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ライバル令嬢登場!?
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♢ ♢ ♢
大きな窓から入ってくる朝日と風が清々しい。窓の外には雲一つない青空が広がっている。そんな中
「これはフラグなのかしら?」
鏡を見ながら呟いた私の言葉に『ふらぐ……ですか?』と丁寧に答えたのは、私の髪を綺麗に結い上げているメアリーだ。今朝目覚めていた私にレイ君は王宮へ連れていくと言ってきた。それで身だしなみをメアリーに整えてもらっているのである。化粧をして、髪を整えてもらっている。
ちなみに、レイ君はというと屋敷の客間で待ってもらっている。何やら両親と話しているらしい。どんな話をしているのだろう。そんなことを思いながら
「こう……何かの罠の伏線的な感じの」
鏡に映るメアリーに身振りを交えて伝える。
そう思えてならない。急に王宮で見せたいものがあるとか、夢通りで行けば、見せたい人の間違いではないかと考えてしまうわけで……。どう考えてもおかしい。いきなり年下のイケメン王子が婚約者とかあまりに話が出来すぎている。これは何かの陰謀なのかとすら勘ぐってしまう。
そんなことを考えていると
「何か身の危険を感じましたか?」
とメアリーは眉をひそめて心配そうに尋ねてくる。
「身の危険……というか、なんというか……」
まさか、今まさに客間にいる人に捨てられる夢を見たからとは言えまい。
「そ、それよりも、メアリーは殿下と私が婚約してたって驚かなかった?」
咄嗟に話題をすり替える。するとメアリーは
「驚きませんでしたよ」
とあっさりと答える。即答だ。
「え!?驚かなかったの!?」
メアリーの反応に逆に驚いてしまう。
「長年エレナ様に仕えさせていただいておりますので、旦那様と奥様に教えていただいておりましたから」
なんだと……!?私は昨日知ったのに。マジか……なんて思っていると
「ですから、昨日『あとはエレナ様が王子様にお会いするだけ』と申したのですよ」
そう立て続けに言った。
た、確かに……。昨日、そんなことを言っていた。私は完全に『あとは、結婚相手を見つけるだけ』の意味で取っていたけれども。『そうだったわね』と頷きながらも思わず目線を右上のそらすとメアリーは整えた私の髪に花飾りをつけながら、にこりと笑って口を開いた。
「殿下はエレナ様に再びお会いできたのが余程嬉しかったご様子でしたし」
「そうなの?」
「えぇ。今朝も殿下がいらっしゃったときにエレナ様がまだ起床されていませんでしたので、客間でお待ちいただこうとしたのですが、エレナ様が起きるまでエレナ様の部屋で待つと言われまして。それで殿下を部屋にお通ししたら、エレナ様がうなされているではありませんか。即座に殿下はうなされていたエレナ様の傍に駆け寄り左手に手を添え、心配そうに顔を覗き込んでおりましたよ。お二人の邪魔をしてはいけないと思い、そこからは部屋を出ましたので、そこからはエレナ様のお知りになられている通りかと」
そうだったのか。けれども、そのうなされていた原因がその人の夢を見ていたことだったのだが……などと言えるわけもない。そんな私に、メアリーは今度は着ているドレスを指し示した。今日着させてもらっているのは、浅黄色のドレスだ。踵が隠れる長さのドレスで、下の方から腰のあたりまでフリルが控えめにあしらわれ、小さなパールもちりばめられている。可愛いデザインだが大人っぽくて、アラサーの私が着ても浮いていない。胸元には、ワンポイントで紺色の小さなリボンがつけられ、そのリボンにもパールがあしらわれていて上品だ。王宮に招かれたのだから、新しく両親が用意してくれたものだとばかり思っていたのだけれども
「今、お召しになられているドレス、殿下がエレナ様のためにとご用意されたのですよ」
「そうなの?」
そうではなかったらしい。
思わず目を見開くと鏡越しにメアリーと目が合う。メアリーは『えぇ。よく似合っております』とにこりと笑って、髪から手を放した。花飾りをつけたらしいメアリーは
「最後に紅を引きましょう」
と言って、口紅の筆を取り出す。薄桃色の口紅のパレットに紅筆をつけ、数度私の唇を往復すると一気に口元が周りが華やいだ。
「いかがですか?」
メアリーの言葉に鏡を見れば着飾った私が映り込んでいる。他に気になるところはないかと問われ、特にないと答えるとメアリーは鏡越しに
「本日は、殿下と楽しんできてくださいませ」
にこやかに笑って言った。
このあと大変な一日が始まることになったのだが、この時の私はそんなこと知る由もなく、もし今朝の夢が正夢になったら『本当の婚約者の方とお幸せに』と言って冷静に対応しようと頭の中でシミュレーションしていた。
