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ライバル令嬢登場!?
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♢ ♢ ♢
「んっ」
どれほど眠っていたのだろうか。深く沈んでいた意識がはっきりとして私は目を開ける。まだ薄ぼんやりしている頭を左右に振るとぼやけていた視野もモヤがかかっていた頭が次第にスッキリとする。
「ここは?」
小さく呟いて体を起こそうとして
「?」
体の自由が利かないことに気が付いた。両腕が背中の方で交差するようにロープで縛りあげられていて、両足もロープで固定されていた。あまつさえ、両腕を拘束しているロープが部屋の柱に括り付けられている。
(何がどうなっているの!?)
体をよじって強引に上体を起こして、自らの体を改めれば特に怪我のようなものは見当たらずとりあえず『ふー』と息を吐いた。パニックになりそうになる頭をどうにかこうにか落ち着かせる。
(ここで混乱しちゃダメ。とりあえず今の状況を整理しなきゃ)
薄暗い12畳ほどの部屋。上を見上げると3mほどの場所に窓が開いているのが見えた。照明などはなく、そこから入ってくる太陽の光で部屋が薄ぼんやりと照らされている。そこに布団やらシーツが所狭しと敷き詰められていて、私は布団の上に寝かされていたようだ。窓はなく、隅の方を見れば埃が溜まっている。つまり、ここは普段あまり使われていないようだ。耳を澄ましてみても人の気配がしなかった。
私がいる場所から3mほど離れた場所に扉が1つあるけれど、ロープが柱に括り付けられているから、これ以上どうあがいても動けそうもない。自力での脱出はどう考えても不可能。
「えっと、何でこうなっちゃったんだっけ?」
確かレイ君に素敵な高い塔に案内してもらって景色を楽しんだ。そのときに花飾りが突風で飛ばされて、レイ君が取りに行ってくれた。それで待っていたら
「そうだ」
後ろから誰かに羽交い絞めにされて、睡眠薬の類をしみこませた布を押し付けられ、そのまま意識が飛んでしまい、気が付いたらこの場所に寝かされていた。
でも、確かに私はあの時に見たのだ。あの時、右手で私の口元を布で抑え込み、私を羽交い絞めにしていたのは
「レイ君……だった」
亜麻栗色の髪とエメラルドグリーンの瞳。見間違いだと思った。いや、見間違いだと思いたかった。けれども、それはまごうことなき『レイ・ガルシア』で……。
(でも、何で……?)
アラサー令嬢の婚約者が邪魔になったの?
私に見せてくれたあの笑顔と言葉は嘘だったの?
やるせない悲しみが襲ってきて、思わず俯いた時だった。
「やっと、目を覚ましましたか」
突然、すぐ近くで声がした。思わず顔を上げれば
「レイ……君?」
そこにいたのは先ほどと同じ白いタキシードのような服をかっちりと着込んだこの国の第三王子。いつの間に立っていたのだろう。扉が開く気配すらなかった。
その口元はどこか嘲笑うかのように歪められていて、思わず身震いをした。
(なんで?そんな顔をするの……?)
♢ ♢ ♢
同時刻――
「そう、目を覚ましたの……。騙されているとは知らずに、愚かなこと。こちらも準備をしましょう」
薄い緑がかった長い髪を風にたなびかせ美しい少女は口元に怪しげな笑みを浮かべていた。
「んっ」
どれほど眠っていたのだろうか。深く沈んでいた意識がはっきりとして私は目を開ける。まだ薄ぼんやりしている頭を左右に振るとぼやけていた視野もモヤがかかっていた頭が次第にスッキリとする。
「ここは?」
小さく呟いて体を起こそうとして
「?」
体の自由が利かないことに気が付いた。両腕が背中の方で交差するようにロープで縛りあげられていて、両足もロープで固定されていた。あまつさえ、両腕を拘束しているロープが部屋の柱に括り付けられている。
(何がどうなっているの!?)
体をよじって強引に上体を起こして、自らの体を改めれば特に怪我のようなものは見当たらずとりあえず『ふー』と息を吐いた。パニックになりそうになる頭をどうにかこうにか落ち着かせる。
(ここで混乱しちゃダメ。とりあえず今の状況を整理しなきゃ)
薄暗い12畳ほどの部屋。上を見上げると3mほどの場所に窓が開いているのが見えた。照明などはなく、そこから入ってくる太陽の光で部屋が薄ぼんやりと照らされている。そこに布団やらシーツが所狭しと敷き詰められていて、私は布団の上に寝かされていたようだ。窓はなく、隅の方を見れば埃が溜まっている。つまり、ここは普段あまり使われていないようだ。耳を澄ましてみても人の気配がしなかった。
私がいる場所から3mほど離れた場所に扉が1つあるけれど、ロープが柱に括り付けられているから、これ以上どうあがいても動けそうもない。自力での脱出はどう考えても不可能。
「えっと、何でこうなっちゃったんだっけ?」
確かレイ君に素敵な高い塔に案内してもらって景色を楽しんだ。そのときに花飾りが突風で飛ばされて、レイ君が取りに行ってくれた。それで待っていたら
「そうだ」
後ろから誰かに羽交い絞めにされて、睡眠薬の類をしみこませた布を押し付けられ、そのまま意識が飛んでしまい、気が付いたらこの場所に寝かされていた。
でも、確かに私はあの時に見たのだ。あの時、右手で私の口元を布で抑え込み、私を羽交い絞めにしていたのは
「レイ君……だった」
亜麻栗色の髪とエメラルドグリーンの瞳。見間違いだと思った。いや、見間違いだと思いたかった。けれども、それはまごうことなき『レイ・ガルシア』で……。
(でも、何で……?)
アラサー令嬢の婚約者が邪魔になったの?
私に見せてくれたあの笑顔と言葉は嘘だったの?
やるせない悲しみが襲ってきて、思わず俯いた時だった。
「やっと、目を覚ましましたか」
突然、すぐ近くで声がした。思わず顔を上げれば
「レイ……君?」
そこにいたのは先ほどと同じ白いタキシードのような服をかっちりと着込んだこの国の第三王子。いつの間に立っていたのだろう。扉が開く気配すらなかった。
その口元はどこか嘲笑うかのように歪められていて、思わず身震いをした。
(なんで?そんな顔をするの……?)
♢ ♢ ♢
同時刻――
「そう、目を覚ましたの……。騙されているとは知らずに、愚かなこと。こちらも準備をしましょう」
薄い緑がかった長い髪を風にたなびかせ美しい少女は口元に怪しげな笑みを浮かべていた。
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