れ出したら作戦決行ね。)
……――これでレイ様の……、貴方の目を覚まさせてあげる。
「無事、だったんですか?」
エレナ・クレメンスに化けた私の姿を見た瞬間、レイ様は大きく見開いた。
「えぇ、どうにか」
私がそういうと安堵するように息を吐いて、こちらへゆっくりと近づいてきて立ち止まる。私の姿を上から下へ視線を動かした。まるで、怪我がないか確かめるように。やっぱり、ノアの変身魔法は完璧ね。こんなにまじまじと見られても見破られないなんて。
あとは、話し方だけ気を付ければ……。そんなことを思っていると視野に何かが映り込んだ。
「その手のひら、どうしたの?」
レイ様の左の美しい手のひらに赤い線が入っているのが見えた。
「あぁ、これは懐中時計でこすってしまったみたいで」
対してレイ様は困ったように笑って言った。そう言いながら、懐から懐中時計を取り出して私に見せる。
「それは大変。すぐに医務室に行こう。誰かに見てもらえるといいんだけど」
レイ様の体に傷が入るのは、私の意図するところじゃない。すると、『いえ』とスッと目を細めて私を見る。そして
「それよりもレナ姉をテレポーションで移動した犯人を捕まえないといけませんからね」
とエメラルドグリーンの瞳を細めたまま、今度は懐中時計を懐にしまった。その瞳が怪しげに揺れていたのは、エレナ・クレメンスを攫った犯人への怒りだろうか。思わずぞっとしてする。こんなにも冷たい瞳をしたレイ様を私は見たことがなかった。
けれども、滑稽だ。レイ様の言うところのレナ姉を攫った計画を立てたのはまぎれもない目の前にいる私なのだから。
あの女も今頃ノアに化けたレイ様に不信感を抱いて、貴方のことを信じられなくなっているはずなのに。二人の絆なんて、壊すのは簡単なこと。所詮は、その程度のものだったってことだわ。
(レイ様にふさわしいのは私なのだから)
計画通りに事が運び、思わず緩んでしまった口元を隠すように右の手のひらを翳すと
「それで、貴女は何故ここにいたのですか?」
レイ様は私に尋ねてきた。レイ様の手のひらは心配だったけれど、これ以上深く突っ込んでいると怪しまれるかもしれないし、あまり話していてはボロがでるかもしれない。口元を引き締め、私はエメラルドグリーンの瞳を見返した。
「それが、わからないの。テレポーションでここに移されてしばらく気を失っていて、気が付いたらここにいたの」
しかも、いい具合に計画に話が進んでいる。これなら、計画通りに事が進めるわ。思わずにやついてしまいそうな顔を正し、心の中でほくそ笑む。
「では、犯人の人数は?」
「それが、わからないの。レイ君がバルコニーから出ていって、そのあとに眠り薬か何かを後ろから嗅がされたから」
「手掛かりはなしですか……」
そういってレイ様は左手の人差し指と親指で自らの顎を軽く掴み、考える素振りを見せる。
「ほかに何か知っていることはありますか?」
首を傾げて私を見てくるレイ様に『そういえば!』と私は声を上げた。
「眠り薬を嗅がされてたときに、北側が何とかって言っていたような……」
「なるほど。北側は正門がある南側と比べて警備が手薄ですからね。もしかしたら、犯人はそこへ向かったのかもしれませんね」
そういってレイ様は北側の方を向いて
「貴女も来てください」
とエメラルドグリーンの瞳が私を捉えた。そのエメラルドグリーンの瞳に映っているのは、紛れもなく『エレナ・クレメンス』の姿。レイ様には私が『エレナ・クレメンス』として映っている。
(無事にレイ様をおびき寄せれた)
「えぇ」
と私は首を縦に振って即答した。すると、『では、行きましょう』レイ様は私の少し先を歩いていく。その後ろ姿を見ながら、思わず口元が緩んだ。内心、笑いが止まらない。
(順調すぎて怖いくらいだわ。レイ様を北側に連れ出したら作戦決行ね。)
……――これでレイ様の……、貴方の目を覚まさせてあげる。
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