大きな窓から入ってくる朝日と風が清々しい。窓の外には雲一つない青空が広がっている。そんな中
「これはフラグなのかしら?」
鏡を見ながら呟いた私の言葉に『ふらぐ……ですか?』と丁寧に答えたのは、私の髪を綺麗に結い上げているメアリーだ。今朝目覚めていた私にレイ君は王宮へ連れていくと言ってきた。それで身だしなみをメアリーに整えてもらっているのである。化粧をして、髪を整えてもらっている。
ちなみに、レイ君はというと屋敷の客間で待ってもらっている。何やら両親と話しているらしい。どんな話をしているのだろう。そんなことを思いながら
「こう……何かの罠の伏線的な感じの」
鏡に映るメアリーに身振りを交えて伝える。
そう思えてならない。急に王宮で見せたいものがあるとか、夢通りで行けば、見せたい人の間違いではないかと考えてしまうわけで……。どう考えてもおかしい。いきなり年下のイケメン王子が婚約者とかあまりに話が出来すぎている。これは何かの陰謀なのかとすら勘ぐってしまう。
そんなことを考えていると
「何か身の危険を感じましたか?」
とメアリーは眉をひそめて心配そうに尋ねてくる。
「身の危険……というか、なんというか……」
まさか、今まさに客間にいる人に捨てられる夢を見たからとは言えまい。
「そ、それよりも、メアリーは殿下と私が婚約してたって驚かなかった?」
咄嗟に話題をすり替える。するとメアリーは
「驚きませんでしたよ」
とあっさりと答える。即答だ。
「え!?驚かなかったの!?」
メアリーの反応に逆に驚いてしまう。
「長年エレナ様に仕えさせていただいておりますので、旦那様と奥様に教えていただいておりましたから」
なんだと……!?私は昨日知ったのに。マジか……なんて思っていると
「ですから、昨日『あとはエレナ様が王子様にお会いするだけ』と申したのですよ」
そう立て続けに言った。
た、確かに……。昨日、そんなことを言っていた。私は完全に『あとは、結婚相手を見つけるだけ』の意味で取っていたけれども。『そうだったわね』と頷きながらも思わず目線を右上のそらすとメアリーは整えた私の髪に花飾りをつけながら、にこりと笑って口を開いた。
「殿下はエレナ様に再びお会いできたのが余程嬉しかったご様子でしたし」
「そうなの?」
「えぇ。今朝も殿下がいらっしゃったときにエレナ様がまだ起床されていませんでしたので、客間でお待ちいただこうとしたのですが、エレナ様が起きるまでエレナ様の部屋で待つと言われまして。それで殿下を部屋にお通ししたら、エレナ様がうなされているではありませんか。即座に殿下はうなされていたエレナ様の傍に駆け寄り左手に手を添え、心配そうに顔を覗き込んでおりましたよ。お二人の邪魔をしてはいけないと思い、そこからは部屋を出ましたので、そこからはエレナ様のお知りになられている通りかと」
そうだったのか。けれども、そのうなされていた原因がその人の夢を見ていたことだったのだが……などと言えるわけもない。そんな私に、メアリーは今度は着ているドレスを指し示した。今日着させてもらっているのは、浅黄色のドレスだ。踵が隠れる長さのドレスで、下の方から腰のあたりまでフリルが控えめにあしらわれ、小さなパールもちりばめられている。可愛いデザインだが大人っぽくて、アラサーの私が着ても浮いていない。胸元には、ワンポイントで紺色の小さなリボンがつけられ、そのリボンにもパールがあしらわれていて上品だ。王宮に招かれたのだから、新しく両親が用意してくれたものだとばかり思っていたのだけれども
「今、お召しになられているドレス、殿下がエレナ様のためにとご用意されたのですよ」
「そうなの?」
そうではなかったらしい。
思わず目を見開くと鏡越しにメアリーと目が合う。メアリーは『えぇ。よく似合っております』とにこりと笑って、髪から手を放した。花飾りをつけたらしいメアリーは
「最後に紅を引きましょう」
と言って、口紅の筆を取り出す。薄桃色の口紅のパレットに紅筆をつけ、数度私の唇を往復すると一気に口元が周りが華やいだ。
「いかがですか?」
メアリーの言葉に鏡を見れば着飾った私が映り込んでいる。他に気になるところはないかと問われ、特にないと答えるとメアリーは鏡越しに
「本日は、殿下と楽しんできてくださいませ」
にこやかに笑って言った。
このあと大変な一日が始まることになったのだが、この時の私はそんなこと知る由もなく、もし今朝の夢が正夢になったら『本当の婚約者の方とお幸せに』と言って冷静に対応しようと頭の中でシミュレーションしていた。
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