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ライバル令嬢登場!?
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♢ ♢ ♢
――数刻前
「いない……」
“僕”がエレナがいたバルコニーに戻るとそこはいるはずのエレナはおらず、もぬけの殻だった。人の気配がしない。どこかにいったのだろうかと思ったけれども、“僕”が髪飾りを下に取りに行っている間にエレナが移動するのは考えにくい。それに“僕”がこちらへ向かっている間にエレナと遭遇しなかった。
その時、先ほど懐中時計で擦ってしまった左手が痛んだ。嫌な予感が脳裏をよぎった。
「まさか!?」
(誰かに攫われたのか?)
考えれば考えるほど、その可能性しか思いつかない。では、あの時エレナの花飾りを飛ばした突風は誰かの仕業で、“僕”とエレナを引き離すためのものだった?
けれども、何故?どういう目的でエレナを攫った?
“僕”への脅しか?
けれども、エレナが婚約者であることはまだごく一部しか知らない。
つまり、一緒に居たから襲われたか、目的はエレナそのものだった?
「ちっ……」
思わず舌打ちをしてしまう。限られた人間しか城に入れないと安心していた。それが仇となってしまった。
あのときにエレナを待たせずに一緒にいればよかった。けれど、いくら悔やんでも仕方がない。
「落ち着け」
そう呟いて大きく深呼吸をする。冷静にならなければ。
まずは、探知魔法を使って、エレナの気配を辿って、行き先を突き止める。それが最優先だ。とにかく彼女の居場所を確かめなければ。
“僕”は彼女が最後に立っていた辺りに立った。そして、そのまま目を閉じ、心を鎮めて左手の人差し指と中指を額に当てる。
「我に探し人への道筋を照らせ!探知魔法(ディテクション)!!」
魔力を込めて、探知魔法を発動する。一瞬で、魔法陣が浮かび上がった。けれども、いつもは探し人を指し示す光の糸が見えるはずなのに
「……どういうことだ?」
彼女の気配はここで途切れてしまっている。何度試してみても、結果は同じだ。光の糸が、この場所でぶっつりと途切れてしまっている。つまり、テレポーションか何かの移動魔法で連れ去られたか。ならば、探し出す方法を変えるだけだ。
「我の探し人を示せ!感知魔法(センシング)!!」
探知魔法でダメなら、気配を辿るのではなく、途切れた彼女の気配を探し出すだけだ。徐々に感知の範囲を広げ、丁寧に彼女の気配を探していると
「見つけた」
この塔から少し離れた庭園に彼女の気配を感じた。恐らくここの塔から庭園のところに飛ばされたのだろう。
「……――っ」
エレナの身に危険が差し迫っているかと思うと居ても立っても居られない。本来なら一瞬で移動するために、移動魔法(テレポーション)を使いたいところ。しかし、移動魔法を発動するためには、発動させる場所と移動したいところにそれぞれ魔法陣を書いておかなければならない。
つまり、もし移動魔法でエレナを攫ったのなら、犯人は最初からエレナを連れ去るために庭園に魔法陣を書いていたことになる。
「くそっ!」
思わず悪態をついて踵を返して、一歩踏み出した。
♢ ♢ ♢
「はぁ……はぁ……」
高い塔のバルコニーから地上まで駆け下り、庭園に辿り着く頃には息がすっかり上がってしまっていた。息を整えながら辺りを見渡すけれども、それらしい影が見当たらない。
「どこだ…?」
小さく呟いてもう一度探知魔法でエレナの気配を探そうと左手の人差し指と中指を額に当てようとしたまさにその瞬間――
「……――レイ君」
探し求めていた声が聞こえた。
――数刻前
「いない……」
“僕”がエレナがいたバルコニーに戻るとそこはいるはずのエレナはおらず、もぬけの殻だった。人の気配がしない。どこかにいったのだろうかと思ったけれども、“僕”が髪飾りを下に取りに行っている間にエレナが移動するのは考えにくい。それに“僕”がこちらへ向かっている間にエレナと遭遇しなかった。
その時、先ほど懐中時計で擦ってしまった左手が痛んだ。嫌な予感が脳裏をよぎった。
「まさか!?」
(誰かに攫われたのか?)
考えれば考えるほど、その可能性しか思いつかない。では、あの時エレナの花飾りを飛ばした突風は誰かの仕業で、“僕”とエレナを引き離すためのものだった?
けれども、何故?どういう目的でエレナを攫った?
“僕”への脅しか?
けれども、エレナが婚約者であることはまだごく一部しか知らない。
つまり、一緒に居たから襲われたか、目的はエレナそのものだった?
「ちっ……」
思わず舌打ちをしてしまう。限られた人間しか城に入れないと安心していた。それが仇となってしまった。
あのときにエレナを待たせずに一緒にいればよかった。けれど、いくら悔やんでも仕方がない。
「落ち着け」
そう呟いて大きく深呼吸をする。冷静にならなければ。
まずは、探知魔法を使って、エレナの気配を辿って、行き先を突き止める。それが最優先だ。とにかく彼女の居場所を確かめなければ。
“僕”は彼女が最後に立っていた辺りに立った。そして、そのまま目を閉じ、心を鎮めて左手の人差し指と中指を額に当てる。
「我に探し人への道筋を照らせ!探知魔法(ディテクション)!!」
魔力を込めて、探知魔法を発動する。一瞬で、魔法陣が浮かび上がった。けれども、いつもは探し人を指し示す光の糸が見えるはずなのに
「……どういうことだ?」
彼女の気配はここで途切れてしまっている。何度試してみても、結果は同じだ。光の糸が、この場所でぶっつりと途切れてしまっている。つまり、テレポーションか何かの移動魔法で連れ去られたか。ならば、探し出す方法を変えるだけだ。
「我の探し人を示せ!感知魔法(センシング)!!」
探知魔法でダメなら、気配を辿るのではなく、途切れた彼女の気配を探し出すだけだ。徐々に感知の範囲を広げ、丁寧に彼女の気配を探していると
「見つけた」
この塔から少し離れた庭園に彼女の気配を感じた。恐らくここの塔から庭園のところに飛ばされたのだろう。
「……――っ」
エレナの身に危険が差し迫っているかと思うと居ても立っても居られない。本来なら一瞬で移動するために、移動魔法(テレポーション)を使いたいところ。しかし、移動魔法を発動するためには、発動させる場所と移動したいところにそれぞれ魔法陣を書いておかなければならない。
つまり、もし移動魔法でエレナを攫ったのなら、犯人は最初からエレナを連れ去るために庭園に魔法陣を書いていたことになる。
「くそっ!」
思わず悪態をついて踵を返して、一歩踏み出した。
♢ ♢ ♢
「はぁ……はぁ……」
高い塔のバルコニーから地上まで駆け下り、庭園に辿り着く頃には息がすっかり上がってしまっていた。息を整えながら辺りを見渡すけれども、それらしい影が見当たらない。
「どこだ…?」
小さく呟いてもう一度探知魔法でエレナの気配を探そうと左手の人差し指と中指を額に当てようとしたまさにその瞬間――
「……――レイ君」
探し求めていた声が聞こえた。
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